46 『ミサキ』 男ならフンドシ一丁で仁王立ち(伝説の狼ハイド名言集より抜粋)・・・なお、当作品とは一切関係はございません。
「こい。」
ミサキは誰に言うでもなく、ただ、そう呟いた。
ガシャンという窓ガラスが割れる音と共に、ミサキの元にデスサイズが飛んできた。
あのデスサイズは今回持ってきておらず、ニーナの家に置きっぱなしになっていたはずだった。
「あれー、おかしいなー。急に明かりが消えたぞー。」
ミサキが、急に棒読みでしゃべりだした。
当然、明かりはついたままだ。しかし、ミサキのしたい事を読み取ったニーナとハイドは、ミサキと同じように棒読みで「消えたぞー。おかしいなー。何も見えないなー。」と言い始めた。
そして、ミサキに睨まれた衛兵たちも「見えないぞー。おかしいなー。」と言い始めた。
ミサキは、何が始まるのか未だに分かっていないドンゴへとゆっくりと一歩づつ近づいていく。
「ねぇー、どう?自分の迂闊さで死ぬという気分は?悔しいか?悲しいか?・・・ねぇー、いま、どんな気持ち?ねぇー、どんな気持ち?」
ドンゴは、何も言うことが出来なかった。
ミサキが一歩自分に近づく度に、自らの死が現実として感じられたからだ。
ミサキは、にやりと笑うと何の躊躇いもなくデスサイズを振りぬいた。
後に残ったのは、豚のように太った脂肪だらけの体だった。
「あれー、明かりがついたと思ったら、なぜかドンゴが死んでるー。これはどうしたことだー。これではこの事件に関わった人がわからないやー。困った、困った。迷宮入りだー。」
ミサキ、大根役者である。
「だ、よ、ね。」
振り返ったミサキに睨まれた衛兵たちは、冷たい汗を体中に流しながら何度も縦に首を振った。
「あ、そうだ。ドルト、書類持ってきて。」
ミサキは、ドルトが持ってきた書類を机の上に置き、ドンゴの右手の親指にドルトの首から流れ出る血をつけて押し付けた。
「これで書類も完了かな?」
「はい。大丈夫でございます。」
ドルトはミサキから書類を受け取り、目を通した。
「それじゃあ、衛兵の皆さん、頑張ってこの豚の死体を片して下さーい。」
ミサキの無邪気な声に我に返った衛兵たちは、数人がかりでドンゴの頭と体を運んでいった。
「おじちゃんもありがとね。」
ミサキは、グアルティ市長の所に行き可愛く頭を下げた。
「・・・噂どおりの人なんだな、君は・・・。」
グアルティ市長の笑顔は引きつっていた。
「そんなことないですよぉー。私なんてー、あそこで美少女の前でパンツ一丁で興奮しているハイドに比べたら、まだまだ、まともですよぉー。」
「確かに見た目的には正しいかもしれねぇーが、なんか違うだろうが。」
ハイドは頭をかきながら、ばつが悪そうにしていた。
「ところでよぉ、あいつ何してるんだ?」
ハイドの視線の先には、ニーナが、床に横になり、目をつぶり、胸の前で両手を組んでいた。
「何してるの、ニーナ?」
ミサキが上からニーナの顔を覗き込んだ。
「にゃーは、毒で今から死ぬのにゃ。だから、心を落ち着けて死を待ってるにゃ。」
「あっ、忘れてた。」
ミサキはそう言うと、「出てきなさい。」と呟いた。
「「「おえぇー。」」」
すると、ニーナとハイドとグアルディ市長の口から緑色の拳くらいの大きさの塊が出てきた。
「ゴホッゴホッゴホッ・・・何だ、こりゃ?」
「私のペットのポイズンスライム。」
「ペット?」
「そう。だから、みんなが口に入れた食べ物は、このポイズンスライムが吸収したから、毒で死ぬ心配はない。」
「・・・来る前に口に入れたあれか?」
「その通り。」
ニーナは、自分のお腹をさすりながら、首をかしげていた。
「どうしたのニーナ?」
「ミサキお姉さま。おかしいにゃ。にゃーはあんなに食べたのに、お腹が減ってるにゃ。」
「そりゃ、お前、スライムが全部食べたんだから、俺達は何も食べてないのと一緒だろ?」
ミサキもハイドの言う通りと首を縦に振った。
「にゃ、にゃ、にゃんてことにゃ。返せ、にゃーのご馳走を返せにゃ。」
ニーナは、ポイズンスライムを殴るが、ポイズンスライムは、プニプ二するだけであった。
「返したら、お前、死ぬだろうーが。」
その様子を呆れながら、ハイドは見ていた。
「どう、似合ってる?」
ミサキは、ドルトの前で赤いドレスのすそを持ってポーズを決めていた。
「はい、大変お似合いでございます。」
ミサキは、その言葉に満足そうに頷いた。
「でしょ。飛び散った血も目立たなくて。やっぱり、食事には赤いドレスだね。キラーン。」
ミサキは、いつものように左手を目の側で横にしてVサインを作った。
ドルトは、ただ一言、「参りました。」と言うことしかできなかった。




