55 『エルダ』 昔は、僕も泣き虫でした・・・。(アリステーゼ王国歴史人物図鑑 永遠の少年ラインベルト・シュナイゼル・エストラの章より抜粋)
アレクシスは、レキエラ達のことをラインベルトたちに詳しく説明した。
その話が進んでいく内にラインベルトの目には涙が溜まっていた。
ラインベルトは、話が終わった時には号泣していた。
「た、大変だったのですね、レキエラ将軍、私に出来ることでしたら、なんでもおっしゃってください。」
ラインベルトのあまりの号泣にどうしたらいいのかレキエラは困っていたが、アレクシスが続けていった。
「それで、レキエラ将軍は、自分が罪をすべて背負うので部下を許して欲しいとおっしゃっているのですが?」
「そんな、それは駄目です。」
ラインベルトが涙をハンカチで拭きながら立ち上がった。
「そこをなんとかお願いできませんか?」
レキエラは、テーブルに頭がつくくらいに頭を下げて、再度お願いした。
「絶対に駄目です。」
ラインベルトの意志は固かった。
「・・・そうですか。いや、当然そうでしょうな。」
レキエラは、小国とはいえ元貴族なだけに、ラインベルトの言葉も理解できた。
「無理を言って申し訳ない。では、この罪は私達全員で償わせていただきます。」
潔いレキエラの言葉だった。さすが元将軍である。
「それも、駄目です。」
「・・・失礼だが、どういうことでしょうか?」
「いいじゃないですか、そんなこと。気にしなければいいんです。レキエラ将軍達のこれまでの行動を、僕は貴族として、いや、一人の男として尊敬します。仲間のためにそこまで出来るなんて、素晴らしいと思います。」
ラインベルトの目は本気だった。
「レキエラ将軍達は、たまたま、レキエラ将軍達のことを盗賊と勘違いした人々によって起きた勘違いです。僕は、この領主として判断します。レキエラ将軍達は無罪です。」
「いや、そういうわけにはいかんと思うぞ?仮にも、こうして犯人が名乗り出てきているわけだから、領主としてそれは心を鬼にして裁かなければいけないと思うぞ?」
レキエラは、まるで貴族としての行動を諭すようにラインベルトに言い聞かせるが、ラインベルトの意志を変えることはできない。
「嫌です。たとえ、尊敬できるレキエラ将軍の言葉でも僕は聞きません。僕は、ラインベルト・シュナイゼル・エストラ男爵の名に誓ってレキエラ将軍達を無罪とします。」
ついには、両手で耳を塞ぎ、目を閉じて、横を向くラインベルト。こうなるとラインベルトは頑固である。
「いや、しかし、それでは・・・。」
レキエラは困った顔でアレクシスとシーターを見るが、二人とも面白そうにラインベルトを見ていた。
「それでは、こういうのはどうでしょうか?」
ルーベル爺は、自らに視線が集まったのを確認すると話し始めた。
「実は、今、このエストラ男爵領は、エルダ様を除いて騎士がおりません。それどころか、兵士も皆無。衛士に至っては、エストの町に住む老人たちが安い給金で勤めてくれております。そこで、レキエラ様含め10人には、このエストの町で3年間兵士もしくは衛士を勤めていただくというのは?」
「・・・それは、構わないが・・・それは罰になるのか?」
「はい。将軍まで勤められたレキエラ様には申し訳ありませんが、給金は1人1ヵ月金貨1枚までしか出せません。それを三年間、十分な罰であるとこのルーベルめは考えます。」
金貨1枚あれば、食べ物の安いこの世界では、1人が1ヵ月暮らすのは容易だ。むしろ、多すぎるくらいかもしれない。平民では、家族4人で金貨1枚で暮らすのが普通なくらいなのだ。
しかし、レキエラ達、元ホルメスト王国の精鋭部隊をこの値段で雇えるかと考えると絶対に無理だった。
この10倍の値段を払っても雇いたい貴族は後を絶たぬはずだ。
例えば、アリステーゼ王国の王室に伝わるとすぐにでも使いを寄越すだろう。それぐらいの知名度を誇った人物なのだ。




