24 『エルダ』 胸を張る
武器屋での取り引きが早めに終わったエルダは、服や日用品、それにこの3日間で聞いた必要必需品を買った。
それでも、まだ時間が早かったので、サイラスの城へと向かった。
すでに3日間城に通っていたので、サイラスの城の門番も特に何も言うことなく、ラインベルトのいる応接室へと通してくれた。
「買い物はお済ですか?」
「ああ、いい物が買えたよ。」
満足げな表情でラインベルトの横に当然のごとく座るエルダ。
「ああ、そうだ。ルーベル爺、これを渡しておくぞ。」
エルダは、アイテムボックスの袋から、白金貨50枚の入った袋をルーベル爺へと渡した。
1袋しか渡さなかったのは、こんなところで全部渡すより、ちゃんとした場所で結婚の支度金として渡したかったからだ。
「ありがとうございます、エルダ様。」
ルーベル爺は、中身を確かめずに自らが腰につけていた皮袋へとそのまま入れた。
場所が場所だけに、こんな場所で中のお金を確認するのは躊躇われたからだ。
ただ、重さからして、金貨30~40枚は入っていると思っていた。
その時、ちょうど、応接室のドアをノックする音がして、太った金色の着物を着た豚、もとい人間が入ってきた。後ろには騎士らしき人物が2人ほど一緒について入ってきていた。
「いやいや、大変お待たせ致しましたな、エストラ男爵殿。」
ラインベルトとエルダ、ルーベル爺は立ち上がり、ルーベル爺はそのままラインベルトの座っていたソファーの後へと回る。
「いえ、こちらこそ、貴重なお時間を割いていただきまして、誠にありがとうございます。サイラス伯爵様。」
サイラス伯爵と呼ばれた豚、もとい人間は、部屋の一番奥のソファーに腰掛け、その後には騎士の2人が立った。
「それでは、今回の返済はおいくらかな?」
ラインベルトは、皮の袋をサイラス伯爵の前に差し出した。
サイラス伯爵は、袋を開け、テーブルの上で金貨を数えた。
「ふむ、エストラ男爵殿、この程度では元金はまったく減りませんぞ?」
「申し訳ございません、サイラス伯爵様。現在用意できるのはこれが精一杯でして。」
「こういってはなんだが、とてもエストラ男爵殿に返せるとは思えない。どうです?前に言ったように、私の3男をエストラ男爵の養子として貰ってくだされば、借金はチャラにするのですが?」
これは、養子にするだけでなく、養子にした後、すぐにラインベルトはエストラ男爵を隠居して、サイラス伯爵の3男にすべてを譲れという意味も含まれていた。
「それは・・・。申し訳ありません、サイラス伯爵様。今はまだ・・・。」
「と言われても、エストラ男爵殿には、今の状況でとても借金の白金貨100枚を返すことなど夢のまた夢でしょう?楽になられてはどうですかな?」
「ちょっと、待ってくれ?今、借金はいくらと言ったのだ?」
それまで静かにしていたエルダが急に会話に割り込んできた。
「・・・こちらの素敵な女性はどなたかな?」
「これは失礼。私は、エルダ・リ・エストラという者だ。」
「エルダ様、今はまだですよ。」
ルーベル爺が、後ろからエルダの肩を叩き、小声で忠告した。
「これは失礼した。エルダ・リ・マルクーレだ、今はまだ。」
後ろでルーベル爺が、少し頭を左右に振ったが、エルダには見えていないので関係なかった。
「こちらは、つい先日から私の騎士を勤めていただいてる女性です。」
「騎士・・ですかな?」
サイラス伯爵は、座っているエルダを視線で舐め回す。特に、その大きな胸を舐め回す様に見ていた。
ちなみに、今、エルダは鎧を着ていないため、その胸の大きさが特に目立っていた。
「いかにも。」
サイラス伯爵の視線など関係ないとばかりにエルダは胸を張った。
「それはそれは、エストラ男爵殿の騎士など、さぞ大変でしょう。もし、よろしければ、私の下で働きませんかな?給金は今の2倍は保証しますぞ?」
「断る。ラインベルトは私にとってかけがえの無いものを持っている。いくら積まれようがラインベルトの下を離れる気はない。」
「エルダ。」
感動を抑えきれない表情のラインベルト。彼は、エルダの性癖からくる言葉だということは、当然知らない。知らぬが仏である。
後ろにいるルーベル爺の表情は動かない。ルーベル爺は当然エルダの性癖を理解していた。




