162 偽魔王討伐編 後日談(3)
『グランベルグ大陸』の中の魔法のひとつに『都市創造』という魔法がある。
これは、ギルドのギルドマスターにのみ発動できる魔法であった。
ただし、ギルドマスターのみが発動は出来るが、この魔法には条件があり、レベル100以上のメンバー3人がその場にいることと莫大な魔力が必要だった。
協力魔法とでも言えばいいのだろうか、その条件を満たした時のみ発動することができるのだ。
「というわけで、ここにレベル100以上は私とエルダとヒロリンとアオイがいるから。ひとつの条件はクリアね。あと魔力は、確かレベル100クラスの魔力でも5人は集めないと無理な値だけど・・・。」
ミサキが、前に座っていたヒロを見た。
「・・・なるほど。俺の吸血鬼化ですね。」
「その通り。ヒロリンが吸血鬼化すれば、レベル100クラスの4倍くらいの魔力になるから、これも余裕でクリアってわけ。」
「で、最後の問題は・・・。」
「最後の問題は?」
ミサキにその場にいた全員の視線が集まる。
「どういう都市にするのかっていうことだよねー。ギルドマスター魔法『都市創造 設計』。」
ミサキの前のテーブルの上に半円上の球体が現れた。
そして、その中には都市の模型なような物があった。
「さあ、これで、どういう都市にするか、みんなで決めちゃいましょ。」
ミサキの言葉にエルダがうれしそうに言った。
「ラインベルトも呼んで来ていいのか?」
「当然よ。このお城に住むのは、ラインベルトになるんだから。」
「わかった、すぐに呼んでくる。」
エルダは、もの凄いスピードで冒険者組合の建物を出て行った。
「おい、みんなお揃いで何やってんだ?城に行ったんじゃなかったのか?」
その時、階段からハイドが降りてきた。
そのハイドにニーナが近づき、匂いをかぐと、すぐにミサキの下に戻ってきて「ごにょごにょごにょ。」と何か言っていた。
その言葉でどんどん機嫌が悪くなるミサキ。
「・・・ハイド、ちょっとこっち来てっていうか、来い。」
ミサキの顔は笑っているが、目は明らかに座っていた。
「・・・な、なんだよ、ミサキ。」
恐る恐る、ミサキに近づくハイド。
「歯を食いしばれー。」
ミサキは、ハイドのお腹を殴った。
グフッっという声を上げて、ハイドが、その場にうずくまる。
「な、なんなんだよ、ミサキ。っていうか、歯を食いしばれっていうなら、普通、顔を殴るだろうが。」
ハイドは、顔に来ると思っていたパンチがお腹に来たので、予想外でかなりダメージが大きそうだった。
「あんた、ついに女を襲ったわね!ニーナが女の匂いがするっていってるわよ!この『パンプキン・サーカス』の恥さらし!こうなれば、あんたを殺して、私は生きる!」
「いや、普通、私も死ぬだろ?」
「何で、あんたのために私が死なないといけないのよ?」
「・・・だよな。」
「ちょっと、何を騒いでいるの?」
ハイドの後から階段を下りてきたのは、なぜか満足そうなジュリだった。
「何があったの、ハディー?」
「いや、ちょっとした勘違いというか、たぶん、勘違いしてないけど、無理やり勘違いに持っていったミサキのいつもの行動というか・・・。」
ハイド、さすがにミサキのことを理解してきていた。
「ハディーって・・・レキーと同類の呼び方ですね、ジュリ様?」
「当たり前でしょ。私の愛が込められているのだから。それよりも何をしてるの?」
ヒロは簡単にジュリに説明をした。
「そんなことが出来るの?」
ジュリは驚いた顔でヒロを見てきたが、ヒロは自信を持って頷いた。
「多分、大丈夫だと思いますよ。他の魔法も使えましたし、これも大丈夫なはずです。」
「まったく信じられない人達ね。ところで、ある程度、建物の構造を指定できるって言ったわよね?」
「ええ。この模型で出来るはずですよ。」
ヒロは、テーブルの上の模型を示した。
「だったら、冒険者組合の建物をもっとよくしたいんだけど?」
「いいわよ。言ってみて。やったげるから。」
ジュリの言葉にミサキが応えた。
「ミサキ様がやってくださるの?畏れ多いわね。」
そう言いながらも、ジュリはどんどん指定を加えていった。
「地下室も欲しいわね。あと、乱暴者が多いから、壁とかも頑丈にして、それに、冒険者組合支部長室ももっと豪華にして、それに冒険者組合の隣に解体所も必要だから・・・。」
「遠慮していたわりに、言い出したら遠慮がないですね。」
「当たり前じゃない。折角だから、言っておかないと。」
その後もどんどん注文を重ねるジュリ。
ヒロは、その光景を呆れた顔で見ていた。
その後、ラインベルトとルーベル爺も来て、さらに、ディートとグラハムも偶然来て、話を聞いて「面白そう。」と、どういう都市にするか参加した。
結局、話し合いが終わったのは、夜20時を回っていた。
「それじゃあ、早速やってみましょうか。」
ミサキの言葉で、冒険者組合の建物を出て、エストの外へと向かう参加者達。
「・・・本当に出来るの、エルダ?」
少し不安そうなラインベルトにエルダは言い切った。
「『パンプキン・サーカス』の辞書に不可能の文字はない。」
ヒロはその言葉を聞いて、『やりすぎ』の文字はありますけど、と1人思っていた。