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188 サイラス、最悪の1日(3)


ミサキ、ヒロ、ニーナ、ハイドを乗せた馬車がサイラスに到着したのは、午前11時くらいだった。



エストを出発したのが、午前8時ぐらいだから、通常6時間かかる道程を3時間で走破したのである。



早速、ミサキ達は、宿屋へと向かい部屋を取った。



この世界では、午前11時でも宿屋にチェックイン出来るため、早めに宿屋を取っておいたのだ。



それでも、この宿屋には、すでに1人部屋が数部屋しか空いていなかった。



それだけ、サイラスに来る人の数が多いということであろう。



ミサキ達は、当初は2人部屋を2部屋取る予定だったが、予定を変えて、1人部屋を4部屋取った。



部屋を取った後で、ミサキ達は宿屋の前で揉めていた。



昼食に何を食べるかで揉めていたのだ。



「あの、もう、何でもいいから、別々に食べましょうよ。」



ミサキとハイドの言い争いに嫌気がさしたヒロの提案で、別々に昼食を取ることに決定した。



「そうね。こんな狼となんて一緒に食べるのごめんだわ。」



「それはこっちの台詞だ、ミサキ。」



「はいはい、わかりましたから、俺はもう行きますよ。」



ヒロは1人で歩いていこうとするが、歩き出そうとしていたヒロの服をミサキが掴んで止めた。



「何ですか?」



ミサキは笑顔でヒロに片手を差し出していた。



「ヒロリン、私が何のためにここに来たか覚えてる?」



ミサキは笑顔であった。



「覚えてますけど、すぐに武器を売りに行かずに、せっかくサイラスに来たのだから、1泊したいと言ったのはミサキさんですよね?」



「その通り!そして、まだ、武器を売ってないので、ノーマネーな私・・・ということは?」



ミサキのヒロを見る目がキラキラしていた。



「・・・・・返してくれるんですよね?」



「もちろん!・・・ドルトが。」



仕方なく、ヒロは、ミサキの差し出された手のひらに銅貨を1枚置いた。



「・・・1回死んどく、ヒロリン?」



ミサキの態度は、どうみてもお金を貸してもらう人の態度ではなかった。



仕方なく、ヒロは、これ以上は面倒なので、大銀貨1枚をミサキの差し出された手のひらに置いた。



「・・・う~ん、残念。色が違います。」



ミサキは、おしいっというような表情をしていた。



「金貨って・・・向こうの世界でどれくらいの価値かわかってますか?」



「私、金貨以外持たない主義なの。」



ノーマネーの人間の言う台詞ではなかった。



ヒロは、しばらくミサキと見つめあった後、仕方なく、渋々、ミサキの手の上に金貨を置いた。



そして、先に渡していた銅貨と大銀貨を回収しようとするが、ヒロがミサキの手のひらから取る前に、ミサキは手をギュっと握り、ヒロの前では二度と開かなかった。



「・・・はぁー、約束ですよ、ミサキさん。」



「まかせて!ドルトは、私と違って約束守る主義だと思うから。」



ミサキ、完全に他人任せであった。



そんなヒロの肩をポンッと叩き、ハイドが、「苦労してるな。」と声をかけた。



「慣れているので大丈夫です。ジュリ様とかジュリ様とかジュリ様で。」



ヒロの目は悟りを開いた者のようだった。



そんなヒロの前にニーナが手を差し出してきた。



「・・・ミサキさんに多めに渡しているので、それを2人で分けてください。」



ヒロに言われて、ニーナはミサキの方を向いた。



ミサキは、ニーナの手の上に銅貨を1枚、満面の笑みで置いた。



ニーナは絶望の表情であった。



「ヒロ~、ミサキお姉様がにゃーをいじめるにゃ。」



ニーナがヒロの胸に抱きつきながら、涙を流した。



「はぁ・・・仕方ないですね。」



ヒロは、大銀貨1枚をニーナに渡した。



「ヒロ、ありがとうにゃ。」



ニーナは、うれしそうにヒロから大銀貨1枚を受け取った。



「大事に使ってくださいね。」



「わかってるにゃ。ヒロから貰ったこの大銀貨1枚は大事に使うにゃ。」



そう言うとニーナはミサキと一緒に去って行った。



「・・・ハイドさん、俺、ニーナさんにあげるって言いましたっけ?」



ハイドは、優しくヒロの肩をポンッと叩くと、「昼飯奢るぜ。」と声を掛け、ハイドとヒロは、昼食を食べるために歩き始めた。



そのヒロの背中には、哀愁が漂っていた。



ちなみに、ハイドとミサキが揉めていたのは、サイラスは都会だけあり、多くのお菓子専門店があるので、ミサキは「そこで昼食を取りたい。」と言い出したのだ。



それで、ハイドが、「お菓子なんて昼食に食べる物じゃないだろ?」と言い、喧嘩になっていたのだ。



「まぁ、肉でも食って元気だせよ。」



ハイドの言葉に、ヒロは、(よく考えたら、昼から肉かぁ・・・昼は蕎麦とかうどんが食べたいなぁー。)とちょっと日本での生活を懐かしんでいた。



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