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ギルド『パンプキン・サーカス』の異世界冒険譚 ~亡国の英雄達 異世界に降臨す~  作者: 蒼樹比呂
第一章 ギルド『パンプキン・サーカス』
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11 『ミサキ』 猫耳を愛す


交易都市グロース、その歴史は古く、300年前からこの大陸の海の玄関口として他の大陸や島々との交易の拠点とされていた都市である。



この交易都市グロースには、様々な場所から様々な物が届き、そして、様々な場所に送られていく。



その都市の特徴から大陸一商人が多い都市としても知られており、この都市では何でも買えると言われている都市であった。



また、漁業も盛んであり、漁獲高も大陸一である。



「はあ~・・・赤い壁が多い。」



交易都市グロースは、赤壁の都市としても有名である。これは、近くで取れる赤土のレンガで多くの建物を建設していることに由来した。



ちなみに、ヒルメリア都市連合国の交易都市グロースは赤壁の都市と言われているが、その近くのヒルメリア都市連合国の楽園都市ブリュッケンは、交易都市グロースと同じく海の側にある都市であるが、こちらは白壁の都市として知られており、白い砂浜と白い建物に特徴がある都市である。



「まあ、赤壁として有名な都市だからな。」



「なるほど、3日に1回住人を惨殺して、その血を壁に塗りたくっているというわけか。」



「んなことしてるわけねぇーだろ。近くで赤土が多く取れるとかそういう理由らしいぜ。」



ミサキは、パンプキンヘッドを被っているおかげで、このグロースに入る時、ひと悶着あったのだが、そこは有名傭兵ギルド『抗う心臓』のメンバーであるハイドがうまく取り持ってくれてどうにかなった。ついでに都市に入るためのお金もハイドが払ってくれていた。



「道も広いし、人も多いし・・・みんな死ねばいいのに。」



交易都市グロースは、多くの馬車が行きかうため、普通の都市に比べて道幅が広くなっている。



現在の日本で言えば、四車線ぐらいだろうか、そして、道の両側に商店や露天商が並び、そこに買い付けに来た商人達が多くたむろっているため、これで何故事故が起きないのかと思うくらいの賑わいを見せていた。



「・・・お前、ちょくちょく怖いこと言うのな。」



呆れた表情で隣を歩くミサキを見るが、パンプキンヘッドのせいで、ハイドにはその表情はうかがえないので、冗談か本気か判断がつきにくかった。



そんな呆れた表情のハイドにドンッとネコ耳に尻尾のあるそれ以外は人間と変わりない17歳くらいの女性がぶつかって「ごめんにゃ。」と言うと、そのまま顔も合わせずに通り過ぎて行く。



「おう、悪かったな。」とハイドも返すが、そんなハイドを不思議そうにミサキが見つめた。



「なんだよ。俺は、ぶつかられたくらいで怒る様な小さい男じゃないんだよ。」



「それはいいんだけど・・・今、お金を掏られたのはわざと?」



「なっ?」



ハイドは、腰にぶら下げていたお金の入った革製の小袋に手をやるが、そこに小袋はなかった。



「ちきしょう!あの餓鬼、やりやがった!」



ハイドが振り返ったが、すでにネコ耳の女性はかなり遠くまで逃げている。



「捕まえる?」



「捕まえてぇーが、さすがに距離がありすぎだろ?」



ハイドの言葉を聞き、ミサキは、振り返り「やれ。」と言うと右手に持ったデスサイズを軽くトンッと上下に振った。



その瞬間、「ハギャッ」と言う声と共に逃げていたネコ耳の女性が、地面にまるで上から押さえつけられるようにへばりついているのが見えた。



「お前がやったのか?」



「当然でしょ。」



ネコ耳の女性の下へと歩きながら、ミサキが答えた。



「お前、魔法使いだったのか?」



「いや、違う。私は、『牧場主』。」



「『牧場主』?なんだそりゃ?」とハイドはミサキに尋ねるが、ミサキはそんなハイドに答えずにネコ耳の女性へと歩いていった。



「許してにゃー。悪気はなかったにゃー。」と何かの力に地面に押さえつけられながら、ネコ耳の女性は上から見下ろすハイドとミサキに謝った。



「金を返してもらおーか。」



「わかってるにゃー。」とネコ耳の女性は、ポケットに手を入れ、お金の入った袋をハイドへと返した。



その動きは、非常に緩慢で相当動きにくそうだった。



「これ、どうする?」



「金さえ返してもらえりゃー、もう用はねぇーさ。」



「じゃ、殺す?」



ミサキは、ネコ耳の女性の首元に右手に持ったデスサイズの刃の部分を当てた。



「お前、本当におっかねぇーな。ちげぇーよ。もう、用はないから逃がしてやれって言ってんだよ。」



「ハイドに用がなくても、私はこの子に用がある。」



「なんだよ?」



「・・・ネコ耳と尻尾に触りたい。」



「・・・好きにすればいいんじゃねぇーか?なぁ?」



「にゃー、好きにしていいから、命だけは助けて欲しいにゃー。」



ネコ耳の女性の目からは涙が溢れていた。


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