146 偽魔王討伐編(2)
エルダは、さすがに直接、空飛ぶ馬車を城に乗りつけるようなことはせずに、門の外で一度空から下り、そして、地上を走ってエストに入っていった、
空から下りて来た馬車を見て、門番の衛兵は口をあんぐりとあけていたが、エルダが馬車の窓から顔を出すと特に追求することなくエストに入れてくれた。
ちなみに、この馬車の御者席には誰も乗っていない。
フォルクスとファルクスが、エルダの命令通り動いてくれるので馬車を動かすくらい御者なしで出来るのだ。
「うおぉー!見ろよ、グラハム、黒ウサギ族だぞ!やべぇー、超かわいい上にスタイル抜群!」
エストの街中を歩く黒ウサギ族の女性を見て、ディートの興奮は最高潮に達していた。
「ほう、これはこれは、確かに素晴らしいプロポーションですね。」
グラハムの表情も心なしか緩んでいた。
「おい、ラインベルト、ここで降ろしてくれ。」
「お城まで来られないのですか?」
「ああ、俺は平民だしな。城に行くのは場違いだろう?」
「いえ、別に構いませんが?」
「・・・。」
「・・・。」
「まあ、普通はそういうもんなんだよ。じゃあな。」
ディートは、馬車が止まるとグラハムと共に馬車を降りていった。
「是非、一度、お城にいらしてくださいね。」
ラインベルトの言葉に片手を挙げて答え、ラインベルトとグラハムは黒ウサギ族の女性の後をつけて、エストの街中に消えていった。
その後、エストの城に入ったラインベルト達をルーベル爺が出迎えた。
「お帰りなさいませ、ラインベルト様。」
「ああ、ただいま、ルーベル爺。何か変わりはなかったかい。」
「それなのですが、ジュリ様が、ラインベルト様がお帰りになられたら至急知らせてくれと伝言を預かっておりまして。」
「ジュリさんが?だったら、早速、使いの者をジュリさんに送って、ルーベル爺。」
「かしこまりました。」
ルーベル爺は、近くにいた兵士にジュリに知らせに行くように頼んだ。
「さすがに疲れたね、エルダ。ジュリさんが来るまで、ちょっとクルーアでも飲もうか。」
ラインベルトの言葉にエルダは自信満々に答えた。
「私は、今すぐにでも、もう1ラウンドやっても問題ないぞ?」
「・・・何をもう1ラウンドやるんですか?」
「それは決まっているS・・。」
「さあ、ラインベルト様にエルダ様。クルーアを入れますのでお部屋にどうぞ。」
ルーベル爺の割り込みでエルダは最後まで言うことはできなかった。
さすが、ルーベル爺であった。