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186 サイラス、最悪の1日(1)


現在の時刻は、午前10時だった。



そして、その時刻にエストラ男爵領の南に位置するサイラス伯爵領の都市サイラスの城の会議室には、3人の貴族が集まっていた。



1人は、この都市の領主であるサイラス伯爵。



あとの2人は、サイラス伯爵領の東側に位置するテトリナ子爵とサイラス伯爵領の南側に位置するケイティート子爵であった。



「まったく、うまくいかないものですな。」



サイラス伯爵は、テーブルの上に山積みに置かれたお菓子を次々に口へと運んでいた。



「その通りでございます、サイラス伯爵様。」



テトリナ子爵は、額に大量の汗を浮かべながら、サイラス伯爵の機嫌をうかがっていた。



「仕方がないでしょう。・・・元々、作戦に無理があったということではないですかな?」



ケイティート子爵は、無表情でサイラス伯爵がお菓子を食べているを見ていた。



「それは・・・このサイラスの作戦が悪かったと言いたいのですかな?」



サイラス伯爵のお菓子を口へと運ぶ手が、この日、初めて止まった。



そして、サイラス伯爵とケイティート子爵の視線がテーブルの上で火花を散らした。



「まあまあ、お二人とも、落ち着いてください。」



テトリナ子爵は、ハンカチで額から流れ出る汗を何度も拭きながら、仲裁に入る。



「元はと言えば、あなたの兵士達が弱いのがいけないのですよ。」



「申し訳御座いません。」



サイラス伯爵から叱られたテトリナ子爵は、テーブルに汗まみれの額がつかんばかりに頭を下げた。



「・・・それにしても、今更、魔王とは・・・。」



「・・・フゥー・・・確かにそうですな。魔王とはまた面倒な者が復活したものです。」



ケイティート子爵はあえて話題を逸らしたのだが、サイラス伯爵もそれに乗った。



いつまでも誰かを責めていても仕方ないからだ。



「そうですね。このアリステーゼ王国からの独立を目指す大事な時期に魔王とは・・・ヒィッ。」



テトリナ子爵は、サイラス伯爵とケイティート子爵に睨まれていることに気付き、小さな悲鳴を上げた。



「・・・まったく、テトリナ子爵は・・・ちょっと、無用心が過ぎますね。」



「そうですな。誰がどこで聞いているかもわからないのに、我々の目標を口に出すとは・・・。」



「申し訳御座いません。」



テトリナ子爵が再び頭を下げた。



コンッコンッ



その時、会議室のドアをノックする音が響いた。



「誰だ?」



サイラス伯爵の声でドアが開き、一人の男が入ってきた。



その男は、カラフルな色の服を着ており、身長は180cmくらい、髪は赤色、顔は口の上から額までの奇妙な仮面を着けていた。



仮面の目の部分は、笑った時の目の形が模られており、見えている口の口角が常に上がっているため、いつも笑っているように見えた。



「これはこれは、皆様、お揃いで。」



男は、どこか人を馬鹿にしたような口調で、3人を見ると深々と頭を下げた。



「ペドロリーノ、挨拶はいい。さっさと席に座れ。」



「これは、申し訳ありません。」



ペドロリーノは、席に着こうと歩き始めるが、何にもないところで急に派手に転んだ。



その様子を見たテトリナ子爵は噴出しそうになったが、サイラス伯爵の不機嫌そうな顔を見て、必死に笑いを堪えた。



「相変わらずだな、ペドロリーノ。」



ケイティート子爵は、無表情だった。



「いやいや、失礼致しました。」



ペドロリーノは、笑い顔のまま立ち上がると席に着いた。



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