101 エルダの婚前旅行 in 王都アウグスティン
登場人物
エルダ・・・エルダ・リ・マルクーレ。『パンプキン・サーカス』のメンバー。ラインベルトの騎士。ショタ。
ラインベルト・・・ラインベルト・シュナイゼル・エストラ男爵。12歳。
ルーベル爺・・・ラインベルトの執事。
エルダとラインベルトは、ヒロ達をハルム村へ送り出した3日後、アリステーゼ王国の王都アウグスティンを訪れていた。
通常、エストラ男爵領エストと王都アウグスティンは、馬車で2週間~3週間はかかる道のりだが、エルダとラインベルトはエルダの天駆ける馬フォルクスに乗って空を飛んできたので3日で到着したのだ。
ちなみに、温泉に寄るというエルダの野望は、ラインベルトによって却下されていた。今回はどうしても急いで王都とエストを往復しないといけないためという理由をエルダが受け入れたのだ。当然、エルダを納得させるだけの対価が必要であったが、その対価が何であったかはラインベルトの名誉のために黙っておこう。ちなみに、エルダは女装した可愛い男子も範囲内だ。
「さすがに王都は凄いな。」
若い男子以外に興味を示さないエルダも、王都の壮大さに感嘆の声を上げた。
それはそうだろう。人口は30万人を超え、都市の規模はエストの30倍を遥かに超える。城壁にしても、考えられないくらいの高さなのだ。
初代国王アウグスティン・フェルナンド・フォン・アリステーゼにより建設された都市で、400年に及ぶアリステーゼ王国の歴史の中で一度も他国に落とされたことがない都市なのだ。
アリステーゼ王国自体がアランドベル大陸の中で有数の大国ということもあるのだが、それでも、長い歴史の中では何度も他国の侵略を受けてきた。
アリステーゼ王国自体は、ガジール山脈から流れ出る川が国内を横断しており、それによる広大で肥沃な大地を抱えているためにアリステーゼ王国全体で見ると非常に豊かな国である。
そのために、他国はアリステーゼ王国の土地を欲し、歴史上何度もアリステーゼ王国への侵攻をして来ているのだ。
それにも関わらず、アリステーゼ王国は一度も王都を落とされたことがないというのが、アリステーゼ王国の強さを物語っていた。
特に、平原を多く抱えるアリステーゼ王国は、馬の飼育に力を入れており、アリステーゼ王国の騎馬隊といえば、人数、練度、共にこの大陸最大を誇っていた。
また、シャナール聖王国近くの山では、莫大な産出量を誇る金鉱脈や銀鉱脈があり、アリステーゼ王国貨幣の価値は、大陸で最も安定している貨幣として様々な商取引に用いられていた。
「本当に凄い都市ですね・・・。エストもこんなに大きくできたらいいのに。」
ラインベルトもエルダと同様に感動を隠せない様子だった。
「ラインベルトも来た事ないのか?」
「いえ、エストラ男爵の相続を認めていただくために二年前に一度来た事はあるのですが、その時はバタバタしていてゆっくりと王都を見る暇はありませんでしたから・・・。ほとんど馬車の中でしたし。」
「そうか。それでは、今回は観光もしておくか?」
「いえ、今回も急がないといけませんので、急いで王宮へ向かいましょう。」
ラインベルトとエルダは、お互いに頷いて王都に入っているにも関わらず遥か先にしか見えない王宮へ向かって歩き始めた。
王宮で謁見の予約をして、エルダとラインハルトは宿屋に戻ってきていた。
これだけ大きな王国だけあって、謁見を申し込んですぐに謁見できるというものではないのだ。
それでも幸いにも、三日後の謁見を取ることができた。
今回、エルダとラインベルトが泊まっているのは、サイラス伯爵領サイラスで泊まった時とは違い、普通の旅人が泊まる一般的な宿屋の二人部屋だ。
今回の旅の旅費は、ルーベル爺がいないため、すべてエルダが出しているのだが、ラインベルトは、ルーベル爺がエルダに必要経費を前もって渡して、そのお金からエルダが出していると思っているが、実際はエルダ本人の持ち金から出している。
「まるで新婚旅行のようですね。」という笑顔のルーベル爺の言葉に、「やめてくれ、ルーベル爺。・・・婚前旅行だろ。」と頬を赤く染めながらエルダは答えた。
「そうですか。いや、そうですね。エルダ様とラインベルト様の初めての婚前旅行ですね。」
「うむ。」
「・・・それなのに申し訳ありませんが、その婚前旅行に見合うだけの宿に泊まるための経費を出せないのですが・・・。」
本当に申し訳なさそうに俯くルーベル爺にエルダは言った。
「まかせろ。私とラインベルトの記念となるべき初の婚前旅行は、私本人がそれに見合う宿屋を見つけて、自らがお金を出して泊まってみせる。はははははははははは。」
大きな胸をドンッと叩いて笑うエルダ。
「それでは、御言葉に甘えさせていただきます。・・・あっ、ただし、あまり良過ぎる宿屋を選びますとラインベルト様はそのような浪費を非常に嫌がられますのでお気をつけください。」
「そう・・なのか?」
「はい。もし、よろしければ、エストラ男爵家の栄光ある未来のために、今度の婚前旅行の作戦を一緒に考えさせていただきましょうか?」
「いつも頼りになるな、ルーベル爺。よろしく頼むぞ。」
こうして、いつものようにエルダはルーベル爺の思惑通りに行動していた。
都市間の距離はとりあえず、適当に書いてますので、後で変更するかもしれません。