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第4話:勇者、報告するのっ!

 魔族たちの国『オータク国』から遠く離れた場所に位置する、人間たちの国『リアージュ王国』。その国を治める国王、リアージュ4世の前には、一人の若者が膝をつき頭を垂れていた。

 ――ちなみにオータク国の魔族たちは、リアージュ王国の人間たちをリアージュの住人ということで、『リア住』と略して呼んでいる。


 「勇者ドウティー、ただいま戻りました」

 「うむ、よく無事に戻って来てくれた。――それで、いったい何があったのじゃ」


 王は目の前の若者、勇者ドウティーの帰還を喜んだ。

 勇者と王国軍が、魔王軍と戦闘になり敗北を喫した――、という報告は受けていたが勇者が健在であればまだ反撃することは可能である。勇者はリアージュ王国の希望なのだ。

 だが、その勇者と精鋭を揃えた王国軍がなす術もなく敗退したとは、あの戦場で何が起きたのか。事前の情報によると、あの場所にそこまで強力な敵戦力は確認されていなかったのだが――。


 「新四天王が誕生したものと思われます」

 「なに! それは真か!」


 勇者の報告に国王や側近の間でざわめきが起きる。

 魔王軍四天王とは魔王に次ぐ強大な魔力を有すると考えられているが、人間側は四天王の親衛隊に阻まれて未だに四天王に近づくことさえできていない。


 「魔族たちが口々に『ユーフィ・タン』という名前を叫んでいたので間違いないかと」

 「……ふむ。『タン』の名を持つということは、四天王で間違いないようじゃな」


 ――彼らの言う『ユーフィ・タン』とはただの『ユーフィたん』のことである。


 戦闘中に魔王軍たちが「うおおお俺たちにはロザリーたんが付いてるぞー! リア住死ねやあああ!」とか言っているので、人間たちは『たん』とは四天王であることの証、称号か何かだと思っていた。

 したがって会議などでも「四天王のエリーゼ・タンが――」などと大真面目に言い合っているのだが、傍から見ると非常に気持ち悪い光景である。


 「新四天王によって強化された魔王軍の圧倒的な力に押し負けました。申し訳ございません――」


 勇者は自身の不甲斐なさを呪いつつ、敗北の理由を口にした。

 四天王は自らの部下に対し、非常に強力な『強化魔法』を施すという戦法をとり、自らが前線に立つ姿は確認されていない。

 しかし、一人に対して使うだけでも大量の魔力を消費する『強化魔法』を何百、何千という部下に使っているのだ。まさに無尽蔵とも思えるほどの莫大な魔力である。

 もし、その魔力を部下への『強化』に使わずに自身の戦闘へ使えば、どれほどの戦闘力になるだろうか――。四天王との直接戦闘は発生していないが、彼女たちの実力は容易に想像できる。


 ――というのが人間側の四天王に対する見解である。


 もちろん彼女たちは『強化魔法』など使っていない。ただちょっと歌って踊って、「みんな頑張ってね~」と言っているだけである。

 重要な戦局では直接戦地に赴き、開戦前に安全な場所で『頑張ってねライブ』を行い、戦闘中は安全な後ろで見守り、終わったら『お疲れ様ライブ』というのが四天王の戦場でのお仕事だ。


 「魔王軍がそれほど強化されたということは、新四天王はすぐ近くにいたのであろう? 姿は確認できたのじゃな?」

 「いえ、それが……、新四天王は魔王城から遠見の魔法で指示を出していたようなのです」


 王や側近は今までの戦いから、四天王が後ろで強化魔法を使っていたのだろうと考えていたが、勇者の言葉を聞き一斉に困惑した。四天王が出向いていないのに何故魔王軍が強化されているのか――。


 「むむむ……。大賢者マジーメよ、どういうことか分かるかの?」


 王は横に控えているローブを着た初老の男性――マジーメ――に意見を求めた。

 マジーメはあらゆる魔法を使うことができ、大賢者と呼ばれている。もう若くはないため戦場に立つことはなくなったが、その豊富な知識と真面目な性格で王や勇者を支えていた。


 「……恐らく、信じがたいことですが超長距離の強化魔法でしょう」

 「馬鹿な! 強化魔法は――」

 「はい。遠隔での強化魔法の行使など、今までどの四天王にも不可能でした」


 ――もちろん、ライブビューイングはユーフィのデビューライブで初めて導入された試みだからであり、別にどの四天王でも同じことをすれば彼らの言う『遠隔強化魔法』は使うことができる。


 「すなわち、ユーフィ・タンは他の四天王よりも遥かに強大な力を持つと考えられます。その魔力、もしかすると魔王キモ・オータにも匹敵するのかもしれません」


 大賢者マジーメの言葉を聞き、誰もが言葉を失っていた。

 それほどまでに圧倒的な力を持つ新四天王、ユーフィ・タンとは一体どんな者なのか。どうやって対抗すればよいのか――。とにかく情報が足りなかった。

 

 「勇者よ、新四天王ユーフィ・タンについてできるかぎり情報を集めよ」

 「はっ! お任せ下さい」


 王からの命を受け、勇者は退室した。

 今回は苦汁をなめさせられたが、次は負けるわけにはいかない。強大な敵にも、必ず何か弱点があるはずだと勇者は心を奮い立たせた。まずは、謎の新四天王ユーフィ・タンについて調べる必要がある。


 ――待っていろユーフィ・タン。貴様の弱点を調べ抜いて丸裸にしてやる。


 勇者ドウティーは、10歳の少女の弱いところを調べて抜いて丸裸にしてやるという決意を固めると、リアージュ王国を出発した。


 こうしてユーフィは知らぬ間に四天王一の脅威と認定され、勇者からは丸裸にしてやると狙われることになったのであった。


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