表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
139/234

138 ヒロ in ガジール山脈(4)


「お待たせしました。」



「オウッ!びっくりするではないか、ヒロ。」



レキエラは、いきなりヒロが目の前に現れたので、思わず声を上げた。



「すいません。それより、こっちはどんな感じですか?」



「特に変化はないぞ。兵士達が何度か代わったくらいだ。」



「それでは、ここではちょっと近すぎますので、下がりましょう。」



ヒロの言葉を受けて、レキエラ達がヒロの後をついて行く。



20分程度歩いた山道でようやく、ヒロは立ち止まった。



「ここでいいでしょう。」



「何をするつもりだ?」



「いまから、ドワーフさん達を助けることにしました。」



ヒロの言葉にガドンガルの目の色が変わった。



「本当か?本当に助けてもらえるのか?」



「はい。ただ・・・ひとつ約束してもらいたいんですが?」



「何だ。助けてもらえるなら、何でも約束するぞ。」



ガドンガルの顔はヒロの間近まで迫っている。



「他の人にもお願いしたいのですが、今から見ることを他言無用にしてもらいたいんですよ。」



「誰にも言うなということか。」



レキエラの確認にヒロは頷いた。



「・・・それは、どのようなことなのだ?」



レキエラの表情が真剣になった。



「実は、ジュリさんは知っていることなのですが・・・。」



「何だ、もしかして、ジュリのような種族ということか?」



「知っているのですか?」



どうやら、レキエラは知っているらしかった。



「当然だ。というか、元からいるエストの住民は結構な数知っているらしいぞ。」



「・・・そうだったんですか。俺には誰にも言うなって言ってたんですけど・・・。」



「まあ、あまり知られても面倒なことが起きないとも限らないからの。」



レキエラの言葉にそれもそうかと納得し、ジュリを受け入れることのできるレキエラならば見せても大丈夫かと安心した。



他のメンバーも見るが、ガドンガルは、「同胞を助けてくれるなら、何でも黙っておくぞ。」と言い、シリルは、「仲間との約束は守る。」と言い、ミュミュは、「奢ってくれる人との約束だけは守る。」と誓ってくれた。一人だけ微妙な回答だったが、奢っている間は問題ないと思い、ヒロは『純血の乙女』を取り出し、1本全部飲んだ。



あっという間に、ヒロの外見は、白い髪に深紅の目に変わった。



「・・・これは・・・お爺さんだったのですね。」



「違う!お爺さんではなく、吸血鬼。」



ミュミュの言葉に思わず突っ込むヒロ。その言葉を聞いた瞬間、レキエラとガドンガルとシリルが、ヒロから距離を取った。



「・・・あれ、皆さん?」



ヒロは、予想外のみんなの行動に戸惑った。



「・・・もしかして、吸血鬼はまずかった・・ですか?」



ヒロの言葉に頷く一同。



「あれ?レキエラさん、ジュリさんと同じような種族なら大丈夫だと。」



「ヒロ、悪魔族と吸血鬼は違う。悪魔族はあくまで種族として認められているが、吸血鬼は・・・魔物扱いだ。」



顔を背けながら、申し訳なさそうにレキエラが言った。



「シリルさん、仲間ですよね?」



「・・・魔物以外はな。」



シリルも顔を背けた。



「ガドンガルさん?」



「安心しろ、ヒロ。同胞を助けてくれるまでは、冒険者組合に通報はしないでおいてやるぞ。」



ガドンガルは真面目な表情でヒロを見るが、「それ、助けた後で通報するってことでしょ?」というヒロの問いにガドンガルも顔を背けた。



そんな皆に避けられているヒロの肩をミュミュが軽く叩いた。



「ミュミュは、別に吸血鬼でも構いませんよ。奢ってくれるなら。」



「・・・ミュミュ。初めてミュミュがいてくれてよかったと思ったかも。」



「任せてください。ミュミュは、何でも食べられます。・・・あれ、吸血鬼って食べられるんですかね?」



「・・・・・・・・。うん、とりあえず、興味のある視線をこっちに向けるのは辞めてもらえるかな、ミュミュ。」



「まあ、冗談はさておき、ヒロがどんな者かは知っておるからの。安心しろ、ヒロ。」



レキエラが、笑いながら、ヒロの肩をミュミュのように叩いた。



「私は、とりあえず、ヒロと敵対する気はないから黙っておくわ。」



シリルは、やはり付き合いが短い上にヒロの悪評の件があり、ヒロを信じてもらえないのも仕方がないと思った。



「ドワーフも恩義は感じるんだぞ。助けてくれさえすれば誰にも言わんわい。」



どうやら、先ほどのはガドンガルの冗談だったようだ。



「それで、何で人間の姿も出来るヒロが、わざわざ吸血鬼の姿になったんだ?」



「それは、この姿でないと出来ないことがあるんです。空間魔法『座標固定』。」



ヒロの前に先ほどトイレの中でやったのと同じ魔法陣が浮かび、消えた。



「それでは、今から、ドワーフさん達の救出に行ってきます。ここにドワーフさん達が現れると思うので、保護してハルム村まで運んでください。俺は1人で大丈夫ですので。」



「了解した。」「頼むぞ。」



レキエラとガドンガルは、頷いたが、シリルは反応しなかった。やはり、ヒロが吸血鬼というのが引っかかっているのだろう。ヒロを見ようともしなかった。



「空間魔法『テレポート』。」



ヒロの姿が一瞬で消えた。



「空間魔法か・・・凄いものだ。・・・・それより、シリル。ヒロは、悪い奴ではないというのは本当だ。できれば、吸血鬼といえど普通に相手をしてやってくれないか?」



レキエラの言葉に、シリルは少し頬を染めて言った。



「お前達は、同姓だから感じなかったのかもしれないが、あのヒロの深紅の目は危険だ。異性を狂わす何かがあるぞ、あれは。」



「なるほど・・・だから、ヒロと視線を合わせなかったというわけか・・・。」



レキエラの言葉に深く頷くシリル。



「・・・だったら、何故、ミュミュは平気だったのだ?」



シリルは、自分の腰に下げている袋からパンを取り出し食べだしたミュミュを見ながら苦笑いを浮かべていた。



「もしかして、欲の中で食欲の割合が多すぎて、まだ、性欲に目覚めてないのではないか?」



シリルの言葉に、レキエラ達は「なるほど。」と納得した。



「今の姿を見ると確かにそうかもしれぬな。」



レキエラ、シリル、ガドンガルの3人はミュミュを見て笑っていた。



「んっ?そんなに見ても、ミュミュのパンはあげませんからね。」



ミュミュだけが真剣な表情でレキエラ達からパンを隠した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ