45 『ミサキ』 裏切りは謀略の華(なんとなくカッコよさげで言いたかっただけ。意味はなし。)
「ここまでのようね。」
ミサキの表情は、普段の表情に戻っていた。
その言葉で、ドルトはハイドと戦うことなくミサキの席の後ろへと歩いていった。
そして、まるでミサキ付きの執事のようにミサキの後ろに立った。
「ん?どうした、ドルト。そいつは後だ。さっさと獣人を殺せ。」
「ミサキ様、豚が何か言っておりますがいかがしましょうか?」
「放っておいていいわ。それより、お願いしていた物を持ってきてもらえる?あと、彼らも呼んできてちょうだい。」
「かしこまりました。」
ドルトは、ミサキに一礼すると部屋を出て行った。
「ど、ど、どうしたのだ、ドルト!ドルト!」
ドンゴは悲鳴に近い声を上げるが、ドルトは一切見向きもしない。
ミサキは、かぼちゃのかぶりものをかぶった者に合図を送った。
かぶちゃのかぶりものを両手でゆっくりと取ると、そこには白い髭を蓄えた白髪の男性の顔が現れた。
「誰だ?」「誰にゃ?」
ハイドとニーナは、首をかしげたが、ドンゴだけは顔中から汚い汗を噴出して、今にも倒れてしまいそうだった。
「ま、ま、まさか・・・グアルディ市長・・なのか?」
「いかにも、この交易都市グロースの市長グアルディである。」
交易都市は、商人によって治められている都市のため、市長は、ここグロースに本拠地を置く商会の代表から商人達の投票により選出される。
そのため、市長という肩書きながら、その権力は小さな国の国王にも匹敵するのである。
当然、市長に選ばれるぐらいなので、自身の商会も大商会であり、グアルディ・バロムのバロム商会は、80を超える支店を持ち商人組合の幹部にも名を連ねていた。
「聞いてたでしょ?」
「ああ、お嬢さん、しっかりと聞いておったよ。」
その時、ドアが開きドルトと共に多くの衛兵が入ってきた。
「お持ち致しました。」
ドルトはミサキの前に書類を置いた。
「これがそう?」
「はい。ガルバチョ商会の権利書でございます。あと、ここにあの豚の印鑑か母印を押せば、引き継ぎ完了でございます。」
「な!う、裏切ったのか、ドルト!」
ドルトとドンゴを見る目は冷たかった。
「私の異名をお忘れですか?私は、『裏切り者』ドルトでございますよ。」
「あ・・ああ・・・。」
もはや、ドンゴは言葉さえ出てこなかった。
「とりあえず確認しておくけど、この書類を出せば引き継ぎが認められるのよね、市長?」
「ああ。我が権限において約束しよう。」
「ちなみに、あの豚は死刑?」
「当然だ。この都市を治める我がバロム商会を馬鹿にしてくれたのだ。一番軽い罪で死刑だ。」
グアルディの目には冷たい怒りが浮かんでいた。
「く、く、くそ。こうなったら、みんな道連れだ。ムフフフ。衛兵の隊長も、執事のドルトも皆同罪だ。みんな一緒に死の門をくぐろうではないか。ギャハハハハハハハハハハハ。」
ドルトの表情は眉ひとつ動くことはなかったが、衛兵の隊長の表情は、他の衛兵の視線を浴びて、青白くなっていた。
「あら、ドルトと衛兵の隊長は私の送り込んだスパイよ?何を言っているのかしら、この豚は?」
ミサキがこの都市に来た時期的に考えて、それはありえないとハイドは知ってはいたが、口はださなかった。
「な、な、なんだと!そんなわけあるかぁー!ドルトは、ワシが・・・。」
「黙れ、豚。」
ミサキの声の温度が一気に下がる。
その冷たさを受けて、ドンゴはパクパクと陸にあがった魚のように口を開くだけで何もしゃべれなくなった。




