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112 ディートvsエルダ 飲み比べ勝負!そして、伝説となるの巻。(当作品は、お酒の一気飲みを推奨しているわけではございません。むしろ反対の立場をとっております。)

登場人物


ラインベルト・・・エストラ男爵


エルダ・・・ショタ。変態。


ディート・・・元王子。


グラハム・・・元王子付きの騎士。


シャーリー・サキュ・・・エスト冒険者組合支部長ジュリの姉。サキュ商会会長。ジュリの姉なので当然サキュバス。


黒翼騎士団・・・ディートヘルムが団長でグラハムが副団長を勤めていた騎士団の名前。


登場人物の説明簡易化・・・簡易説明になっている箇所は決してめんどくさくなったわけではありません。ちょっとたまには楽したかっただけです。


王都アウグスティンの歓楽街の店で、その名を知らぬ者はいないといわれる、『妖艶酒家』では、今日も多くの客で賑わっていた。



酒場の1階と2階は吹き抜けで、3階以上が娼館となっている建物である。



ここの店主は、『シャーリー・サキュ』という女性で、いろいろな都市で娼館や酒場を開いている『サキュ商会』の会長であった。



娼館や酒場の店主は、通常、商人組合には入れないのだが、この『サキュ商会』だけは、いろいろな都市で活動していることもあり、特別に商人組合への加入を認められていた。



というのが表向きの理由であり、現実的には、どこぞの大商会の会長の女だからというのがまことしやかに噂されていた。



その吹き抜けの2階では、ディートとグラハムそして、ラインベルト、エルダの4人が酒を酌み交わしていた。



彼らの周りには多くの女性達も座っていた。



ただし、ラインベルトの周りにはエルダが誰も寄せ付けない雰囲気を出していたが。



「いやー、まさか世の中にこんなに似ている人間がいるとはな。」



「ディート様、世の中には3人似た人がいるそうですよ。そして、似た人に出会うと死ぬらしいです。」



「まじか!」



グラハムの軽口に乗るディート。そんな2人の会話を聞いていた、ラインベルトが不安そうな表情でエルダを見るが「大丈夫だ、ラインベルト。私にとってラインベルトは唯一無二だ。あっちの男は、賞味期限切れだ。」とディートにとって失礼なことを言い放つが、それを聞いていたディートも「まいったな、こりゃ。俺が賞味期限切れなら、グラハムは腐ってるな、ワハハハハハハハハッ。」と大笑いしていた。



「まさか、軽い嘘をついて、自らに火の粉が降りかかるとは思いませんでしたよ。」



トホホな顔でグラハムも目の前の酒をグイッと大量に口に含んだ。



「しかし、ディートさん、良かったのですか?私たちまで御一緒にこんな高級なお店に連れてきていただいて。」



「何、似た者同士、ここで会ったのも何かの縁だ。今日は、一緒に騒ごうぜ!」



ラインベルトはお礼を言ってはいたが、この店がどんな店なのか、実際には気付いていなかった。建物の内装がかなり高級風なので、ただの高級な酒場と思っていたのだ。まさか、女性を買う店だとは思ってもいない。エルダは気付いてはいたが、興味がないので黙っておいた。



「いらっしゃい、ディート。」



ディート達の座っているテーブルに1人の女性が挨拶に来た。



髪は白金色で、唇は血のように赤く、肌は雪のように白かった。



また、目の色は、綺麗な海を思わせる青色だった。



その女性を見たラインベルトは、不意にどこかで見たような感覚に陥った。



「・・・あれ?ジュリさん?」



ラインベルトの口に思わず、ジュリの名前が出た。



「んっ?・・・あなた、ジュリを知ってるの?・・・っていうか、ディートの子供にしては歳がいってるから、兄弟かしら?」



ラインベルトを見た女性が、首をかしげた。



「シャーリー、こいつは何とエストラ男爵様だぞ。そこの道端でたまたま会ったんだけど、俺にそっくり。驚くだろ?」



ディートは、完全に酒が回っているのか少し声のボリュームが大きくなっていた。



「まあ、あなたがエストラ男爵様。ジュリからたまに手紙が届くわ。いい子なんですってね。・・・ところでジュリはおとなしくしてる?問題起こしてない?」



「あっ、ジュリさんは、問題は・・・はい・・・起こしてないと思いますが。」



歯切れの悪い言葉で言いにくそうにするラインベルト。そんなラインベルトに変わりエルダが「ジュリの姉妹か?」と直球の質問をぶつけた。



「ええ、そうよ。挨拶が送れたわね。私は、この『妖艶酒家』の店主にてサキュ商会の会長でもあるシャーリー・サキュよ。よろしくね。」



「へぇー、シャーリーに姉妹がいたのか?当然、シャーリーに似て美人なんだろ?」



「ええ、私には劣るけど、私の妹のジュリもそこそこ美人よ。私には劣るけどね。」



念を押すシャーリー。ラインベルトは、少し恐怖を感じた・・・まだ12歳だから。



「ところで、私は行った事がないのですが、どういうところなのですか、エストラ男爵領とは?」



まだ、かなり理性が残っている様子のグラハムが、ラインベルトに尋ねる。



「そうですね。皆、気のいい人達ばかりですよ。そう言えば、最近は獣人の方が増えたので、獣人に会ってみたい方はお勧めです。と言っても、さすがに王都の方は獣人を見慣れているとは思いますが。」



「へぇー、どんな獣人がいるんだよ?」



グラハムとラインベルトの会話に興味を持ったのか、ディートが割り込んできた。



「そうですね・・・狼族、猫族、白ウサギ族、黒ウサギ族・・・・。」



「黒ウサギ族!俺、まだ、見たことないんだよな・・・黒ウサギ族・・・。いい体してるんだろ?」



ディート完全に酔っ払いの表情であり、会話である。



「えっ、・・・ええ、そうですね・・・多分・・・。」



もの凄く言いにくそうにラインベルトが答えた。さすがに12歳には酷な質問であった。



「もう、ディート。子供をいじめちゃ駄目よ。それより、ディート明日から王都出るんでしょ?最後のお酒なんだから、パァーっといっちゃいましょうよ。」



シャーリーが、すかさず、間に入る。さすが、酔っ払いの相手は慣れたものであった。



「そうだな。最後の王都での酒だ。ガツンッと行くか!」



ディートは酒の入ったビンを持って立ち上がり、「いくぞー。」っとビンを持った手を頭上に挙げ、そして、ビンを口に当て、そのまま飲み始めた。



「「「キャーーー、さすがディート!」」」



ディートの周りの女性達が歓声を上げる。



「・・・明日、王都を出られるのですか?」



ラインベルトは、隣に座っていたグラハムに尋ねた



「ええ、明日、アリステーゼ王国東に位置するクリスティアン伯爵領へ向かって王都から出ようかと思いまして。」



グラハムは、どうやらディートと共にすることにしたらしい。



「僕達も、明日、エストに帰るんですよ。」



「そうでしたか。お互い、無事に到着するといいですね。」



「はい。」



グラハムとラインベルトが、こんな会話を交わしている間にも、ディートは2本目のビンに移っていた。



「どうだ!」



2本目のビンを空け、自信満々にあたりを見回すディート。その目に、エルダの目の前のテーブルの上の光景が入った。



エルダの前には、すでにビンが5本空いた状態で置いてあった。



「フッ。」



余裕の視線をディートへと送るエルダ。その両手には、なんと2本のビンがすでに持たれていた。



「クッ、このディート様が、女ごときに酒で負けるわけにはいかねぇー!シャーリー!あるだけの酒を持って来い。」



「はい、喜んで。」



シャーリーが、視線を送ると、店の従業員が、何と樽に入った状態の酒を2つ持ってきた。



「・・・まじ?」



さすがに我に帰るディート。しかし、そんなディートにエルダが追い討ちをかけた。



「フッ、余裕だな。」



「上等じゃねぇーか!グラハム!黒翼騎士団の意地見せてやろうぜ!」



「・・・私もですか?」



「当然だ!」



こうして、エルダとディートとグラハムの飲み比べが始まった。



そして、日が明け、酷い頭痛と共に目を覚ましたディートが見たのは、馬車の中のような内装だった。



隣を見ると、グラハムも潰れて寝ていて、反対側の席には、エルダとそのエルダに抱え込まれて苦しそうに寝ているラインベルトの姿があった。



床には、大量のビンが転がっている。



「・・・ここは・・・どこだ?」



窓から外を覗くと・・・遥か下に地面が見えていた。



「・・・えっ?・・・えっ?・・・・えっ?・・・・これ・・・どういうことだ?」



ディートはそれしか言うことができなかった。


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