第15話:救出作戦を話し合うのっ!
長らく更新止まってました。申し訳ございません。
できれば今年中、遅くとも今年度中には完結させます。
よろしくお願いします。
☆3行でわかるここまでのあらすじ☆
1.TSして魔王軍四天王のゆるふわ銀髪ロリになった
2.戦うのは部下で四天王の仕事はアイドルだった
3.勘違いで人間の国につれてかれてお姫様のメイドになった
オータク国の魔王城にある四天王たちの執務室には、その華やかな内装とは反対に重苦しい空気が流れていた――。
普段であれば、見目麗しい四人の少女が話に花を咲かせているはずであったが、今は三人の姿しか見あたらない。その三人の表情は暗く、沈んでいた――。
「ユーフィがおらんくなって、もう三日か……」
「いったい何処に行ってしまったんでしょう……」
「ユウさんが何とかするって言ってくれてるから信じてるけど、さすがに心配だよ。ユーフィちゃん大丈夫かな」
四天王たちが落ち込んでいる理由は、四天王の一人であるユーフィが、数日前に遊びに行ったきり行方不明になっていることにあった。
誘拐など何らかの事件に巻き込まれた可能性が高く、彼女たちはユーフィの安否が気がかりで眠れない日々を過ごしていたのだ。
――ちなみに四天王公式サイトからは、風邪で一週間お休みすると発表されたので、『ユーフィ失踪』という事実を知るものは四天王や魔王などの、ごく一部だけである。
心配で仕方ないが何もできないという、モヤモヤした気分を持て余していた三人の耳に、こちらに向かって廊下を走って来る足音が聞こえてきた。少し慌ただしくノックされた後、執務室のドアが開いた――。
「皆様、大変お待たせしました。現状の確認と、対応が決まりましたのでお伝えします」
「ユウさん! 待ちわびましたわ!」
「それで、どうなんや? ユーフィは無事なんか!?」
四天王のマネージャーである、ユウさんが慌ただしく執務室に入ってきた。
普段ならキッチリとスーツを着こなし、いつでも冷静沈着な彼女であったが、今はシャツがはみ出ていたり、スーツにシワがついていたりと、事件解明のために奔走していたことが見て取れる。
「まず、ユーフィ様の無事は確認されました。その点はご安心ください」
「――っ! よかったよぉ~。もぉ、ユーフィちゃん、心配させて……」
最初にユウさんの口からユーフィは無事だということが伝えられ、それまで気を張っていたロザリーは、安心からへにゃへにゃと力なく机に突っ伏した。
他の二人も同様に、安堵のため息をつく。どうやら最悪の事態は避けられたようだ。
「それで、あの子は今、どこにいるんですの?」
無事なことはわかったが、それなら一体どこで何をやっているのか、という当然の疑問をエリーゼは投げかける。
それを受けたユウさんは、信じ難いことですが――、と前置きしてからユーフィの現状を口にした。
「ユーフィ様は現在、リアージュ王国の王女、クラリス姫の専属メイドとして王城で働いているそうです」
「いや、そうはならんやろ!?」
「なってるんですわよねぇ……」
ユウさんから語られた衝撃の事実に思わず突っ込む、コレットとエリーゼ。
敵国にいるというのは、まあわかる。ただ、なぜそこで姫のメイドをやっているのか……。予想の遥か彼方を飛び越えていったユーフィの行動に、心配よりも呆れてしまうのは仕方がないことであった。
「ユーフィちゃんを自分専用のメイドに!? 羨ましい!」
そして、突っ込む場所がおかしいロザリー。
前々から、ユーフィのことを妹のようにかわいがっていたロザリーであったが、ユーフィが突如失踪したことで、今では何だがヤバい方向に暗黒進化しつつあった。
会えない時間が二人の愛を育てるらしいから、きっと大丈夫。純愛だよ。
「――コホン! ユ、ユーフィちゃんは大丈夫なんですかっ!? そのお姫様にいじめられたり、酷い目に遭わされて泣いてるんじゃ……」
エリーゼとコレットの二人から、まるでアホの子を見るときのような生暖かい目を向けられたロザリーは、ごまかすようにユウさんに問いかけた。
「その点については心配ないようです。クラリス姫がユーフィ様のことを気に入ったらしく、お二人の仲は良好とのことです。今は、誕生日パーティに向けて一緒にダンスの練習もしているようですね――」
「何やっとんねん、あのちびっ子……。一応、敵やで」
「ま、まあ、そういうところがユーフィちゃんのいいところですから」
敵国のお姫様と何故か仲睦まじく過ごしているという報告に、コレットとエリーゼは、呆れながらも「まあユーフィだし」ということで納得していた。
しかし、納得できなかった者が、ここに一人。
「――ふーん。へえ~。そーなんだー。私たちがこんなに心配してる間に、ユーフィちゃんはお姫様とイチャイチャして楽しんでたんだー」
ユーフィがちゃっかり現地妻をつくっていることを知ったロザリーは、殺意の波動に目覚めたようだ。なんか漆黒のオーラを纏っている。
「それで、ユウさん。どうやってそのお姫様からユーフィちゃんを助け出すんですか? 王国、潰しますか? 潰しましょう!」
リアージュ王国絶対潰すガールの誕生であった。
「お、落ち着いてくださいロザリー様。相手がどういう考えでユーフィ様を姫のメイドにしているのかわかりませんが、実質的にユーフィ様を人質に取られているようなものです。全面戦争は得策ではありません。バレないよう少数で潜入してユーフィ様の身柄を確保し、速やかに撤退するべきです」
「そ、そうですわよ。ユーフィちゃんの安全が第一ですから、落ち着いて行動すべきですわ!」
「む、むぅ……。そっか、そうだよね――」
リアージュ王国絶対潰すガールと化していたロザリーだったが、ユウさんやエリーゼに諭され、冷静になったようだった。
「ロザリー様の反応が、魔王様とまったく同じで驚きました……」
「そら、あの人やったら、同じようにリアージュ潰すぞって言うやろなぁ――」
ユウさんはロザリーの反応を見て、魔王に報告した際におきた一悶着を思い出して苦笑していた。
ロザリーと同じようにブチ切れた魔王は、完全武装した挙句「ちょっとリアージュ王国行ってくる」とコンビニに行くかのように飛び出しかけたため、ユウさんや魔王直属部隊のみんなで必死に押さえ込み、なんとか説得したのであった。
――これこそが、二国間の緊張が最も高まりつつも紙一重で衝突を回避したということで、後の世に『ユーフィ危機』と呼ばれるようになる出来事である。
「んで、救出組のパーティ編成はどないするん? ウチは行くで!」
「私も行きますわ」
「当然っ! 私も行くよ!」
ユーフィを助けに行く潜入部隊の話になり、三人が名乗りを上げる。
いくら戦闘を避けて行動するとは言っても、自分たちが行くのは反対されるかと思っていた彼女たちであったが、ユウさんはこうなることを予想していたようで意外にもすんなりと認められた。
「……本来であれば、危険なので皆様には魔王城で待っていて欲しかったのですが――。皆様がいたほうがユーフィ様も安心できると思いますし、この四人と親衛隊ナンバー1の方々で行きます」
こうして、この場の四人に、四天王それぞれの親衛隊ナンバー1の四人を加えた、計八人で『ユーフィ救出作戦』が決行されることになった。
――ちなみに親衛隊ナンバー1とは、それぞれのファンクラブ会員番号No.1を持つ、選ばれし戦士のことである。
自分をアピールして認知してもらおうということはせず、ただひたすらに推しを推し、推しの輝きを陰から見守り続ける真のオタクだけが持つことが許される栄光の会員証No.1。それを持つ四人の戦士。
まあ、要するに彼らこそが戦闘力的な意味での、魔王軍四天王ということである。
魔王様は連れて行った場合、暴走しかねないということと、国防的な観点から鑑みて、今回はお留守番を言いつけられた。
「四日後、クラリス姫の誕生日パーティ当日に合わせて救出します。パーティの途中でユーフィ様が城から抜け出してくる予定なので、そこで合流して即座に王国を脱出します」
「へ~。ようそんな、向こうと打ち合わせできたな~? さっすがユウさん」
三日という短期間で、敵国にいるユーフィの状況を把握し、救出の計画まで立てているユウさんの有能っぷりに四天王たちは改めて驚かされていた。
しかしユウさんは、そんな四天王たちの反応に、珍しく少し困ったような表情で答えた――。
「あちらに居た知り合いに助けていただいただけですので……」
「それってスパイを潜伏させてるってこと?」
「いえ、そういうわけでは――。なんと言いますか、自由な方ですから」
「ふ~ん?」
珍しく答えにくそうなユウさんの様子を不思議に思いながらも、まあ国防関係だし機密事項もあるか、とロザリーはそれ以上追及しないことにした。
一方、エリーゼは、ユウさんの言う『知り合い』が、誰のことなのかを察していた。
四天王を辞めてから姿を見たという話は聞いていなかったので気になっていたが、リアージュ王国に行っていたというのであれば納得である。
「――その『自由な知り合い』さんは、元気でやっていますの?」
「――はい。相変わらずのようですが」
「そうですか。それなら、よかったですわ――」
彼女が昔と変わらず元気に過ごしていると聞いて安心すると同時に、まだ幼く純粋なユーフィに変な影響を与えていないか、エリーゼは少し心配になった。
――中身は幼くもなければ純粋でもないのだが、すでにユーフィはビッチィちゃんから、メスガキ講座(必修:単位2)を履修済みなのでエリーゼの心配は半分当たっている。
「なんや? その人、エリーゼとも知り合いなんか?」
「まあまあ、そんなことよりも今はユーフィちゃんの救出作戦に集中しましょう」
二人が話題にしている相手が、かつての同僚のことだと気がつかなかったコレットは興味深そうにしていたが、エリーゼは直面している問題に集中するよう話をそらした。
「そうだね! ……帰ってきたら、もう勝手にどこか行かないようにしないと。やっぱりアレ買っといて正解だったなー」
「ロ、ロザリー? 今なんて――」
「ううん、何でもないよっ! ちょっと、ユーフィちゃんが帰ってきたときの『準備』をしたいから、私、部屋に戻るね」
ロザリーの様子から何やら不穏なものを感じ取ったエリーゼは思わず聞き返したが、何でもないと答えるロザリーは、もういつもの明るい彼女であった。
そんな彼女は、準備があるからと楽しそうに退室していった――。
「なあ……、ウチ、ロザりんがこの前、首輪買ってるとこ見てもーてんけど――」
「……早くユーフィちゃんを助け出しましょう。これ以上あの子が暴走する前に……」
「はい。ユーフィ様のためにも全力を尽くします」
ロザリーを見送った三人は、こっちはこっちでヤバいことになってきたぞ、とユーフィ救出に向けて決意を新たにしたのであった。
助かっても助かるか分からない、ユーフィ救出作戦まで、あと四日――。




