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198 サイラス、最悪の1日(13)

ハイドとガドンガルは、真っ直ぐに城に伸びている大通りではなく、遠回りをして、衛兵達と出くわさないように細い裏道を通って来た為、城の城門にたどり着くのに少し時間がかかってしまっていた。



その最中に、2度ほど凄い轟音がして、城の横に立っていた左右の黄金の塔が崩壊したが、ちょうど建物の間を走っていたガドンガルとハイドには、何が起こっているのか見ることはできなかった。



ハイドはその轟音を聞いて、「・・・ミサキ、派手にやってるな。」と呟いたが、これはミサキに言わせれば、「冤罪よ!」ということになるが、これは仕方ないだろう。



ハイドからは、建物が邪魔で何が起こったのか見ることができなかったのだから。



「よし、ミサキのおかげで兵士達が城門におらん。」



建物の影から、城門付近を確認したガドンガルが、うれしそうに呟いた。



「・・・そういうことね。」



ここに来て、ようやくハイドもガドンガルが、何故ミサキにお礼を言っていたかに気付いていた。



ミサキは、城の兵士達をおびき出すために少し城から離れた場所で暴れ始めたのだ。



ガドンガルとハイドが城門に近づくと、そこには兵士達がいないのではなく、兵士達が倒れていることに気がついた。



「これは?」



ハイドは、地面に血が見当たらないのに、倒れたまま動かない兵士達を不思議に思いながらも、「好機だ。」と気にせず進むガドンガルについて先へと進む。



そして、城の中へと入っていった。







「いったい、どうなっておるのだ!」



宴の開かれていた大広間では、サイラス伯爵や出席者達がザワザワとしていた。



大広間の窓からは、先ほどサイラス伯爵の城の象徴とも言うべき左右の黄金の塔が崩壊したのが見えた。



サイラス伯爵は、急ぎ、黄金の塔の確認に向かうようにその場の兵士達に命じたが、すでに城外に多くの兵士が出ている上に、この場に多くの貴族が居る以上、ここの警備をこれ以上薄くは出来ないと言われ、渋々納得していた。



「御安心ください、父上。」



イライラしていたサイラス伯爵の前に自身の3男であるハインリヒが進み出てきた。



「おー、ハインリヒ。」



サイラス伯爵の表情が、少しゆるんだ。



ハインリヒは、このサイラス伯爵領の中でも、一番の剣の使い手であったからだ。



しかも、大金を叩いて買ったアダマンタイトの防具と剣を持っているため、もはや、このアリステーゼ王国屈指の強さを誇るといっても過言ではなかった。



いや、サイラス伯爵はそう思っていた。



しかも、目に入れても痛くないほど可愛がっていた息子でもあった。



「私がここに控えて居りますれば、万が一、賊がここに来ても安心でございます。父上の前で一刀両断にして御覧にいれましょう。」



ハインリヒは、サイラス伯爵の前で片膝をつき、頭を下げた。



「そうか、いや、そうだな。お主さえ居れば、問題はないな。」



サイラス伯爵は安心したように一息ついた。



しかし、ハインリヒが心の中で思っていたことは別のことだった。



今、サイラス伯爵がいなくなれば、自動的にその地位は長男にいってしまう。



せめて、サイラス伯爵がハインリヒの領地をどこからか奪い取ってくれるか、もしくは、ハインリヒが長男を陥れるまで生きていてくれなくては困るのだ。



(それまでは、長生きしてくださいよ、父上。)



頭を下げた状態で、ハインリヒは、歪んだ笑いを浮かべていた。



「そう言えば、父上、ちょうど良い機会です。あの女を使ってみるのはいかがでしょうか?」



顔を上げたハインリヒの表情は、すでに普通の表情に戻っていた。



「そうだな。今までただ飯を食べておったのだ。こういう時に働いてもらわなくては。おい、アイツを呼んで来い。」



「はっ。」



兵士の1人が大広間で走って出て行った。







トンットンッ



「入るぞ。」



サイラス伯爵の城の一室のドアをノックし、一声かけて兵士が中に入っていった。



中は、テーブルとベッドがあるだけの質素な部屋だった。



そのベッドの上では、女性がヨダレを垂らしながら、幸せそうに寝ていた。



「おい、起きろ。」



「ふぁい。」



女性は、兵士に突かれて、驚いたように起き上がり、周囲を見わたした。



「・・・ここは?」



「まだ、寝ぼけているのか?」



「・・・あっそうでした。おはようございます。」



女性は、ようやく自分がどこにいるのか思い出したようだ。



「・・・まだ、夜だ。」



兵士は、呆れた様子でその女を見ていた。



「・・・では、朝ご飯は?」



「だから、まだ、夜だ。」



兵士の言葉を聞き、再び、ベッドで横になる女性。



「朝ご飯になったら、起こしてください。zzzzzzz・・・・・・。」



「だから、伯爵様がお呼びだ!起きろ!」



「ふぁい。」



再び、体を起こす女性。その顔は、しまりの無い、だらけきったものだった。



「まったく、何でこんな奴が・・・。早く準備して来いよ。」



「わかりました・・・・zzzzzz。」



「だから、寝るな!」



兵士は、仕方なく、女性を背負うとサイラス伯爵の下へと向かった。


5/20(土)はちょっと多目に投稿する予定です。


一応、この後、9時から17時にかけて、9回分くらいは1時間ごとに予約投稿しています。


私に予定がありますので、予約投稿としていますが、もし、予定が早く終われば、予約投稿ではなく、自ら予約投稿を解いて投稿するかもしれません。


その代わり、明日の日曜日からは、またしばらく1日1回もしくは2日に1回の投稿になる予定です。



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