27 『ヒロ』 初めてのおつかい・・・ではなく初めての狩り
ヒロが、アレクシス達とエストの町を出てから、2週間が経過していた。
当初は日帰りで徐々に冒険者としての活動に慣れていく予定だったが、冒険者組合の受付嬢であるジュリの「こういうのは、一気に覚えた方がいいのよ。」という言葉でエストの町から3時間ほど西に行った草原でキャンプを張っていた。
このあたりは、元々、エストの町とヒルメリア都市連合国の交易都市グロースをつなぐ街道であるため、それほど強い魔物は出ないらしかった。
ただ、エストとグロースの交易が寂れてしまったため、最近、魔物を狩る者が少なくなり、また増えてきたそうだ。
しかも、盗賊も出没することもあるらしい。
そういうこともふまえて、ジュリが、「あそこがいいわよ。」と推薦したのだ。
当然、エストで活動している冒険者にとって、ジュリの言う事は絶対であるため、推薦ではなく命令と受け取ってこの場所で2週間活動しているのだ。
「ようやく、ヒロちゃんの弓も見れるようになって来たね。」
最初、ヒロの弓の腕は酷いものだった。
初めて弓を使う時、矢が後ろへ飛んだ時のアレクシスとシーターの呆然とした顔をヒロは恥ずかしさで見ることは出来なかった。
そもそも、弓なんてものを現実で使うことも、ゲームの中で使うことも無かったのでしょうがないといえばしょうがないのだが、「初めて使う子供でも、もう少しマシだよ?」とシーターに真面目な顔で説教された時ほど自分自身が情けなかったことはなかった。
「まあ、そういうな、シーター。」とヒロを哀れに思い止めに入ったアレクシスまで、「アレクシスも同じようなものでしょ?」と結局、アレクシスとヒロは2人でシーターに1時間説教をされたのだ。
シーター曰く、「いい?冒険者の基本は、剣でも槍でもなく弓なの。魔物を倒す時もまず弓で魔物を弱めてから、剣や槍でとどめを刺すのが普通なの。わかる?わからないの?馬鹿なの?脳みそ入ってるの?」と散々な言われようだった。
「戦争でもそうでしょ、アレクシス。まず、弓の打ち合いから始めるでしょ?」
「それは、状況によるからな。」
「はあ、じゃあ何?私が間違ってるって言うの?」
素直にシーターの言っていることを聞いておけばいいのに、アレクシスが反論するものだから、余計にシーターの怒りを買い、説教がどんどん長くなってしまったのだ。
後で、アレクシスに聞いたところによると、シーターは、元々、狩りを得意とするギルド『深緑の風』に所属していたため、特に弓に対する思い入れが強いらしかった。
それを知っているなら、反論するなよとヒロは思ったが、そこは、アレクシスも騎士団に所属していたこともあり、槍や剣に対する思いが強いらしい。
そして、アレクシスとヒロの2人でシーターの特訓を2週間受けて、ようやく、ヒロは初めて弓を使って魔物を仕留めたのだ。
仕留めた魔物は、スージーブーという魔物で、体長1mあるイノシシに瓜二つの魔物だった。
この魔物は、森近くの草原では珍しい魔物ではないらしく、畑さえ作っていなければ特に害のない魔物だった。
畑を作っている場合は、夜のうちに植えている野菜を根こそぎ食べつくしてしまうため、非常に問題があるそうだ。
体がそれなりに大きく、周囲への警戒も薄い魔物で、大体、弓の練習にはこの魔物を狙うところからはじめるのが一般的らしい。




