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195 サイラス、最悪の1日(10)


「何ともいい響きだと思わないか、ラインベルト。まるで私達の未来を祝福しているかのようではないか。」



エルダとラインベルトを乗せたフォルクスは、現在、サイラスの上空にいた。



そのエルダとラインベルトの下のサイラスでは、鐘の音が鳴り響いていた。



「エ、エルダ、全然いい響きじゃないよ!それどころか、予想通り、大変なことになってるよ!」



ラインベルトは、サイラスの様子を眺めて、顔面蒼白であった。



「んっ?おお、あんなところにミサキがいるじゃないか・・・いいな、楽しそうだ・・・。」



エルダの前に座っていたラインベルトには見えなかったが、エルダはミサキを羨ましそうに眺めていた。



「た、楽しくないよ、エルダ。全然、楽しくないよ。・・・これ、どうにかしなきゃって、エルダ、その槍は何?」



ラインベルトが後ろを振り返ると、エルダが、右手に1本の槍を持ち、槍投げのように構えていた。



「んっ?何、気にするな、ラインベルト。ちょっと、やりたいことを思い出してな。ついでにやってしまおうかと・・・。」



エルダは、ラインベルトに話しかけながらも、持っていた槍を投擲した。



ドガーーーーーーーーーーン。



そのエルダから放たれた槍は、寸分違わず、サイラスの城の右側に立っていた黄金の塔に命中に爆発した。



エルダの投げた槍によって破壊された右側の黄金の塔は、もの凄い地響きを上げながら、崩れ落ちた。



「・・・エ、エルダ?」



ラインベルトは、ありえない光景に茫然自失になっていた。



そして、ゆっくりと振り返り、エルダを見ると、エルダの手には再び槍が握られていた。



「・・・まさか?」



「片方だけ崩れるのは不公平だとは思わないか、ラインベルト?」



そんなラインベルトには理解できない言葉と共に、エルダは再び槍を投擲した。



そして、放たれた槍は、残された左側の黄金の塔へと命中し、右側と同じように爆発した。



右側の塔と同じように崩れ落ちる左側の黄金の塔。



そして、地響きが収まった時、左右の黄金の塔のあった場所には、瓦礫と共に、多くの金貨や宝石が辺り一面散らばっていた。



「よし。」



「よしじゃないよ、エルダ!」



「何だ、ラインベルト?何が不満なんだ?」



「僕が不満とかではなくて・・・。」



ラインベルトはもうあまりの事態に、エルダに何と言ったものか混乱して、うまく言葉にならなかった。



「なるほど。言わなくてもわかるぞ、ラインベルト。やはり、中途半端はよくないな。ここは、『パンプキン・サーカス』の一員として、パーティーに参加しないということは有り得ない。では、私は、ちょっと行って来るから、ラインベルトはフォルクスの上で待っておいてくれ。」



エルダは、「えっ?」という顔のまま固まっているラインベルトを置いて、フォルクスの上から飛び降りた。



そして、上空でファルクスを出すと、ファルクスは、エルダを空中でうまくその背でエルダを受け止めた。



「いくぞ、ファルクス!」



「ヒヒヒィーン。」



ファルクスに乗ったエルダは、下で戦っているミサキの下へと降りていった。











ヒロとニーナは、うまく城の城壁の内側へと潜り込んでいた。



幸い、城へと続く大通りでミサキが暴れ始め、城門の警備は手薄だったため、侵入は容易だった。



城門の少ない兵達は、ヒロが麻痺のナイフを使い、全員、痺れて動かなくし、その間に侵入したのだ。



「で、どこに行くんですか?」



「にゃーは、今日、町に居る時に聞いたにゃ。あの黄金の塔には、お宝がいっぱいらしいにゃ。」



「それを奪うってわけですか?」



「その通りにゃ。」



ヒロとニーナは、物陰から右側の黄金の塔を観察していた。



黄金の塔の周りには多くの兵達が警備をしており、さすがのヒロも容易には近づけなさそうだった。



「さあ、ヒロ、行くにゃ。」



「・・・それは、俺がおとりになれという意味ですか?」



「そうにゃ。ヒロがおとりになっている間に、にゃーがあの塔の鍵を開けるにゃ。」



「・・・100歩譲っておとりにはなるとして、ニーナさん、あの塔の鍵を開けられるんですか?」



「当然にゃ。にゃーは怪盗にゃ。用意周到にゃ。さっき町で、ミサキお姉様とちょっと別々に行動していた時に良いものを買ったにゃ。それが、この鍵にゃ。」



ニーナの手には、いかにもショボイ鉄製の安っぽい鍵が握られていた。



「それは?」



「売ってくれた人が言うには、黄金の塔の鍵ということらしいにゃ。しかも、黄金の塔2つとも開けられる素晴らしい鍵らしいにゃ。しかも、お値段、大銀貨1枚とお安くしてくれたにゃ。」



「・・・そんなものに俺の大銀貨を使ったんですか?」



ヒロは呆れてモノが言えないという表情である。



「違うにゃ。貰ったからには、にゃーの大銀貨にゃ。何に使おうが文句は言わせないにゃ。」



「昼食代はどうしたんですか?」



「にゃーが泣きつけば、ミサキお姉様は最終的には出してくれるにゃ。」



ニーナは完全に悪人の顔をしていた。



「・・・それ、ミサキさんに言いますね。」



「勘弁してほしいにゃ。取り分6:4でいいから、ミサキお姉様には黙ってほしいにゃ。」



ニーナは、必死の形相でヒロに泣きついた。



「ちなみに6は?」



「にゃーにゃ。」



「・・・絶対にミサキさんに言いますね。」



「悪かったにゃ。にゃーが欲をかいたにゃ。5:5でいいにゃ。」



「・・・・。」



「4:6で。」



「・・・・。」



「お、鬼にゃ。ヒロは鬼にゃ。しかし、にゃーもまだ殺されたくないにゃ。3:7でいいにゃ。」



「仕方ありませんね。それでいいですよ。」



ヒロは交渉成立とばかりに物陰から出て、黄金の塔の兵達のところに向かおうとしたところ、上空から何かもの凄いスピードで黄金の塔へと向かってくるのが見えた。



「あれは・・・エルダさん?」



ヒロの目には上空に浮かぶエルダとフォルクスが見えた。



そして、まずいと、ニーナに覆いかぶさった。



その瞬間、黄金の塔がもの凄い轟音と共に崩れ落ちた。



「にゃー!」



ニーナが、ヒロの下で悲鳴を上げた。



「大丈夫ですか、ニーナさん!」



ヒロは、埃まみれの体を起こし、自らの下にいるニーナを見た。



ニーナは泣いていた。



「どこか怪我したんですか?」



「襲われたにゃ。ヒロの事を信じていたのに、にゃーを襲ってきたにゃ。」



「・・・よくこの状況でそんなことが言えますね?」



「にゃ!そういえば・・・にゃんなのにゃ?にゃんでこんなに埃っぽいにゃ?」



ニーナは体を起こし、周辺を見わたした。



その時、今度は左側の黄金の塔がもの凄い音と共に崩壊した。



「にゃーーーー!にゃんなのにゃ?」



「・・・エルダさんですよ。」



左側の黄金の塔は、離れていたため、ヒロは特に被害を受けることはなかった。



「エルダ?エルダがいるのかにゃ?」



「ええ、ほら、今、下に降りて来てますよ。」



ニーナの目にも、上空から降りてくるエルダが見えた。



「大変にゃ!このままでは、にゃーの『パンプキン・サーカス』での序列が下がるにゃ!ヒロ、早く辺りに散らばった金貨や宝石を拾うにゃ!」



「まったく、ニーナさんは。」



ヒロは呆れながら、辺りに散らばった金貨や宝石を拾い始めた。



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