113 ある実験体にされた女性の物語 -猫屋敷 雅 シャルロッテの体をリサイクルした件ー
この話だけは、猫屋敷 雅=シャルロッテ目線で書いてます。
次からは、普通に戻ります。
猫屋敷 雅16歳、日本で生まれ、日本で生き、そして、多分、日本で死んだのだと思います・・・ゲーム中に。
なぜなら、私は、今、シャルロッテという名前でアリステーゼ王国というところにいるからです。
今から半年ほど前、家でVRMMO『グランベルグ大陸』をやっている最中に異変が起こったのです。
普通に街エリアを歩いていた時に足元に急に小さな魔法陣が浮かんだのです。
私、びっくりデス。
(えっ?こんなところでトラップ系の魔法陣?)
と考えたのもつかの間、胸に急激な痛みを覚え、ゲームの中で意識を失ったまでは覚えているんのですけど、次に気がついた時は、私は、シャルロッテという名の16歳の金髪で青い目の美少女でした。
シャルロッテは、どうやら病気で死に掛けていたらしく、心臓が止まったと思ったら、すぐに動き出し意識を取り戻したらしいです。
私が、起き上がった時の周りの驚きようはそれなのかと後で聞いて納得しました。
さすがに、体を乗っ取ってしまったんじゃないのかなとは思ったけど、シャルロッテの身内に「ごめんなさい、乗っ取ってしまいました。」とは言えず・・・そのまま、シャルロッテとして過ごしています。
たぶん、シャルロッテはあの時、1回死んだと思うので、正確には乗っ取りではないと自己弁護してみます。
幸い、シャルロッテの記憶も引き出せる上に、自らの記憶も持っているラッキーな展開だったので、言葉に困ることはなかったのです。
ただ、家、貧乏でした。日本で暮らしていた私には信じられないくらい貧乏でした。
何でも母親が昔、どっかの貴族の愛人をやっていたらしく、私にも貴族の血が流れているということだけど、結局、捨てられたのです。
そして、その後、転落の人生を歩み続け、王都の親戚を頼って来て、すぐに病気で亡くなってしまいました。
そして、私は、親戚に育てられ、15歳になり、王都のお店でバイトしながら、王宮の研究所に入れるように勉強していたらしいです。
私と違って、シャルロッテちゃん凄いよ、実際。
貧乏にも負けず、ひとりで頑張るなんて。
ちなみに、親戚はいい人だったけど、それほど裕福な人ではなかったんですよね、残念ながら。
そう考えれば、もしかしたら、日本の感覚で見てる私がおかしいのかもしれないです。
もしかしたら、これが普通のこの世界の生活なのかもと思ったりもしないわけじゃないです。
で、そうこうする内に、病気に罹り、亡くなり、私にとりつかれた・・・いや、奪われた・・・いや、リサイクルされたわけです。
可哀想なシャルロッテちゃん。
というわけで、私、この半年頑張りました。
バイトと勉強に。
まぁ、元々、日本で最低限の学力学んでいたし、結構余裕でした。しかも、何故か、VRMMO『グランベルグ大陸』で使っていたスキルも使えるし、楽勝って感じだと思っていた頃もありました。
見事、16歳にして、アリステーゼ王国の研究所に入ることが出来たのですが・・・出来たのですが・・・ついでに仕事初日にストーカーまで出来ました。
びっくりデス。
社会って怖い。
本気で思いました。
何故か、私が研究所にいる間中、後ろにいるのです、その人。
上司に言っても、「あっ、うん、無理。」と言われ、衛兵さんに言っても、「あっ、うん、無理。」と言われ・・・何、この世界?な気分です。
しかも、この私の後ろに立つ人・・・ぶっちゃけ臭いです。
臭いで後ろに立ったのが分かるくらいです。
しかも、髪の毛ボサボサ。
汚れた服を着ていて・・・うん、無理でしょ。
そして、3日目、初めてそのストーカーさんが話しかけてきました。
「僕は、この国の王子なんですけどー、結婚してください。」
私の気分は、まさに(えっ、この人、何か薬でもやってんの?)ですよ。
というわけで、何かの本に書いてあった通り、こういうのを断る時はずばりと言わないといけないわけですよ。
「王子は嫌。」と。
・・・次の日、首になりました。
てっきり、その人の嘘かと思ってたんですけど、どうやら、本当にこの国の王子サマだったらしいです・・・。
私、・・・何か間違えましたかね?