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114 シャルロッテ 心機一転、新たなる地へ・・・(別題 ミヒャエルは諦めない。なぜなら、研究者とは100の失敗から1の成功を得る者のことだから。)



シャルロッテが、王立の研究所を首になって2週間近く経過していた。



何故か、首になる時に金貨5枚を貰えていたので、シャルロッテが生活に困ることはなかったが、それでも、何か仕事を見つけないとこれから困るのは分かっていた。



にしても、シャルロッテは、この半年、あの研究所に入るために勉強を重ねていたので、それを意味の分からない理由で首にされ、現在は茫然自失といった精神状態だった。



「はぁ・・・どこか行きたいなぁー。」



独り言を呟きながら、王都を意味もなく歩くシャルロッテ。



そんなシャルロッテの前に王宮からのお知らせなどを張る街中の掲示板に何かを貼っている衛士がいた。



「何、貼ってるんですか?」



「んっ?ああ、今日、王宮から、エストラ男爵領の住民募集が発表されたんだ。」



「住民募集?」



「ああそうだよ。何でも、エストラ男爵領というアリステーゼ王国の一番北西部にあるエストという都市が住民を募集しているらしい。しかも、1年間はタダで家を借りれる上に仕事が見つかるまでは、食事などの補助も受けられるらしいよ。」



「それは凄いですね。でも、アリステーゼ王国の一番北西部ということは、そこに行くまで旅費がかなりかかるんですよね。」



「フッ、聞いて驚くな、お嬢ちゃん。何と、今なら送料無料・・・いや、旅費も無料だ。」



途中から気分が乗ってきたのだろう。衛兵が、意味の分からない言葉、いや、昔聞いたことのあるような言葉を言った。



「・・・それって、何か裏があるんじゃないですか?」



疑うシャルロッテに衛兵は「チッチッチッ。」とシャルロッテの顔の前で指を左右に振った。



「これは、王家の正式な発表だ。裏なんてありはしない。しかも、冒険者組合推薦の印が入っている。まさに、フロンティア・ワールドだよ!」



完全に意味が分からないことを言い出す衛兵。しかし、シャルロッテには、最後まで衛兵の言葉が入って来なかった。



「私・・・これ・・・行きます。」



「そうかい。だったら、冒険者組合が受付を引き受けているらしいから、冒険者組合に行って詳しい話を聞いてきなさい。開拓者に幸あれ!」



衛兵は、最後、シャルロッテの肩を優しく叩き、そして去っていった。



最後まで意味のわからない衛兵だったなとシャルロッテは微妙な表情でその後ろ姿を見送っていた。










3日後、早速、エストラ男爵領へ出発することになったシャルロッテは、集合場所である馬車乗り場で待っていた。



エストラ男爵領に行く希望者は、かなり多かったらしく、多くの人が馬車乗り場で待っていた。



ちなみに、応募した時に、馬車番号を貰っていたので、その番号のついた馬車が来れば乗る仕組みだった。



シャルロッテの番号は、25番だった。



馬車の大きさは、大体8人が乗れる大きさのものだった。出入り口は一番後ろにあるタイプの馬車だ。



25番のついた馬車が、馬車乗り場に到着したので、シャルロッテは、一番最初に馬車に乗り込んだ。



次に乗る人のために、一番奥につめて座った。



その次に入ってきた人は、凄い体格のいい、まるで兵士のような男の人だった。



一瞬、シャルロッテのことを確認してから馬車に乗り込むと出入り口に一番近い場所に座った。



その次に入ってきた人も同様に凄い体格のいい、まるで兵士のような男の人だった。



その男も一瞬、シャルロッテのことを確認すると馬車の出入り口に一番近い場所に座った。



そして、最後に、綺麗な金髪の青年が入ってきた。



クルックルに巻いた天然パーマがよく似合った、まさに美青年だった。



着ている服も品がよく、お洒落でまさにシャルロッテの好みだった。



青年から漂ってくる匂いも、鼻につかず、上品でそれでいて、落ち着く香りだった。



(やっぱり、これに応募したのは間違いじゃなかったんだ。)



そんな思いを必死に隠し、美青年に「こんにちは。」と軽く挨拶をした。



美青年は、「・・・やあ。」と軽く微笑むと、一番奥のシャルロッテの目の前の席に座った。



そして、まだ、4人しか乗っていないにも関わらず、馬車は走り出した。



(・・・これだけしか乗らないんだ?)



疑問には思ったが、長い旅路を狭い座席では疲れるのは分かりきったことだから、シャルロッテは喜んでいた。



さすがに目の前だからと言って直視するのは、失礼かなと思い、横目でシャルロッテは、何気なく目の前に座る青年を観察していた。



その青年は、そんなシャルロッテの視線に気付いているのかはわからないが、持っていた手荷物から一冊の本を取り出し、そして、上着のポケットに入れていた眼鏡を取り出し、顔にかけた。



(・・・どこかで・・・見たような気が・・・。)



シャルロッテは、その眼鏡姿をどこかで見たことがあるような気がしたが、結局、思い出せなかった。



こうして、シャルロッテと美青年である元王位継承権第6位のミヒャエル・ウッツ・フォン・アリステーゼ第6王子のエストラ男爵領までの旅が始まった。






ある公爵家の屋敷では、ひとりの年老いた女性が、不安そうに部屋の中をウロウロとしていた。



コンコンッと部屋のドアをノックする音がし、ひとりの男が部屋の中に入ってきた。



「それで、どうでしたか?」



老女は不安そうに入ってきた男に聞いた。



「はい。どうやら、無事、同じ馬車に乗ることはできた様子です。」



「あの子、まさか、また、最初の会話でプロポーズなどしてないでしょうね?」



「・・・それはなんとも。ただ、この数日、しっかり女性に対するレッスンは致しましたので、大丈夫かと。」



老女はフーと深いため息をついた。



「あの子は、頭はいいのだけど、行動が理解できないところがあるから心配だわ。」



「大丈夫でございます。そのために監視も2人付けておりますので。ただ・・。」



入ってきた男は、ちょっと言いにくそうにしていた。



「ただ、何?」



「はい。ただ、相手は平民のようですが、よかったのですか?」



「平民も何も、今はあの子も平民じゃない。それに、あの子が女性に興味を持つなんて初めてのことなのよ。何としても成功させなければ、あの子は一生独り身のままよ。」



老女は、ミヒャエルの祖母にあたる女性だった。それだけに、ミヒャエルのことが心配でいけなかったのだ。



「失礼致しました。」



入ってきた男は、頭を下げた。



「いいから、兎に角、監視を続行させてね。あと、あのシャルロッテとかいう女性の身元の調査もしっかりお願いね。」



「かしこまりました。」



老女の命令を受け、男は部屋を出て行った。



「あっそうだわ。あの子が生活に困らないように冒険者組合のあの子の口座にお金を送っておかなければ。誰か~、ちょっと来てくださる?」



祖母というものは、孫のことが何歳になっても心配なのだ。過保護なくらいに・・・。



シャルロッテはいつの間にか、アリステーゼ王国が誇る大貴族である公爵家に狙われているということなど知るよしもなかった。




登場人物


シャルロッテ・・・猫屋敷 雅。16歳。シャルロッテの体に転生した。ミヒャエルがプロポーズした女性。本人は、ミヒャエルのことをストーカーと思ってる。


ミヒャエル・・・元王位継承権第6位の王子。母は公爵家出身。本人は、シャルロッテの後ろにずっといたことで仲良くなったと思っていた。ちなみに、シャルロッテが首になったのは、別にミヒャエルが命令したわけではない。研究所所長が独自の判断でシャルロッテを首にした。だから、迷惑料という意味でシャルロッテが首になる時に金貨5枚を渡した。


住民募集の紙を貼っていた衛兵・・・ちょっとテンションがあがってしまった。別に何か裏がある人物ではない。

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