197 サイラス、最悪の1日(12)
城へと続く大通りには、衛兵や兵士達の死体が溢れていた。
すべての死体が、首を一刀両断されているか、上半身と下半身が真っ二つにされていた。
大通りは血に染まり、その血の中にミサキが立っていた。
城からの兵士の増援も到着し、大通りの城方面は、多くの兵士や衛兵が、道を塞いでいた。
しかし、その兵士や衛兵達は誰もミサキには近づけないでいた。
いや、正確には近づいた者は、すべて一太刀でミサキの持つ漆黒のデスサイズで切り裂かれていたため、兵士や衛兵達の足が竦んでしまっていたのだ。
「フフフンッフフフフフー、フフフンッ。」
ミサキは機嫌良さそうに鼻歌を歌いながら、兵士達に近づいていく。
しかし、ミサキが1歩進むごとに、兵士達は1歩下がった。
「フフフンッフフフフフー、フフフンッ・・・・・・って、アンタ達、何で私が近づくと下がるのよ!かかって来なさいよ!」
ミサキがキレた。
兵士達はお互い顔を見合わせ、「お前が行けよ。」と言い合う声が聞こえてきた。
そこへ上空から兵士達のど真ん中に凄い勢いでエルダが降りて来た。
ズガーンッともの凄い音を立てて降り立ったエルダとファルクスの周りには、下敷きになった兵士の死体が転がっていた。
そして、エルダは、そのまま何も言わず、持っていた槍を一周振り回した。
ビュンッという音の後にズドッという鈍い音を立てて、エルダの周りにいた兵士達の首が地面に落ちた。
そして、その後、首のない兵士の死体が地面に倒れ、辺りを血に染めていく。
兵士達は、その光景を見て、ついに恐慌状態に陥った。
「うわわわわーーーー!」
兵士達は、叫びながら我先にと町中へ逃げ出した。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
ミサキの言葉で待つ兵士は1人もいなかった。
あっという間にミサキとエルダの周りから生きた兵士がいなくなった。
「・・・あんた、何しに来たのよ。」
「何って、・・・当然、ミサキを助けに来た。」
エルダは明らかに考えて言い訳をしていた。
ミサキが怒っているのがわかったからだ。
「・・・誰が頼んだのよ?」
「・・・あっ、そう言えば、ラインベルトが待ってるんだった。」
「知るか!あんたが、私の欲求不満解消の相手になんなさいよ!」
ミサキは、デスサイズをエルダ目掛けて、振るった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ、ミサキ。」
エルダは、持っていた槍でミサキのデスサイズを受け止めた。
「うっさーい。もんどーむよー!」
こうして、なぜか、ミサキとエルダが戦い始めた。
ズガーンッ、ドガーンッと町からは派手な音が聞こえてきていた。
「派手にやってるなぁー。」
ヒロは、金貨や宝石を一所懸命拾いながらも、町から聞こえてくる音を聞いていた。
ニーナは、音など耳に入らない様子で一所懸命、金貨や宝石を拾っていた。
ヒロ達は、ここに忍び込む前に、ミサキやハイドやガドンガルがこの城に攻め込もうとしているのを影から隠れてみている上に、エルダが上空から降りてくるのも見ているので、この騒ぎは、兵士とミサキ達が戦っている音と思っていた。
まさか、ミサキとエルダが戦っている音とは思ってはいない。
ふと、城の方を見ると、ハイドとガドンガルが、城の中に忍び込んでいるのが見えた。
「・・・ニーナさん、俺、ちょっと別のところに行っていいですかね?」
「いいにゃ。そのかわり、にゃーの拾った物はあげないにゃ。」
ニーナの目は欲にくらんでいた。
「・・・いりませんよ。」
「にゃーの独り占めにゃ。これでにゃーもお金持ちにゃ。」
ニーナは、一所懸命、金貨や宝石を次々に拾っていた。
ニーナの持ってきた袋はすでにパンパンになっていた。
「・・・頑張ってくださいね。」
それだけ言うと、ヒロは、ハイドとガドンガルの後を追いかけた。