57 『ヒロ』 知られざる真実!伝説の賢者は皆、童貞だったのだ。(孤高の賢者ヒロ、沈黙を破り、ついに明かされる真実。)
ヒロが、冒険者組合の受付を開放されて部屋でくつろいだ後に夕食を食べるために1階に下りると、そこには、アレクシスを始め、シーター、レキエラ達、他の冒険者などが勢ぞろいしていた。
「えっと、ここいいですか?」
ヒロは空いている席を見つけてそのテーブルについている者に声を掛けた。
「構わんぞ。」
ドワーフであるグンゾウはエールを飲んでいた。テーブルの上には、すでにエールの空のカップが5杯置いてあった。
「ワシの顔が珍しいか?」
ヒロは今まで現実のドワーフを見たことがなかったため、ついグンゾウに見入ってしまったのだ。
「申し訳ありません。初めてドワーフを見たものですから。」
ヒロは、グンゾウに頭を下げた。
「ほう、今どきそれは珍しいな。ワシは、ドワーフ族のグンゾウじゃ。」
「冒険者のヒロです。まだなりたてですけど。」
ヒロは、グンゾウと握手を交わし、注文を取りに来たメグに、エールを一杯お願いした。
「ヒロ、飲んでおるか?」
ヒロの隣の席に別のテーブルで飲んでいたレキエラが座った。そして何故かレキエラの膝の上にジュリが座る。
「あっ、レキエラさん。どうでした?」
「ああ、どうにかうまく話がついたよ。」
レキエラの頬はすでに赤くなっており、少し酔っ払っているようだった。
「それで、しばらくこの町の兵士として働くことになったのでよろしく頼む。」
ヒロは、この世界の法律を知らなかったので、ただそういうものかと思っただけだった。
ただ、盗賊をしていた罰として兵士として雇うっていうのは変だなとは思ったが、ヒロの性格上、興味のないことにはさっぱりしているのでそのまま流した。
「ところで、ヒロ、私のこの格好には興味はないのかしら?」
ジュリが、レキエラの膝の上から艶かしい目でヒロを見ていた。
「ないです。」
ヒロ、即答である。むしろ、故意に無視していたのだが。
「つれないわね、ヒロ。レキー、この子が私の誘いを唯一断った子よ。」
「ふぁ!」
ジュリのレキエラへのヒロの紹介に思わず声を上げるヒロだったが、「そうなのか。ジュリの誘いを断れるとは、そのもしかして不能なのか?」とヒロの思っていたのとは違う反応を示した。
「・・・不能でも童貞でもありません。ただ、純粋に人と人との関係を哲学的に考察する賢者です。」
ヒロ、真っ直ぐにレキエラを見て否定した。
「・・・そうか、そうか・・・童貞だったのか・・・かわいそうに。いや、そうだな、童貞ではないのだな。分かっておるぞ。そういう年頃が男にはあるのだ。気にすることはない、哲学者ヒロよ。」
レキエラには、通じなかった。というか、同情された。
「童貞のお兄ちゃん、エールどうぞ。」
純真無垢な笑顔のメグが、エールをヒロの前においていく。
その去っていくメグの後ろ姿を見ながら、ヒロは悲しげな表情でエールを一気飲みした。
なぜか、その日のエールの味は、しょっぱかった。
「それより、ヒロ、例のあれ出しなさいよ。」
ジュリも珍しく酔っているようだった。
「例のあれ?」
「ホーンブルのあれよ。・・・下ネタじゃないわよ。ウフフ。」
ジュリはレキエラと目を合わせて笑っていたが、ヒロには塩の欠片ひとつ分も面白くなかった。
「・・・『ホーンブルの最上級霜降り肉』ですか?」
「それよ。」
「メグちゃん、これお願い。」
ヒロは、断るのもめんどくさかったので、素直に『ホーンブルの最上級霜降り肉』を2個取り出してメグへと渡した。
「わかってるじゃない、ヒロ。みんな、ヒロが『ホーンブルの最上級霜降り肉』を奢ってくれるそうよ。」
ジュリの言葉に、他の客から歓声が上がった。
ヒロは、少し恥ずかしげに片手を上げて歓声に応えた。




