51 『ミサキ』 カレー味のう〇ことうん〇味のカレー、あなたならどちらを食べるかという難問だ。なお、この小説に品性を求めるのは残念ながら間違いだ。いや、いつからこの小説に品性があると勘違いしていた。
「・・・ですが、本日、朝早くにこれが届きまして。」
ドルトは、結構な厚さの紙を持ってきて、ミサキの目の前に置いた。
「何これ?」
「はい。高級服店の請求書30枚、高級店の食事代請求書30枚、高級エステサロンの代金請求書9枚、さらに高級家具店の請求書5枚、高級宝石店の請求書3枚でございます・・・ニーナ様の。」
ニーナは逃げようとしたが、すでに時遅く、ミサキに睨まれ動くことができなかった。
「ちなみに、この代金を引くとどれくらい持つのかしら?」
「いいところ3ヵ月でございます。」
ニーナは、ミサキとハイドに睨まれ必死の形相で弁明した。
「違うにゃ、違うにゃ、これはにゃーが悪いんじゃないにゃ。」
「へぇー、どうニーナが悪くないのかしら。」
ミサキは不気味な笑みを浮かべていた。
「これは、罠にゃ。にゃーが店の前を通ると、店員が笑顔で話しかけてくるにゃ。それに釣られて店に入ると、まさににゃーにぴったりの服や宝石を出してくるにゃ。しかし、にゃーも甘くないにゃ。そんなものいらにゃいと断るにゃ。すると、なんと店員は、今ならお安く致しますよと言ってくるにゃ。にゃーもびっくりの値引き額にゃ。さらに、今だけですよと畳み掛けてくるにゃ。だから、にゃーは言ってやったにゃ。買いますにゃと。」
「罠の要素、一つもねぇーな・・・。」
「にゃー、ハイド、どっちの味方かにゃ。同じ獣人にゃ。にゃーの援護をするにゃ。」
「あら、ニーナ。私はいつでも獣人の味方であり、ニーナの味方よ?」
ミサキは満面の笑みを浮かべた。
「ミサキお姉様。」
ニーナはミサキの言葉を聞き安心した。
「・・・昨日まではね。」
ミサキの表情が一変する。まさに鬼の表情。
ニーナ、視線をそうっとミサキから逸らす。
「ごめんにゃ。命だけは助けて欲しいにゃ。・・・そうにゃ、いつものようにミサキお姉様が出て行って、にゃーを騙した店員を皆殺しにすればいいにゃ。完璧な作戦にゃ。」
「ミサキ、これお前のせいだぞ。」
ハイドは、真面目な表情でミサキを見た。
「私のせい?」
「ああ、ニーナはまだ子供なんだ。お前がいつも問題を殺して解決しているから、ニーナは何かあれば殺せばいいなんて馬鹿な考えを持つんだよ。お前の教育が間違っていたんだよ。」
「・・・・・・・・・ふー、ハイドにしては、正論。『史上最高の美少女であり、史上最上の天才であり、史上最強の強さを誇る私、一生の不覚』だわ。まさかハイドに説教されるなんて。」
「いや、何で俺に説教されたことが不覚なんだよ。ニーナの教育の方だろ。」
「・・・そうともいうわ。・・・仕方ないわね、今回だけは、ニーナを許すわ。」
「ミサキお姉様。」
ニーナは、椅子に座っているミサキの胸に飛び込んだ。
ミサキは、その瞬間、ニーナの胸に両手をあててモミモミしていた。ミサキは隙を逃がさない女なのだ。
「いいのよ、ニーナ。それでは今回だけは皆殺しをしに行きましょう。」
「だから、それが駄目なんだよ。え、何?俺の言葉、まったくお前の心に届いてねぇーのかよ?」
「間違えないで、ハイド。あなたの言葉は、私の耳にさえ届いてないわ。」
自信満々に言い切るミサキ、その表情に迷いはない。
「ミサキ様、差し出がましいことでございますが、それはお辞めになられた方がよろしいかと。」
「なぜ、ドルト?」
「はい。これ以上の悪評は、本当にパンプキン商会の致命傷になります。ここは堪えていただきたく。」
頭を深くさげるドルト。
「分かったわ。」
即答のミサキ。
「何で、ドルトの意見には即答で納得するんだよ。」
「ハイドとドルトの違い、分かる、ハイド?」
「・・・信頼度の違いかよ?」
ハイドのの顔には苦々しさが浮かんでいた。
これまでのことを考えても、ミサキは重要な仕事はドルトに任せている。
さらに、ハイドは直にドルトとやりあって軽くあしらわれていた。
それを考えると、ミサキの中でハイドよりドルトの信頼度が高いのは当然だと思った。
「変態と有能の違いよ。」
「真面目に答えた俺が馬鹿みたいじゃねぇーか!」
ハイドは言葉とは裏腹に何故か少し安心していた。
「それに・・・私、ハイドのことをこの世界で一番信頼しているわよ。」
ミサキは、真っ直ぐにハイドを見た。
「ミサキ・・・。」
何とも表現しがたい感情がハイドの心の中で生まれた。
「にゃーは?」
「ニーナは、この世界で一番愛しているわよ。」
ミサキのニーナを見る目は優しかった。
「・・・その、僭越ながら私は?」
「この世界で一番信用しているわ。」
ドルトの唇が少しにやけたように見えた。
「・・・・それ、言い方の違いじゃね?」
先ほど生まれたハイドのミサキへの気持ちは綺麗さっぱり霧散した。
「そうともいうわ。でも、一つだけはっきりしていることは、私ほど仲間を大事にする者はいないということ。それだけは信じてもらって間違いないわ。」
ミサキの表情は、どこまでも真剣だった。
「ゴホンッ。それで、私に提案があるのですが、お聞きいただけますでしょうか?」
「いいわ。言ってみて、ドルト。」
「この際、新しい都市で新たな支店の開設をされてはどうかと思います。」
「なぜ?その営業停止を解いてもらう方が早いのではないの?」
「営業停止を解いてもらうには、最初に営業許可をもらう5倍のお金を賄賂に要求されます。今のこの財政状況では、それは得策ではないと考えます。それよりも新たな都市で新たな信頼を勝ち取った方がよいかと。」
「それって、今まで支店を開いていた都市では悪評が凄すぎて、もう商売できないって話か?」
ドルトはハイドの言葉を聞いてやや言いにくそうにしながらも、「はい。」と答えた。
「それで、ついてはミサキ様にはその新たな都市での領主との交渉に参加していただきたく思うのですが、よろしいでしょうか?」
「別にいいけど、なぜ?一応、ドルトがパンプキン商会の会長なのだから、別に私抜きで進めても構わないわよ?」
「いえ、新しい都市では今まではパンプキン商会の評判を知らなくても、許可を取るとなると間違いなく調査で噂の件が出てきます。その時に、・・その・・・ミサキ様が実際は、お優しく知的な美少女と印象付けていただけましたら、噂の方が嘘と判断してもらえるのではないかと。」
「・・・わかったわ。仲間の尻拭いをするのも、ギルドマスターの勤め。ドルトの言うとおりにするわ。感謝しなさいよ、ハイド。」
ミサキは恩着せがましい視線をハイドへ向けた。
「ミサキ、お前、自分の尻を拭くとき他人にやってもらうのか?自分の尻を拭く時は、自分で拭くだろ?この問題もそういうこった。」
ハイドも、ミサキを睨み返した。
「残念ね。私は尻を拭く時は、ニーナに舐めてもらうわ、いつものようにね。」
「にゃにゃ!にゃーは、自分の尻さえ舐めたことにゃいのに、ミサキお姉様のお尻を舐めるのかにゃ?」
「そうよ、ニーナ。私のお尻は、チョート味よ。」
「・・・それは、迷うにゃ。」
「・・・それ、チョート色の別の物だろ?」
ハイドはミサキとニーナを呆れた顔で眺めていた。
次回からまた人物と場面が変わります。




