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173 地底湖の吸血鬼城(8)


「ヒロ、お主には感謝しておるぞ。」



アラザイルは、少しお酒に酔っているようだ、骨のくせに。



「何がですか?」



「我を目覚めさせてくれた上に、このような立派な城まで用意してくれ、さらには兵士達まで用意してくれるとは・・・我、感激。」



アラザイルは感無量のようで、涙でも流しそうな表情・・・はわからないので雰囲気だった。



「・・・ジュリ様。」



ヒロは、どうしましょか?という表情でジュリを見た。



「アラザイル、ということは、あなたはヒロの配下ということよね?」



ジュリ、悪い顔をしていた。



「いかにも。城と兵士を貰ったからには、我、ヒロの配下として全力を尽くす所存。」



「実は、ここは、今、ドワーフ達に御願いして、ダンジョンにしているところなの。ダンジョンって知ってる?」



「遺跡の一種のことであろう。我、何度か行った事あるぞ。」



「なら話が早いわね。あなたに、そのダンジョンの・・・領主を任せるわ。」



「・・・ダンジョンの領主?・・・それは、どういうものだ?」



「難しく考えなくてもいいわ。普通の領地経営と一緒よ。人を多く集めることが基本よ。人が集まれば、自然にお金が生まれるからね。」



ジュリは、ヒロの「金?」という呟きをあえて無視した。



「なるほど・・・。それは面白そうだ。あい、わかった。見事、その役目、果たして見せようぞ。」



ジュリは、その後、アラザイルに詳しい説明をした。



ヒロは、その様子を呆れた様子で見ていた。



こうして、1週間後、見事に地底湖の城に続くダンジョンが完成した。



完成した夜、地底湖の城の中で、ヒロ、ジュリ、ミュミュ、ガドンガル、ドワーフ達、そして、アラザイルとお付きのスケルトン達で王座の間で宴会をした。



何故か、アラザイルが王座に座り、その横にヒロが造ったはずのスケルトンが立っており、その他のメンバーは床に座っていた。



「・・・何か違いませんか?」



ヒロは、我が物顔で王座に座っているアラザイルを見ていた。



しかも、アラザイルは、ヒロが出した食べ物をスケルトンに運ばせて、スケルトンに毒見をさせた後、自らの口に運んでいた。



ちなみに、スケルトンが食べた物は、そのまま床に落ちている。



「・・・主人より態度の大きい配下の者っていうのも新しいわね。」



ジュリは、笑いを堪えた表情でヒロの肩を叩いた。確実にヒロを馬鹿にしていた。



「・・・しかも、俺、まだ、あの王座に座ってないんですよね・・・。」



「いいじゃない。王座のひとつやふたつ。それでお金が稼げるなら。」



ヒロは、視線をジュリに移した。



「・・・ちょっと前から思っていましたけど、何か、目的が違ってきてませんか?」



「・・・そんなわけないじゃない。」



ジュリはヒロから視線を逸らした。



その時、ドワーフの1人がジュリに声をかけた。



「おー、ジュリ、言われた通り、地下空洞内にエスト冒険者組合の出張所も作っておいたべ。あと、併設の酒場も大きめに作っておいたべ。ここのダンジョンが稼動すれば、ジュリも儲けまくりだべ。あと、約束通り、宿屋はオラ達に任せてもらうべ。お互い、ウハウハだべ。」



「・・・ヒロ、これで私達共犯者ね!」



ジュリは、ヒロの手を満面の笑みでギュッと握った。そして、ヒロは、その手を思いっきり振り払った。



「いやいや、共犯者って、もしかして、これかなりまずいことなんですか?」



「そんなことないわよ。見つかったら、すべての冒険者と冒険者組合に追われるようになるぐらいだわ。」



「十分、まずいじゃないですか!」



「そうよ。だから、もう・・・後には引けないの・・・。」



ジュリは思いつめたような表情を作る。そう、あくまで作っていた。



「嫌ですよ、俺は。冒険者と冒険者組合を敵に回すなんて!」



ジュリは、ヒロの言葉を聞いて、驚愕の表情になった。



「何ですか、その顔は?」



「だって、ヒロ、もうあなた、すべての冒険者と冒険者組合を敵に回してるじゃない。・・・ブラックリスト忘れたの?」



「・・・・・・。」



「どうせ追われるなら、お金儲けも出来た方がいいじゃない。ねっ、お互いうまくやりましょ。」



「・・・・はぁー。」



ヒロは深いため息をついたが、今はまだ気付いていなかった。ジュリだけが儲かって、ヒロはまったく儲からないことに。



「ヒロさん、見てください、この手甲と脛あてを。」



ミュミュの手には、拳のところにトゲがついた凶悪な手甲と、すねには同じくトゲのついた凶悪な脛あてが装備されていた。



手甲と脛あては、両方ともトゲの部分がやや赤みを帯びていた。



しかも、それ以外の部分は銀色で、ヒロはその鉱物に見覚えがあった。



「ミスリル?」



「そうですよ!ドワーフさん達がくれました。」



ヒロがドワーフ達に視線をやるとそれに気付いたドワーフの一人が立ち上がり、「気にすんな。ミュミュにはいろいろお世話になるから、そのお礼だべ。」と言って座った。



「お世話?」



ヒロがミュミュに視線を戻すと、「それは、ミュミュとドワーフさん達の秘密です。教えないです。絶対です。」とミュミュは顔を横に向けた。



ヒロは、その秘密とやらには興味はわかなかったが、赤いトゲの部分には興味があった。



「火竜のうろこを特殊な加工したものだべ。」



ヒロの視線で気付いたのか、ドワーフの1人が教えてくれた。



「火竜のうろこがあったんですか?」



「ああ、ここのダンジョンの名物にするとかで、ジュリから命じられて、オラ達でいろんな武器を作っているところだべ。」



「・・・俺、何も聞いてませんけど?」



「そうだっけ?まあ、いいじゃない、ヒロ。それにあれは、売り物じゃなくて宝箱に入れてダンジョンにおいて置く予定だから。」



「・・・まあ、いいですけど、ところで、火竜のうろこってどこで手に入れたんですか?」



「湖の底にいっぱい落ちているのよ。アラザイルが教えてくれたわ。」



ヒロは、そういうのは、普通、アラザイルが主人である自分にまず最初に教えてくれるものではないかと思ったが、主人を差し置いて王座に座るような配下に言っても仕方がないので言わなかった。



「俺も、火竜のうろこ欲しいんですけど?」



「もう、すべて回収済みよ。」



「ですよねー。」



ヒロは、酒をかぶのみした。



そして、翌日、ヒロが起きた時には、すでに、ドワーフ達の姿はなく、ジュリとミュミュとガドンガルだけがいた。



「あれ?みんなは?」



「もう、とっくに起きて、ダンジョンの最終確認をしてるわよ。私達も早くエストに帰りましょ。1週間もあけちゃったから、早く帰らないと。」



「そうですね。でも、ちょっと待ってもらえますか。俺、ドワーフ達に貸したスコップをいい加減、回収しないといけないので。」



その時、ミュミュが切羽詰った顔でヒロに迫ってきた。



「ヒロさん、大変です。ミュミュの一大事です。早くエストに帰らないとまずいです。」



ミュミュの表情に気圧されるヒロ。



「えっ?そんなに急ぐの?」



「大至急です。」



「・・・じゃあ、仕方ないか。別にスコップはいつでも回収できるし。」



ヒロは、ジュリとミュミュとガドンガルと共に、エストに『テレポート』で戻っていった。



テレポートの座標固定は、エストのヒロの部屋にしてあるので、そこに到着した。



「それでは、ミュミュは急いで朝食を食べてきます。」



「えっ、急いでる理由ってそれ?」



ミュミュは驚くヒロを無視して、ヒロの部屋から飛び出して行った。



「ヒロ、ありがとうね。この借りはいつか体で返すから。」



ジュリもヒロに投げキッスをしながら、ヒロの部屋を出て行った。当然、ヒロはその投げキッスを全力で避けた。



「・・・ヒロ、いろいろとすまん。」



ガドンガルは、なぜかヒロに謝りながら出て行った。ヒロは、なぜ、ガドンガルがヒロに謝ったのかわからなかった。



「・・・やることないし、寝るか。」



ヒロは、自分の部屋で2度寝をすることを決め、ベッドに潜り込んだ。



そして、3分後には、安らかな寝息を立て始めた。







ドワーフ達は、ダンジョンの入り口のある地下空洞に集まっていた。



「ヒロだけでなく、ミュミュもちょろいべ。」



「んだんだ。簡単に買収されてくれたべ。」



「もう、しばらく、このスコップはオラ達のもんだべ。」



「んだんだ。」



ドワーフ達は、悪い顔で頷きあっていた。



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