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108 国王とエストラ男爵、おまけのエルダ(1)

登場人物


イグナーツ・・・アリステーゼ王国国王


ギャラン・・・アリステーゼ王国冒険者組合組合長


ヴァイアード・・・アリステーゼ王国王都アウグスティンの鍛冶組合組合長


ラインベルト・・・ラインベルト・シュナイゼル・エストラ男爵。12歳。


エルダ・・・エルダ・リ・マルクーレ。『パンプキン・サーカス』のメンバー。ショタ。未来のラインベルトの嫁の予定(本人の中では、確定。)。


ドワーフの奴隷化の禁止法令・・・ドワーフを奴隷にしちゃ駄目だぞっという法律。破ったら殺しちゃうぞという感じ。まあ、程度によるが。



「こちらです。どうぞ。」



メイドが部屋のドアを開け、ラインベルトはメイドに軽く頭を下げ、部屋の中に入った。



部屋の中は非常に狭く、椅子が8席分ついている小さい円卓があるだけだった。



その円卓には、すでに3人の人物が座っていた。



その中の一人を見て、ラインベルトは顔が真っ青になった。



すぐさま、片膝をつき、頭を下げる。



横目でエルダを見ると、エルダは普通の顔で立ったままだった。



「エルダ。」



ラインベルトが小声でエルダに同じようにするように促すとゆっくりとだが、エルダも片膝をついて、浅く頭を下げた。



「よい。この部屋は、謁見の間と違い気軽に話をするための部屋だ。頭を上げて、席につきなさい。」



「失礼致します。」



ラインベルトとエルダは、立ち上がりすぐ側の椅子に座った。



「余が、イグナーツ・カミル・フォン・アリステーゼじゃ。」



「俺は、ギャランだ。」



「ワシは、ヴァイアードじゃ。」



ギャランは見た感じ普通の男だったが、ヴァイアードと名乗った男は、ドワーフだった。



先に席に座っていた3人の名乗りを受けて、ラインベルトも「ぼ、僕は、ラインベルト・シュナイゼル・エストラです。」と必死に勇気を振り絞って声を出した。



「私は、エルダ・リ・マルクーレだ。将来のラインベルトの嫁だ。」



「な、何言ってるんだよ、エルダ。こ、国王陛下の前で。申し訳ございません。エルダは、悪い人間ではないのですが、ちょっと礼儀に疎いものでして、後で言い聞かせますので、なにとぞ、処刑だけは御勘弁をお願い致します。」



アワアワと自分でも何を言っているのか分からないが、とりあえず、必死に弁明を試みるラインベルト。しかし、イグナーツは、対して気にした様子は見せずに「よい。」とだけ言った。



「それは、認めたと受け取っていいのか?」



エルダがさらに訳の分からないことを言い出すが、「構わぬ。今はそなたに構っている場合ではないからな。」と軽く流した。



エルダは、それ以上、何か言うことはなかったので、ラインベルトはようやく落ち着きを取り戻した。



「それでは、早速、話を始めさせてもらうかの。んっ、どうした、ギャラン、ヴァイアード?話を始めるぞ?」



ギャランとヴァイアードは、何か変なものを見たという目でエルダを見ていたが、イグナーツに声を掛けられ、「あっ、ああ、始めてくれ。」と視線をエルダから逸らした。



「この度は、急ぎ王都まで直轄地の異変を知らせたこと感謝するぞ。」



「と、とんでもございません。それで、ぼ、私の領地に逃げてまいりましたドワーフ達はどのようにすればいいでしょうか?」



ラインベルトは、イグナーツと直接目を合わせることはせずに、やや下を向いている。



「おい、小僧。」



「は、はい。」



その時、イグナーツの横に座っていたドワーフの男ヴァイアードから声を掛けられた。



「今、そのドワーフ達はどうしておるのじゃ?」



「はい。私が出てくる時はガジール山脈近くのハルム村にいましたが、私がエストを出てくる時にエストに保護するように申し付けております。」



「そうか。」



「もういいか、ヴァイアード?」



「ああ。」



イグナーツはヴァイアードに確認すると、今度こそ自らが話し始めた。



「今回のことは余も困っておっての。エストラ男爵は、当然、アリステーゼ王国の法律の中のドワーフの奴隷化に関することを知っておろう?」



「はい。」



「今回も問題は、どうやら、ドワーフを奴隷にするために行われた疑いが出てきたのだ。」



「そうなのですか!」



イグナーツの言葉に驚いた表情を見せるラインベルト。その表情はイグナーツへの愛想でやっているものではなかった。



「それで、これから、ガジール山脈の鉱山の調査を行おうと思うのだが、エストラ男爵は分かると思うが、今回、その調査をするにあたって、テトリナ子爵にその情報が漏れるわけにはいかぬというのは理解してもらえるだろうか?」



「はい。証拠隠滅で捕らえられたドワーフ達が殺されてはいけないということですね。」



「そうだ。それで、今回、万全を期すために4,000人の騎士達と調査を請け負う冒険者達を秘密裏にエストラ男爵領に送り込みたいと考えておる。その者達の住居や食事の世話をエストラ男爵には世話をしてもらおうを考えておるのだが、可能かな?」



ラインベルトは、イグナーツに真っ直ぐ見られて、申し訳なさそうに顔を左右に振った。



「申し訳ありません。住居はエストに多く余っているので大丈夫なのですが、残念ながら、食料は、現状の住民の分が精一杯でして。」



「ほう、それは何故だ?」



イグナーツに問われ、ラインベルトは、自らが男爵位についてからのことを嘘偽りなく、イグナーツに話した。



「なるほど、ということは、今現在、エストの住人は1,200人程度しか居らぬ上に、兵士・衛士に至っては12人プラス老人達で、騎士はそこにいる女性一人というわけか・・・。」



「国王陛下より土地を預かりながら、このようなことになりまして、誠に申し訳御座いません。」



「いや、それは構わぬ。だが、エストラ男爵領は、アリステーゼ王国の北西地域の壁になるべき主要な地域。このままではまずいかもしれぬ。・・・おう、そうだ、ちょうどいい機会だ。この騎士達4,000人をエストラ男爵に譲り渡そうではないか。」



「えっ、4,000人の騎士ですか?それは、うれしい限りですが、残念ながら、それを養えるだけの蓄えが我が領にはございません。」



恥ずかしそうに頭を下げるラインベルト。



「何、構わぬ。エストラ男爵領でまかなえるようになるまでは、王家の方で援助をしてやろう。ただ、その見返りというわけではないが、何かアリステーゼ王国北西部で問題が起こった場合には、まず、この騎士達に出撃してもらうことになるがよいかな?」



「はい、それはもちろんで御座います。」



「そうか、それはよかった。ああ、あと、このことは、余よりそちが優遇されたとして、他の貴族達の妬みを生むとも限らんから、他言無用に頼むぞ。」



「もちろんで御座います。」



貴族の妬み嫉みは非常に怖いということを、12歳のラインベルトも理解していた。



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