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第13話:お姫様のメイドになったのっ!

 リアージュ王国の中心にある王城の一室。

 厳重な警備に守られたこの部屋は、部屋の主である王女と、その専属メイドの2人きりの空間となっている。


 「クラリス様、クッキーをお持ちしました」

 「ありがと! フィーも一緒に食べましょう?」

 「わーい。いただきます」


 いくら誘われたからとはいえ、何の躊躇もなく、姫と一緒にお菓子を食べ始めるフィーと呼ばれたこのメイド。


 ――その正体は言うまでもなく、『ゆるふわ銀髪ぽんこつロリ』こと魔王軍四天王のユーフィである。


 仮にも戦争中の相手国でいったい何をやっているのかという話だが、どうしてこうなったのかというと、ユーフィが王国に連れてこられた2日前に遡る――。






 オータク国からユーフィをお持ち帰りした変態仮面こと勇者ドウティーが、ユーフィを連れて行った場所はリアージュ王国の王城であった。

 なんかよくわかんないけど「君を助ける」発言をしていたので、ひどいことにはならないだろうと油断していたら、まさかの初手ラストダンジョンである。


 ――え、これやっぱり処刑されるやつ?


 銀髪だけでなく頭の中もゆるふわなユーフィだったが、これにはさすがに焦り始めていた。

 玉座の前で公開処刑でもされるのかとガクブルしていると、勇者は正門からではなくお城の裏にある木箱を動かし、そこに現れた隠し扉のカギを開けて入っていった。

 お城にはやっぱり隠し通路とかあるのか~、とユーフィが感動していると長い通路が終わり、開けた空間に出たようだ。

 そこには金髪のイケメンと、その後ろに隠れるようにしてこちらを覗き見る、同じく金髪の美少女が待っていた。


 ――あ、これ絶対、王子と姫だ。頭に王冠とティアラのってるし、金髪だし。


 ユーフィは『ファンタジーの王族8割金髪説』を提唱していた。ちなみに残りの2割は銀髪である。


 「よう、ドウティー。久しぶりに連絡が来たと思ったら、またとんでもない頼みでビビったぜ」

 「すまない。こんなことを頼めるのはお前しかいなかったからな」

 「フッ、気にすんなよ勇者様。俺とお前の仲じゃねえか」

 「そうか。ありがとうな王子様」


 なんかイケメン2人組が軽口を言い合って楽しげに小粋なトークを始めていた。


 ――陽キャオーラ撒き散らして会話するな。絶対サッカー部だろコイツら。


 そんな様子を見たユーフィは、謎の怒りを胸に、憎悪を燃え上がらせていた。イケメンは敵なのである。

 イケメンの絡みになんて興味はないので、予想通り王子様だった男の後ろに隠れ、こちらをジッと見ている少女に手を振ってみることにした。

 おそらく、このイケメン王子の妹で、お姫様であろう彼女も非常に美しい顔立ちをしていた。

 歳はユーフィと同じくらいに見えるが、仮に四天王と並んだとしても全く見劣りしない、世界トップクラスの美少女である。

 同じ金髪美少女のロザリーと並べば姉妹みたいになりそうだなあとユーフィは微笑ましく見つめていた。

 そんな金髪少女は、へにゃへにゃと手を振っているユーフィに最初は驚いた様子だったが、次第に不機嫌そうにジト目になって見つめていた。


 「で、匿いたいってのは、この子か」

 「ああ、以前話しただろ? 俺を助けてくれたこともある。やさしい子だ」


 なんとか少女との交流を図ろうとしていると、イケメンどもの話題が自分のことに移り、皆の視線が集まってきたのでユーフィは気恥ずかしくなって縮こまった。


 「ああ、怖がらなくてもいい。確かに互いの国は争っているが、別にキミ個人が何かしたというわけではないだろう。なにより、コイツ(ドウティー)がキミを信用してるというなら、俺としてはそれだけで十分だ」

 「は、はあ……。ありがとうございます?」


 ユーフィからしてみれば、勇者のイメージは変態仮面しかないので、王子の勇者に対する信頼が意外だった。

 まあ、人間側からすれば英雄だし当たり前なのかもしれないが、変態仮面だしなあ……。

 

 「そういえば、お互い自己紹介がまだだったな。俺はリアージュ王国の王子、チャラウェイだ。こっちの隠れてるのは妹のクラリス。ほら、クラリス。魔族だからって、別にこの子は怖くないだろ? きちんと挨拶しなさい」

 「お、お兄様! 別に怖がっていたわけではありません! 怪しい者でないか自分の目で観察していただけです! ……コホン、私はリアージュ王国の王女、クラリスですわ」


 お姫様の名前はクラリス姫というようだ。

 どうやらユーフィが魔族ということで、怖がっていたらしい。かわいいね!

 チャラくてウェイウェイしてそうな王子の名前は刹那で忘れたユーフィであるが、名乗られたからには、こちらも名乗らねば不作法というもの……、と名乗ろうとしたところで、重要なことに気付く。

 

 あ、やば。名前どうしよ――。


 「ボクは、え、えーっと、フィ、フィーです! よろしくお願いします!」


 ユーフィ? 贅沢な名だね! 今日からお前はフィーだ!

 とっさに名前をいじって、いい感じの偽名を名乗ることができた。

 嘘にはある程度の真実を混ぜることが大事って聞いたことがあるからね!


 「ふ~ん。あなた、なんかダサい眼鏡してるし、髪型もパッとしないわねぇ……。そんなんだから、仲間から虐められるんじゃないの?」

 「え゛」


 ユーフィは自分が虐められていたという衝撃の事実(誤解)に硬直した。

 クラリス姫はそんなユーフィの顔をじ~っと眺めると、眼鏡と髪留め(変装セット)に手を伸ばしてきた――。


 「素材は悪くなさそうだし、そんな眼鏡とって、髪もほどいてみなさいよ。ホラ、少しはマシに――」

 「あっ」


 ユーフィの素顔を見たクラリス姫は、ポーッと見つめたまま黙ってしまった。

 隣の王子も驚愕の表情を浮かべて凝視している。

 これは、四天王だとバレたかとユーフィは死を覚悟した。


 「――て、天使様?」

 「え、違いますけど」


 正体がバレたかと思いきや、お姫様はわけのわからないことを言い出した。


 「いや、こりゃ驚いた。なるほどな。この容姿に嫉妬して――ってところか……」

 「ああ、おそらく」


 王子と勇者も何か納得し合っている。

 さっきのクラリス姫の言葉も合わせて考えると、なぜかオータク国で虐められていて、勇者に助けられて亡命してきたということになってるみたいだが……。

 

 ――え? なんで??????


 君たちが何を言っているのか、ボクにはわけがわからないよ――、とユーフィは宇宙猫状態になった。


 「決めたわ! フィー! あなた私の専属メイドになりなさい!」

 「あっ、はい。……えっ?」


 クラリス姫の勢いに押されて、つい返事をしてしまった結果、魔王軍四天王から王女専属メイドにジョブチェンジを果たしたユーフィであった。


 「あ、でも普段は変装しときなさいよ! 悪い虫が寄ってきたら大変だし、あなたの事情を考えれば目立たない方がいいでしょ。フィーのかわいさは、私だけが知っていればいいから!」






 そんなことがあって、ユーフィはリアージュ王国の王女、クラリス姫の専属メイドとして働くことになったのである。


 「――それでね、次の祝日が私の誕生日なんだけど、10歳になるからってお父様がはりきっちゃって、大変なのよね」

 「次の祝日ということは、5日後ですか。お姫様の誕生日パーティともなれば、とっても豪華なんでしょうね」


 メイドも護衛として、おいしいもの食べられたりしないかな?


 「そんなに面白いものではないわ。つまんない人たちの相手をして、つまんないダンスを踊るだけよ」

 「ほえ~」


 やっぱり王族に取り入ろうとする、権力争いとか派閥争いとかあるのかな~と想像してみたが、よくわからない世界だったので、ユーフィはアホみたいな相槌を打つので精いっぱいだった。


 「ちょうどいいわ。フィーは私と身長も同じくらいだし、ダンスの練習相手になりなさい」

 「うええ!? ボク、社交ダンスなんてできませんよ!」


 この世界に来てから、アイドル的なダンスなら練習してきたが、しゃるうぃーだんす的なものは前の世界も含めて、一度も経験はない。

 せいぜい子供の頃にバラエティー番組で、社交ダンス部を見ていたくらいだ。どこぞの海峡とかも横断してたやつである。


 「大丈夫、私が教えてあげるわ! それに私のメイドなら、それくらいできるようになってもらわないとね!」

 「ええ~……。お手柔らかにお願いします」


 明日から特訓よっ! と楽しそうなクラリス姫を見て抵抗しても無駄だと悟ったユーフィは、明日からの練習が厳しくないことを祈ることにした――。






 「ふぅ……。つかれたー。今日も1日がんばったぞいっと」


 王城での慣れない仕事を終えて自室に戻ったユーフィは、変装を解いて現状を改めて確認していた――。


 よくわからないまま人間の国に連れてこられて2日がたったが、四天王だとバレてないどころか、その四天王に虐められていた哀れな少女だという、謎の勘違いのおかげで温かく迎え入れられた。

 しかもこの国のお姫様の専属メイドに任命されるという謎の展開。

 それでいいのかリアージュ王国……、と思わなくもないが、命の危険はなさそうなので一安心である。

 とはいえ、みんな心配してるだろうしなんとかして帰らないとなあ――と考えていると、自室のドアをノックする音が聞こえてきた。


 「はーい」


 こんな時間に誰だろう? 明日の仕事の連絡かな? と思いながらユーフィはドアを開けた。


 「こんばんは♡」

 「えっ――」

 

 ドアを開けるとそこには、なんかピンク髪のめっちゃえっちなお姉さんがいた。

 別に露出をしているわけでもなく、このお城のメイドの恰好をしてるんだけど、えちえちオーラが全身から迸っている――。

 まるで、男と生まれたからには誰でも一生のうち一度は夢見る「地上最エロの女」って感じである。

 ユーフィの脳内で、神イントロッッッが流れ出した。


 「ちっちゃくてかわいぃ~♡ ちょっとつまみ食いしちゃおうかな♡」

 「えっ、あっ、ちょっ、い、一体何の用ですか!? というか誰ですか!」


 甘く、くすぐるような声と蠱惑的な瞳に蕩けそうになりながらも、ユーフィは何とか相手の目的を尋ねた。


 「ん~、アタシの後任の子がぁ♡ どんな子なのか気になっちゃって♡」

 「後任? 姫様のお付きのメイドだった方ですか?」


 今まで姫様専属のメイドはいなかったって話だったけど、違ったのかな? まさかこの人がえっちすぎてあまりにも情操教育に悪かったから存在を抹消されたとか――、とユーフィは考え込んだ。

 えっちなお姉さんは、そんなユーフィの様子を少しの間楽しそうに眺めていたが、そっと屈んでユーフィの耳元へ口を近づけると囁いた――。


 「ちがうちがう♡ ……あなた、今の四天王でしょ?」

 「――っ!」


 ひゃあぁいい匂いがしましゅ~とドロドロに溶けかけていたユーフィだが、さすがに正体バレというヤバすぎる展開に理性を取り戻し、弾けるように相手から距離をとる。


 「なっ、なんでっ! いや、違います! 眼鏡だって――」


 ユーフィは、眼鏡もしてるし人違いだと言いかけたが、変装を解いたまま対応していたことに、今更ながら気づいて絶句した。

 あわあわと慌てふためくユーフィに、えっちなお姉さんは妖艶な笑みを浮かべながら自分の名を告げた――。


 「アタシ、元四天王のビッチィよ♡ はじめましてユーフィちゃん♡」


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