56 『エルダ』 レキエラ、こう見えても昔は偉い人だったんだぞ?と他人に言われるのではないかと心配になるの巻
「・・・それは、罰なのか?」
レキエラは、平民として結構な期間働いていたので金銭感覚は優れていた。この提案が明らかにおかしいことに気付いていた。
「はい。元ホルメスト王国将軍とその精鋭の皆様にとっては、十分な屈辱だと思われますが?」
ルーベルは、あえてレキエラ達がしばらく平民として暮らしていたことを無視しているのだ。
貴族への罪と考えれば、確かに屈辱的な罰だと言えなくもない。
「・・・こちらは構わないが、本当にいいのか?」
「はい。むしろよろしくお願い致します。」
笑顔で微笑むルーベル爺についにレキエラも折れた。
ルーベル爺は、ラインベルトの肩を叩き、話がついたことを教えた。
「それは素晴らしい。さすがルーベル爺だ。・・・でも、大丈夫なのかい、ルーベル爺。」
自らの領地の財政難を思い出して、ラインベルトは不安そうな表情になった。
「はい。エルダ様のおかげで、エストラ男爵領も多少兵士を雇いましても大丈夫な状況に好転しております。安心してください、ラインベルト様。」
「ん?私のおかげ?」
話のよくわからないエルダは首を傾げた。
「ありがとう、エルダ。」
隣に座っているエルダに抱きつくラインベルト。
「うほっ、こ、こんな人前で困るな、ラインベルト。」
顔を真っ赤にしながらも、ラインベルトを離そうとしないエルダ。いつものようにヨダレが垂れそうになっている。
「それで、我々は、この騎士の下につけばいいのかな?」
エルダの表情にやや呆れながら、レキエラはルーベル爺に聞いたが、エルダが、「私は、ラインベルトのために生き、ラインベルトのために死ぬ。そうラインベルトだけの物だ。そういうラインベルトと関係ない仕事は断る。あと、夜のラインベルトの護衛を譲るのも断る。あっ、変なことを思われても困るが、ラインベルトのために生きというのはイクとかその性的な意味ではないからな。・・・今はまだ。」答えたため、結局、レキエラに指揮を執ってもらうことで落ち着いた。
その時、急にドアをバタンと開け、冒険者組合の受付のジュリが現れた。
ジュリは、真っ直ぐにレキエラの元に行き、躊躇なくレキエラの膝の上に腰掛けた。
「お久しぶり、レキー。随分、老けたわね。」
「おう、これはジュリ。お主、なぜここに?」
レキエラは驚いたように笑っていた。
「今、私、この町に暮らしているもの。」
「そうであったのか・・・・これは、運命か。」
見つめ合う二人。そんな二人にシーターが遠慮なく話しかけた。
「ジュリさん、レキエラおじさんと知り合い?」
「そうよ。知り合いというか、昔、燃えるように熱い夜を幾日も過ごした仲というか・・・ね。」
ジュリは、答えている間も、まったくレキエラの目から視線を逸らさない。
だが、レキエラは後ろに控える部下の冷たい視線に気付き、気まずそうに「ゴホンッ」と咳をひとつした後、ジュリを膝から優しく下ろした。
「それで何か問題が起きたの、レキー?この町でちょっとは顔が利くから、少しは助けられるわよ?」
ジュリは、名残惜しそうにレキエラの膝に手を置き、ゆっくりと動かしている。
勝手に領主の城に入ってくる人物が、この町でちょっとしか顔が利かないことはないなとアレクシスは思いながら二人を苦笑いを浮かべながら見ていた。
「いや、もう話はついた。今度から、この町に住むことになったから、よろしく頼むぞ、ジュリ。」
「うれしいわ。私、今、冒険者組合の受付にいるからいつでも来てね。」
それだけいうと、レキエラ以外の人物にはまったく挨拶もせずに部屋を出て行った。
「・・・・それでは、今後のことの細かいことを詰めましょうか?」
ルーベル爺の一言で、一同は今何を話し合っていたのかを思い出し、話し合いを再開した。
ちなみに、ラインベルトがエルダから離してもらえたのは、話し合いが終了してからだった。
もう少し話し合いが延びていたら、ラインベルトは酸欠で死んでいたかもしれないほど、ラインベルトの息は切れ切れだった。




