126 ミサキ in エスト(1)
ミサキ、ニーナ、ハイド、ドルトの4人がエストラ男爵領のエストに到着した時、まだ、太陽がどうにかわずかに見える時刻だった。
通常の馬車でかかる時間の半分以下で交易都市グロースからエストまで到着した計算であった。
馬車は、エストの大通りを走っている間、御者席に座っていたミサキの頬は緩みっぱなしだった。
なぜなら、現在、エストの住民1,200人の内、人間が300人、獣人が900人だったからだ、
さすがにこれだけ人数差があると目に付くのは獣人ばかりであり、しかも、交易都市グロースでは見ることのなかった白ウサギ族や黒ウサギ族を見たミサキのテンションはMAXだった。
「はぁ~幸せ。何、この桃源郷。まじありえないんですけど~。・・・あの白く長い耳をモフモフしたい~、あっ、あっちの黒いウサギのまーるい尻尾をフルフルでもいい~、えっ、何あの豊満な胸の黒いウサギ、あのウサギの胸をワサワサしたい~。」
「・・・ミサキお姉様、最後のは、別に獣人でなくてもいいにゃ。」
ミサキが他の獣人に目移りしているので、ニーナはやや不機嫌だった。
「あら、ニーナ、妬いてるの?もう、安心して。『ニーナの手も借りたい』っていうでしょ。『二兎追うものは4P』よ。」
「嫌にゃ。」
ニーナは、フンッとミサキのいる方とは逆に顔を向けた。
「おい、何、喧嘩してるんだ?」
ハイドは、馬車の御者の窓を開けた。
その時、ふと、道を歩く狼族の男が眼に入った。
「・・・兄貴?」
ハイドの言葉にミサキは、「えっ、馬車で踏んじゃった?」と馬車を止めた。
「何を馬車で踏んだんだよ?」
「ハイドのお兄さん。」
「意味がわからねぇーよ。」
「ハイドって馬糞から生まれて来たんでしょ?だから、ハイドのお兄さんということは馬糞のことでしょ?今、道に落ちていた馬糞を踏んじゃったかなって。」
「・・・そんなわけないだろ?今、馬車の横を通った狼族の男が俺の兄貴に似てたんだよ。まぁー、兄貴はクリオラの森にいるから、こんなところにいるわけねぇーんだけどな。それより、もうすぐ宿屋に着くんじゃねぇーのか?さっさと宿屋で休もうぜ。」
ハイドは、御者側の窓を閉めた。
ミサキは、再び馬車を走らせ始め、宿屋兼冒険者組合の建物の馬車置き場に馬車を置いた。
「ようやくだったな。」
「でしたね。」
ハイドとドルトは、やや疲れた表情で馬車を降りてきた。
「あなた達、生きてる者を食べては駄目よ。」
ミサキは馬車と馬に言い聞かせ、建物に入っていった。