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196 サイラス、最悪の1日(11)

サブタイトルを変更しました。

サイラス騒乱→サイラス、最悪の1日

ヒロとニーナが散らばった金貨や宝石を拾っていると、崩れた右側の黄金の塔の大きな瓦礫がゴトゴトと動き、そして、勢いよくヒロの方へと飛んできた。



ヒロは、その瓦礫をよけ、飛んできた瓦礫が元あった場所を見た。



そこには、瓦礫の下から1人の男が立ち上がっていた。



「いやいや、まったく驚きましたねー。まったく、今日は踏んだり蹴ったりです。」



瓦礫の下から出てきた男は、パンッパンッと自らの体についた汚れや埃を払っていた。



「・・・誰だ?」



「んっ?おや、まだ、生きている人が私以外にいるとは、あなた、運がいいですね。」



その男はヒロに笑顔を向けた。



「ヒロ、知り合いかにゃ?」



「おや、もう1人いるとは・・・んっ?あなた、どこかで見ましたね・・・ああ、なるほど、そういうことですか。まったく、私の今日の運勢は本当に最悪のようですね。」



男は、仮面をつけた顔に手を当て、左右に何度か振った。



「何か、ニーナさんの知り合いみたいですよ?」



「あんな変な仮面をつけた奴、知らないにゃ・・・いや、変な仮面をつける知り合いはいるけど、あれは知らないにゃ。」



ニーナはじーっとヒロを真っ直ぐ見ていた。



「・・・そんなに俺の仮面、変ですか?」



「変にゃ。」



「そ、そうですか・・・。」



ヒロはあからさまに落ち込んだ。



可笑しいなら可笑しいと何故、『パンプキン・サーカス』のメンバーは教えてくれなかったんだろうと悲しくなった。



「無視ですか?この変な格好をした私を無視ですか?・・・素晴らしい・・・さすがに悪魔族キメラ種の仲間ですね。」



男はうれしそうに瓦礫の上で身震いをしていた。



「ニーナさん、俺の後ろに下がってください。」



ヒロの顔が真剣みを帯びた。



それもそのはずだった。



『パンプキン・サーカス』のメンバー以外ほとんど知る者のいないはずのミサキの種族を言ったのだ。



ヒロが警戒するのも当然だった。



「あなた、何者ですか?」



「んっ、私ですか?私はしがない商人ですが?」



「商人が何でそんなところに?」



「いやいや、町を出る前に、今までの御代を頂いておこうと欲張ったのが間違いでした。まさか、この塔を崩壊できる存在が・・・いるのはわかってたから、町を出ようとしたんでした。アハハハハ、これはこれは、私の失態ですね。」



「なぜ、ミサキさんの種族を知ってるんですか?」



「ミサキとは誰のことですかな?私の知り合いにミサキという名前はいなかったような・・・はい、どれだけ考えてもいませんね。」



「だったら、なぜ悪魔族キメラ種の人物を知ってるんですか?」



「ああ、彼女のことですか。なるほど、なるほど、覚えておきましょう。」



男はうんうんと何度も首を縦に振っていた。その行為はどこかヒロを馬鹿にしているようだった。



しかし、ヒロは、それに怒ったりはしなかった。



明らかに、目の前の男は、不気味な雰囲気を放っていたからだ。



「何故、悪魔族キメラ種の人物を知っているかということなら簡単ですよ。私、相手の種族がわかる魔眼持ってますから。」



男が仮面を取ると、そこには左目は紫色で右目は赤色の瞳があった。



「この左目が魔眼『真実の瞳』なんですよ。ただ、残念ながら、片目しか持ってないので、両目の魔眼に比べて、能力は極端に落ちるのですがね・・・。」



男は残念そうに首をカクッと曲げた。



「・・・俺は何に見えますか?」



ヒロの言葉に男は興味深そうにヒロを見た。



「・・・んーーーん。どう見ても人間にしか見えませんが?」



「そうですか。」



ヒロは、同じ魔眼持ちでもジュリには劣るということを確認したかっただけだった。



「それにしても、貴方達、よく悪魔族キメラ種と行動を共にしますね?」



「どういう意味ですか?」



「おや、一緒に行動していて気付かれないとは・・・これはこれは・・・興味深いですね。・・・悪魔族キメラ種はその種族の性質か、コロコロ性格が変わりませんか?感情の起伏が激しいというか、すぐに人を殺してしまうというか、まぁー極端に情熱的な性格と極端に冷酷な性格が同居しているというのですかな。しかも、悪魔族キメラ種は強いですからね。悪魔族キメラ種と破壊はセットですから。そのおかげで、人々には魔王と呼ばれてしまうわけですよ。知ってます、魔王?知らないですよね、今の若い人は・・・。」



男は、懐かしそうな顔をしていた。



「・・・魔王の関係者の方ですか?」



「いやいや、関係者なんておこがましい。まぁー友人の1人でしたよ。何度も殺されかけましたがね。ウフフフッ。」



あっさりととんでもないことを口にする男。



「・・・ひとつ気になることがあるんですが?」



「何ですか?あっ、私の名前を名乗ってませんでしたね。私は、ペドロリーノと申します。」



ペドロリーノは、瓦礫の上で丁寧に頭を下げた。



「いえ、そういうことではなく、何故、そんなことを俺に教えてくれるのですか?」



「いえいえ、悪魔族キメラ種と共にされているということは、私達の味方になる可能性が高いですから。少しでも好感を持ってもらおうとしているだけですよ。ウフフフフ。」



ペドロリーノは再び顔に仮面をつけた。



「とりあえず、今日は、あなた方に挨拶できただけでもよしとしましょう・・・偶然ですがね。ウフフフフ。あまり長居すると悪魔族キメラ種のミサキ様でしたか?そのミサキ様に殺されるのも嫌ですので、今日のところは失礼させていただきます。」



ペドロリーノが両手を広げると、ペドロリーノの背中から1対の漆黒の翼が現れた。



「それでは、またの素晴らしい出会いを期待して、今日のところは失礼致します。」



ペドロリーノは笑みを浮かべたまま、夜空へと消えていった。



「ヒ、ヒロ!」



ヒロはニーナの焦った声に何が起こったのかと振り返った。



「アイツのせいで忘れてたにゃ。早く金貨や宝石を拾うにゃ!」



「・・・・はいはい。」



ヒロとニーナは、散らばった金貨や宝石を一生懸命拾い続けた。


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