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176 ギルド『パンプキン・サーカス』会議(3)


ハイドは、夜のエストの通りを歩いていた。



この新しいエストは、すべての道に街灯がついているため、夜でも道を歩くのに不便はなかった。



ハイドが歩いている通りは、将来的に歓楽街を作る予定の区画だ。



これは、新しいエストを造る時にヒロとミサキが提案したことだが、似た職種を同じ区画に集めた方がいいのではないかと言い出し、それをラインベルトが承認して、そういう都市の造り方になっている。



実際、考えてみると、歓楽街は同じ場所に集まっていた方がいいというのはハイドにも理解できた。



お客としても、酒を飲もうと思えば3、4件回るのは普通のことだし、近くにそういう店が集まっていた方が有難かった。



それは、店の方も同じことだと思われた。



自分の店目当てでなくても、他の店目当てで訪れたお客が来る可能性があるからだ。



「アイツ、意外と頭いいんだよな。」



ミサキをアイツ呼ばわりしながら、ハイドは1人歩いていた。



今日は、酒飲み友達のディートに誘われて、ディートが今日、オープンする店に向かっているところだ。



詳しい話は聞けなかったが、とりあえず、来てみてくれと言われ、向かっているのだ。



「そういや、今日の夕方、ミサキとニーナを見なかったな?」



ハイドは、ちょっと疑問に思ったが、こういうところに行くとバレたら、絶対に何か言いがかりをつけてくるに決まっているので、ちょうど良かったと思っていた。



「よく考えたら、俺は、こういう女の子のいる店に行くために、わざわざ、交易都市グロースまで足を伸ばしたんだった・・・。海岸で余計な荷物を拾ったがために、今の今まで行くことが出来なかったんだよ・・・。長い・・・長かった。」



道端で急に止まり、感涙を流すハイドを変なモノを見る目で見ながら、人が通り過ぎて行くが、そんなこと今日のハイドは気にならなかった。



「今日は、楽しんでやるぞー!」



ハイドは、半分走っているかのようなスピードで、ディートの『乱華酒家』へと急いだ。










その店構えは予想以上に豪華だった。



4階建ての黒塗りの建物は、なんと魔石によるライトで華やかに装飾されていた。



通常、こういうことをしようと思うと、それこそ、大金が必要なのだが、ミサキの『都市創造』では、魔力だけでお金は必要ないとあって、ハイドの想像以上にディートは好き勝手やったようだ。



確か、2階までは吹き抜けで3階がVIPルーム、4階が事務所と聞いていた。



地下もあるらしいが、ハイドはそこまでは詳しく聞いてなかった、もしくは、飲んでいた時に聞いたので覚えてなかった。



入り口には、黒ウサギ族の男性と白ウサギ族の男性が立っていた。



黒ウサギ族の男性は、白色のスーツを着て、白ウサギ族の男性は、黒色のスーツを着ていた。



このスーツという服は、ちょっと前に交易都市グロースからアリステーゼ王国に入ってきて、王都アウグスティンでは、貴族の間でちょっと流行になってきていた。



「ディートの奴、金かけてるな。」



ハイドは、感心しながら、店の前に行った。



「「いらっしゃいませ。」」



店の前に来たハイドに対して、黒ウサギ族と白ウサギ族の男性が、揃って礼をした。



「お、おう。」



ハイドは思ったよりもキッチリとした店員の態度にちょっと驚いていた。



ディートの性格なら、もうちょっと適当なのかと思ったのだ。



「どうぞ、お入りくださいませ。」



黒ウサギ族と白ウサギ族の男性が、扉開きのドアを開けると、そこには外とは別世界が広がっていた。



華やかな照明に豪華なソファーやテーブル、そして、何より多くの女性が綺麗なドレスを身に付けていた。



ハイドの前には、4人の女性が立っていた。



「「「「いらっしゃいませ、御客様。」」」」



先ほどの黒ウサギ族と白ウサギ族の男性のように揃った礼だった。



「本日は、当店『乱華酒家』に御出でくださいまして、誠にありがとうございます。御名前を御伺いしてもよろしいでしょうか?」



「・・・ハイドだ。」



ハイドは、少し体の向きを斜めにする。そして、声もいつもより低い声になっていた。



「素敵な御名前ですね。ハイド様、当店のシステムを御存知でしょうか?」



「いや、俺が知っているのは、目の前に素晴らしい女性がいるということだけだ。」



ハイド、なぜか一瞬、目をつぶった。決して、ゴミが目に入ったわけではない。



「まあ!・・・ハイド様、お上手ですね。」



女性達が少し照れたように微笑んだ。



「悪いな。俺は、嘘は言えない・・・不器用な男なんだ。」



ハイドの視線は、斜め上を見上げていた。決して、斜め上に蝿がいたわけではない。



「ありがとうございます、ハイド様。・・・ハイド様も素敵ですよ。」



女性は少し頬を赤らめていた。



そして、女性はハイドに店のシステムを説明した。



簡単にいえば、女性の指名ができるというありふれたシステムだ。



ただし、指名には指名料がかかるということである。



「・・・理解した。」



ハイドは、なぜか顔の前で手を広げ、ポーズを決めていた。



「それでは、御席に御案内させていただきます。」



ハイドの両側に女性が立ち、ハイドの両腕を取って、ハイドを席へと案内した。



そのハイドの両腕には、微妙に、本当に微妙に柔らかい感触がしていた。



この時、ハイドは、この店に通いつめてやると決心していた。



そして、それは現実のものとなる。ただし、ハイドの思惑とは違う形だったのかも知れないが・・・。


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