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第8話:勇者、再び報告するのっ!

直接的ではないですが、少し下ネタ的な感じがあるかもです。

 「――さて、どうしたものかな」


 勇者ドウティーは路地裏に身を潜めながらつぶやいた。


 ここは魔族たちのオータク国でも、西方に位置する小さな町である。

 謎の新四天王ユーフィ・タンについて調べるためオータク国へ潜入していたドウティーは、この町に四天王たちがやって来ると聞いて駆けつけた。しかし、四天王に会うためには『チケット』と呼ばれる許可証のようなものが必要らしく、会場に紛れこむことはできなかったのだ。


 だが、思わぬ収穫もあった。その会場の周りでは四天王のポスターが売られており、今まで前線に出てこないために謎とされてきた四天王たちの姿が判明したのである。

 勇者は四天王たちが見目麗しい少女であることに驚愕し、近くにいた魔族の男にあれは本当に四天王のポスターなのかと問いかけてしまった。信じがたいことにどうやら彼女たちが四天王らしい。

 そのポスターは――なぜか四天王たちは水着を着ていた――ユーフィ・タンの分だけは売っておらず、三人分だけのようだった。ユーフィ・タンのポスターはないのかと聞いてみたが、このポスターは三人分しかないのだと言われてしまった。


 ユーフィ・タンの姿が分からないのは残念であったが、他の三人について国王へ報告するためにもドウティーはポスターを三枚購入した。妙に高かったため昼食を抜くことになりそうだが仕方がない。

 だが、予想外の収穫で完全に気が緩んでいたのだろう。反対から歩いてきた男と肩がぶつかってしまい、その拍子に顔を隠すために被っていたフードが外れてしまった――。


 「おっと、すまん。――お、お前っ! まさか!」

 「――っ!」


 ドウティーはすぐさまフードを被り直し、その場を離れた。

 しかし、ドウティーの顔を見たあの男の反応からして正体がバレたと考えるべきだろう。すぐに追手が探しに来るかもしれない。ひとまず何処かに身を隠すべきだと判断し、ドウティーは路地裏通りへ滑りこんだ――。


 さて、どうするべきかとドウティーはこの後の動き方に考えをめぐらせた。

 ユーフィ・タン以外の四天王についてはポスターを入手し、ついに正体が明らかになった。その一方、恐るべき力を持つと考えられているユーフィ・タンについては、未だその姿は謎のままだ。

 追手が来ている様子もないし、もう少し調べてみるか――、と歩き出したところで何かがぶつかって来た。


 「ご、ごめんなさい――」

 「い、いや、こちらこそすまない。大丈夫か――」


 すぐに逃げるべきだと思ったが、謝られたのでついこちらも返してしまった。声が聞こえた方を見ると、目を疑うほどの美少女が尻もちをついてこちらを見上げている。

 銀色の髪に深い翠色の目、そして純白の下着――。

 顔が熱くなるのを感じ、フードを被り直して誤魔化した。見ていたことがバレていないだろうか。


 ――童貞勇者ドウティーに美少女のパンチラは劇薬であった。


 「君は……、君も魔族なのかい?」

 「ええ、まあ……、一応」

 「そうか……。そうだな、当たり前か――」


 目の前の少女があまりにも可憐で、思わず馬鹿な質問をしてしまった。そもそもこんなことを聞いてしまっては、自分は人間だと言っているようなものではないか――。

 少女が彼の正体に気付いたかは分からなかったが、少なくとも警戒心は抱いたようで睨むようにこちらを窺っている。

 いくら敵対している魔族とはいえ、子どもの命を奪うつもりはない。だが、ここで騒がれでもしたら魔王軍が集まってくるだろう。かわいそうだが、少しの間だけ気絶させておくべきか――。


 「急いでるみたいでしたけど、時間は大丈夫なんですか?」

 「あ、ああ。いや、別にそういう訳ではないんだ」

 「……そうですか」


 そんなドウティーの考えをよそに、少女は純粋にこちらの心配をしてくれていた。まさに天使である。背中に白い翼はないが、スカートの中には純白のぱん――。先ほどの光景を思い出し、彼はまた赤面した。

 そして、アホなことを考えて動揺していたからか、彼はつい自分がこの町に来た理由を呟いてしまった。


 「新四天王のユーフィ・タンがこの町に来ていると聞いて、その姿を見ておきたかったのだが……」

 「――えっ?」


 『ユーフィ・タン』という名前を聞いた瞬間、少女の表情が大きく変わった。彼女の顔に浮かんでいた感情は『嫌悪』。彼女はその感情で美しい顔をゆがませていた。


 「君、ユーフィ・タンについて何か知っているのか?」


 『ユーフィ・タン』の名前を聞くたび、彼女は苦痛に耐えるかのようにその身を強張らせている。

 こんな幼い少女が、味方であるはずのユーフィ・タンに何故そこまで強い負の感情を募らせているのか。

 ――なにか酷い事をされているのかもしれない。ここまで美しい少女なのだ。ユーフィ・タンが男ならば下劣な欲望を、女ならばその容姿への嫉妬を、この少女へぶつけているのではないか……。


 「頼む! 何かユーフィたんについて知っていることがあれば教えてくれ!」


 恐らく彼女と自分の目的は一致している――、とドウティーは確信していた。

 彼女も自身をユーフィ・タンから助け出してくれる誰かを待っているはずだ。


 「え、えーっと。さすがに、ボクから教えられることはない、というか、その……」


 少女は迷った末に「自分からは教えられない」と答えた。

 ユーフィ・タンによって植えつけられた恐怖が彼女を縛っているのか。ドウティーは目の前の少女を救うことができない自身の力不足を悔やんだ――。


 「あっ、でも、なんて言うか、あなたの気持は伝わってると思いますよ! その、きっとあなたのことも、いつも見てると思います!」


 少女が必死に、何かを伝えるように紡いだ言葉に彼は愕然とした。

 『あなたの気持は伝わってる』という言葉が示すことは一つだ。


 ユーフィ・タンは自分を調べようとしているこちらの動きにとっくに気付いている――。


 なるほど、それならばあのポスターの件も納得がいく。ユーフィ・タンのポスターだけがないというのは不自然だったが、相手がこちらの動きに気付いていたのであれば、自身のポスターを隠すように指示を出していたということだろう。

 そして、ユーフィ・タンは就任時から遠見の魔法を用いていた。『あなたのこともいつも見ている』というのは、自分を嗅ぎまわっているこちらをその力で監視しているということか。


 ――待てよ。あなたのこと『も』? では、他に誰を監視しているというのだ?


 そこまで考えてドウティーは目の前の少女に気付いた。

 彼女はユーフィ・タンに監視され逃げられないのだ。慎重に言葉を選ぶように伝えてきたのは、今この瞬間もユーフィ・タンによって監視されているからではないか。

 きっとこの事実をドウティーに伝えたことで彼女はまた酷い目に遭わされてしまうだろう。にも拘らず、彼女はドウティーをユーフィ・タンの魔の手から逃そうと勇気を出して教えてくれたのだ――。


 「教えてくれて感謝する。俺は、一度戻ることにするよ」

 「はあ……。そうですか? お気をつけて」


 ユ-フィ・タンがこちらを最初から監視していながら、今まで何もしてこなかったのは油断させるためだろう。このまま何も知らずに留まっていれば、逃げ場のない絶好のタイミングで襲ってきたはずだ。

 だが、この少女の勇気ある行動によってドウティーは監視に気付いてしまった。こうなれば、今すぐにでも追手が来るだろう。

 彼女の想いを無駄にしてはいけない。ドウティーはすぐさまリアージュ王国へ向けて移動を開始した――。









 帰還したドウティーが、国王への報告を行っている謁見の間には何とも言えない空気が流れていた。

 彼がオータク国から持ち帰り、提出したポスターには今まで謎とされてきた四天王の姿が写っていたのである。

 ……写っていたのだが――。


 「……勇者よ、こやつらが本当に魔王軍四天王なんじゃな?」

 「はい。四天王の、ロザリー・タン、コレット・タン、エリーゼ・タンの三人です」


 国王の問いかけにドウティーは間違いないと断言した。

 この場にいる人間たちが思ったことは一つである。


 ――四天王ってこんなにかわいいの?


 自分たちを苦しめている、あの四天王がこんな美少女たちだったとは夢にも思わなかった。

 しかも水着とはけしからん。どういうことだ、もっとやれ。


 「ふむ。このポスターは国王であるわしが責任を持って保管しておく――」


 国王が深刻そうな顔でふざけたことをのたまった。王権乱用である。

 そうはさせるかと周りから反論の声が上がった。


 「お待ちください! 戦場ですぐに見分けられるよう、王国騎士団長の私が引き取ります!」

 「いいえ! 魔法師団長の私が保管いたします!」

 

 「いや、俺のとこも――」「それなら、うちだって――」と、ポスターを巡って各自が好き勝手に主張を始め、謁見の間は大混乱に陥った。


 「ええい! 静まれ! ――大賢者マジーメよ、お主の考えを聞かせてくれぬか」


 このままでは埒があかぬと国王はマジーメに助けを求めた。マジーメが「国王が適任でしょう」と言ってくれれば誰も文句は言えまい。

 大賢者マジーメは渦中の『四天王水着ポスター』をしばらく見つめた後、口を開いた――。


 「私が引き取りましょう」

 「なん……じゃと……?」


 マジーメの裏切りに国王は言葉を失くした。一体いつからマジーメが賛同してくれると錯覚していた?


 「先ほどの混乱からそのポスターには、精神に働きかける何らかの魔法が施されている可能性が高い。したがって、私の自室でじっくり鑑賞――、いえ観察を行いたいのです」


 マジーメの言葉を聞き、ポスターを我が物にしようと争っていた人々は己の未熟さを反省した。

 自分たちは、いとも簡単に敵の魔法にかかってしまったというのに、マジーメだけは冷静に状況を把握している。さすがは『大賢者』だ。


 「さすがに私もこの強力な四天王の魅力――、ごほん! 魔力には我慢が――、あー、障壁が持ちそうにありませんので、今すぐ自室で儀式を行いたいのですが……。よろしいですかな?」

 「ふむ、わかった。頼んじゃぞマジーメよ」


 マジーメはポスターを大事そうに抱えて退室していく。彼の拳が小さくガッツポーズしていたように見えたが、国王は見間違いだろうと気持ちを切り替えた。


 「――ところで、勇者よ。例の新四天王、ユーフィ・タンの調査はどうなったのじゃ? ユーフィ・タンの、その、ポスターはないのか?」


 国王は何かを期待するようにドウティーに尋ねるが、彼は首を振る。

 そして、ドウティーは魔族たちの町で出会った少女との一件を国王に報告した――。


 「なるほど。敵とはいえ、その少女には感謝せねばならんな。――むっ」

 「ふぅ……。皆さん、会議は順調ですかな? ふぅ……」


 国王の視線の先には大賢者マジーメが立っていたが、先ほどまでとは明らかに雰囲気が変わっていた。溢れだす魔力は強大でありながら、波紋一つない静かな湖面のように穏やかである。

 ――それは、現役を退いてからめったに見せることのなかった大賢者マジーメの『賢者モード』であった。


 「戻ったか。まさか『賢者モード』を再び見られるとは……。無事に封印できたかの?」

 「……いえ、まだ安全になったとは言えません。一人につき一回の儀式では鎮めることができなかったので二回ずつ行ってようやく、一時的にですが沈静化に成功しました。ふぅ……」


 席を外していたわずか10分足らずで、六回も封印儀式を行っていたとはさすが大賢者であった。驚くべき早さである。――別に深い意味はない。


 「――大賢者とはいえ、三枚全ての封印となると厳しいのではないかの? ほれ、試しにエリーゼ・タンのポスターはわしに任せてみるというのはどうじゃろうか?」


 国王は巨乳好きであった。


 「バラバラに保管することには賛同できませんな。四天王とは本来、四人で一つ。今は三人分しかありませんが――、揃えることで真価を発揮するのです。そのおかげで残る四天王、ユーフィ・タンの正体について見当がついたのですから」

 「なに! それは真か! マジーメよ、ユーフィ・タンとは何者なのじゃ!?」


 お国柄、外交的で活発な人々が多いリアージュ王国の住人――リア住――たちの中で、マジーメはただひたすらこの歳まで独りで『自己研鑽』に努めてきた。その本質はオータク国の魔族たちに近いものがあるだろう。

 そんな彼だからこそ、三人のポスターで何度も儀式を行い『賢者モード』となって気付けた()()()()


 ――四天王は四人で一つ。その余ったピースを埋め、完全な四天王をつくり上げるであろうユーフィ・タンの正体。


 「ユーフィ・タンの正体、それは四天王に足りていない『ロリ枠』を埋める存在。――つまり、美少女ロリです!」

 「な、なんと――」


 マジーメの言葉を聞いて、皆が想像を働かせる。

 あの三人に美少女ロリが加わることで完成する四天王の姿――。まさに完璧である。付け入る隙がないではないか。

 だが――。


 「しかし、マジーメ様。ユーフィ・タンは、いたいけな少女をいじめて楽しんでいる可能性があります。ユーフィ・タンの正体が、その……、ロリだというのは無理があるのではないでしょうか」


 ドウティーがマジーメの予想に異を唱えた。

 彼はあの美しい少女が『ユーフィ・タン』に対し浮かべていた感情を忘れることができなかった。


 「――なるほど。腹黒系邪悪ロリか。いい……」

 「は?」


 しかし、マジーメはドウティーの指摘に対し恍惚の表情を浮かべる。


 「勇者よ、何を疑問に思うことがある? 圧倒的な力を持ったロリが自身の力に溺れ、驕り高ぶるのはむしろ当然ではないかね。そんな邪悪ロリをおしおきするのもいい……。いや、むしろ馬鹿にされ、罵倒されながらおしおきされるのも――」


 マジーメはそこまで言いかけて突如目を見開き、虚空を見つめたまま動きを止めた。

 大賢者の異様な様子に人々は不安にかられた。


 「あの、マジーメ様――」

 「見えた! 今! まさに! 『大賢者』を超越した『超賢者』への道が! ユーフィ・タンだ、彼女こそが私を『超賢者』へと導いてくれる!」


 齢五十を超え、大賢者マジーメは新たな自分(ドMロリコン)を見いだした――。


 「『超賢者』じゃと! それが本当であれば、我が国にとってなんと心強いことか。ユーフィ・タンのポスターをなんとしても入手するのじゃ!」


 『大賢者』マジーメの魔法と知恵がなければ、リアージュ王国はオータク国に敗北していただろう。そのマジーメが、その上の『超賢者』へとランクアップできると言っているのだ。国王はユーフィ・タンの水着ポスターを、是非とも手に入れなければと興奮して立ちあがった。


 「勇者よ、この仮面を授けよう。必ず君の助けになるはずだ」

 「――これは?」


 マジーメはドウティーに怪しげな仮面を渡した。仮面といっても顔全体を覆うものではなく、ゴーグルのように目元を隠す物のようだ。――あまりセンスが良いとはいえないデザインをしている。


 「その仮面は認識阻害の魔法がかかっている。その仮面をつけていれば、相手からは『仮面の人』としか認識できないようになっているのだ。魔族たちから勇者とバレる心配もなくなるだろう」

 「おお! さすがは大賢者マジーメじゃ! では勇者よ、その仮面をつけ再びオータク国へ潜入しユーフィ・タンのポスター、及びエリーゼ・タンのグッズを入手してくるのじゃ!」

 「あっ、国王様ずるい。私もロザリー・タンのグッズを――」

 「俺はコレット・タンの――」


 国王の言葉を聞いた人々が、自分が気に入った四天王の物も買ってきてくれと騒ぎ出す。


 「静まらんか! 重要な任務なのじゃぞ! 自分の好みを押し付けよってまったく――」


 お前が言うなよとその場の全員が思ったが、相手はこれでも一応国王様なので口には出さなかった。


 「仕方がない。勇者よ、四天王のグッズをできるだけ多く入手してくるのじゃ! 領収書はちゃんと貰っておくのじゃぞ」


 こうして勇者は四天王のグッズを集めるために再び旅立つことになった――。






 勇者を見送った後、マジーメが国王へ問いかける。


 「――領収書の宛名はどうするので? まさか『リアージュ王国』と書いてもらうわけにはいかないでしょう」

 「それは……、なんとかするじゃろ? ほれ、『上様』とか」

 「それでは経費として落とせませんな。その場合、費用は国王様が負担するということで」

 「えっ……」


 国王は縋るような目でマジーメを見たが涼しい顔で受け流されてしまった。

 そちらがその気なら――、と国王は反撃にでる。


 「そういえば、お主が勇者に渡したあの仮面じゃが……」

 「なんですかな?」

 「十年ほど前に、謎の仮面をつけた覗き魔が世間を騒がせておったことを思い出しての――」

 「国王」

 「なんじゃ?」

 「費用は折半ということでどうでしょう」


 なんだかんだで、リアージュ王国も意外と平和そうである。


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