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第二十話「魔剣と王都 -前編-」

タイトルを思いついたので変更しております。あらすじも少し詳しくなりました。


 アウルのレベルがタイワルの洞窟で遭遇したキメラドラゴンより高いことに驚愕したあの後、王都サンドラゴを目指し2人と2匹で飛んで……いや、1匹は俺の頭の上で寛いでいた。


 リンの跳ねるスピードに合わせると飛びながら会話も楽で、飛びながらマーレさんにタイワルの洞窟でのことを説明した。


 キメラドラゴンをアースドラゴンと思っているマーレさんには詳しくは説明せず、複数のキメラドラゴンでは無く、1匹のアースドラゴンを倒して外に出た。と説明しておいた。


 そして少しすると、遠くに小さくうっすら見えていた街が大きく見えてきて、詳しい街並みが眼下に見えてきた。


 王都サンドラゴは北側が崖で、その崖の上に建つ大きな白い城とそれを囲むように街が出来ている大都市だった。


 街を囲む壁もエスタールが3mほどだったのに対し、王都と呼ぶだけあってここサンドラゴは10mほどの大きな壁が作られていた。



 サンドラギス王国、東の大陸に存在する人間族の4国のうちの1国である。西にクルーエル帝国、南西にマルゲリータ神聖国と隣接する。


 国力はクルーエル帝国、マルゲリータ神聖国には及ばないものの、北のバスンド共和国よりも上で、東の大陸で3番目に大きな国である。


 東の大陸には南に魔族が支配する魔国領が存在するため、4国は不可侵条約を結び魔族の侵攻に備えている……らしい。マーレさんのお話だ。



 俺達は王都より少し手前で地上に降り、歩いて近づき南門と呼ばれている門の前の列に並んでいた。


 時刻は夕方少し前、宿のことも考えると早く王都へ入りたい所だが商人の馬車や冒険者らしきグループが10組ほど並んでおり、さらになかなか前に進まない。


 カードの身元確認だけで無く、どうやら馬車の積荷も確認しているようだ。商人の方が多いため時間がかかりそうだ。


「全然進まないわね!」


 列に並んで10分ほど、妖狐族の子狐リンが右前足と尻尾を地面にぺしぺしと打ちつけて愚痴を零した。


 リンは人の前に出る時は光の幻影魔法で尻尾を1本に見せているらしい。今は2本ある尻尾を1本に隠しているらしいが……。


「リン、本当に尻尾隠してるのか?俺にはばっちり2本見えてるんだけど……」


「レーテがおかしいだけでしょ!ウチの魔法は完璧よ。マーレ見えないわよね?」


「そうね、私には1本にしか見えないわ。そんなことより!リンちゃん、抱き上げていいかしら?」


 マーレさんは尻尾などどうでもいいとばかりに、じりじりとリンに近寄ってどうにか抱き上げようとしていた。


「ま、マーレ!あんたちょっと怖いわよ!手をワキワキさせないでよ!」


 手をワキワキとさせながらじりじりとリンに近づくマーレさんと、尻尾を股に収納して後ずさり距離を取るリンがはしゃいでいた。


「レーテ!助けなさいよ!」


 そう言いアウルを退けて、俺の頭に飛び乗りマーレさんを止めろ!助けを求めてくる。


 どうやら自分から触る分はいいが相手が触るのは嫌うようだ。めんどくさいな!


「ホーホーホーホー!」


 ヒュン!ドン!


「コーーーーーン!」


 アウルが俺の頭から降ろされたことにお怒りのようだ。空中からリンの腹に体当たりしてリンが吹き飛んだ。


「ちょっとー!アウル何するの……あ!待ちなさい!痛い!やめ……コーーーーン!」


 高速で飛び掛るアウルに対応出来なかったリンがぐでーんと前足を前方に投げやり伏していた。尻尾も力なく地面に垂れている。


 その頭の上にはアウルがバサバサと翼を羽ばたかせ、まるで勝利を喜んでいるようだった。


「ホーホーホーホー!」


「うう……こんなちっちゃいアウルに負けるなんて……屈辱だわ」


 レベル差100だしね……それにしてもアウルは何であんなに強くなったのやら……。


『お主の魔力を毎日のように食らい続けたためであろう。そのため馬鹿げたレベルのファントムアウルが誕生したのであろう……』


『え?そうなの?』


『魔物に取って魔力こそが力だからな。そう考えればおかしな話でもなかろう?』


 なるほどなるほど。はっ!俺はあることを閃きリンの頭の上で鳴いているアウルを持ち上げ……ようとしたら避けられて逆に俺の頭に乗られた。


「…………まあ、いいけど。アウル!幻影魔法!細マッチョだよ!」


「ホーホーホーホー?」


『「ナニソレ、知らない」と』


「レーテちゃん?細マッチョって……」


 マーレさんがぐでーんとダウンしたリンを抱えながらも細マッチョに食いついてきた。


「アウル!どういうことだ!レベル125ならいけるだろ?」


「ホーホーホーホー」


『「教えてもらってない」と……ふむ、アウルはお主の魔力を食らいレベルこそ上がったがまだ赤子。もう少し精神的にも肉体的にも成長せねばならぬのかもしれぬな』


「そ、そんな……あ!リン!リンの光の幻影魔法なら!」


 一瞬諦めかけた俺はリンが光の幻影魔法を使えることを思い出してリンに振り向いた。


「…………何よ裏切り者」


 リンがマーレさんに撫でられながらも顔を上げ、恨めしそうな顔をしてこちらを見ている。


「り、リンさん?あのですね、私に男性化の幻影魔法を……そして出来れば細マッチョにですね?」


「な、ななな、何を言ってるのよ!レーテちゃん!!」


 鋭い眼光のマーレさんが怖い。


「レーテあんた……何で俺とか言ってるのかと思ったら男になりたかったの?でも残念ね!ウチは尻尾を隠す幻影魔法しか使えないわ!」


「子狐使えねぇ……」


「天才のウチが使えない!?」


 俺がぼそっと小さく呟いた一言、さすがは狐というべきか耳はよかったようで聞こえてしまったようだ。


「何でもないでーす」


「あんたねー!」


 マーレさんの腕の中で前足をぶんぶん振り回しているリン……。


「おい!お前ら進めよ!間が空いちまってるだろ!」


 騒いでいると、後ろから罵声が飛んできた。振り向くとスキンヘッドに金属鎧の冒険者風の男がイライラした顔でこちらを見ていた。


「あ、すいません」


 謝りつつ前を見ると、たしかに前の列は騒いでいるうちにほぼ無くなり、もう2組しか並んでいなかった。その代わりに後ろには10組以上の列があったのだが。


「たくよぅ、横入りされたらどうすんだ。俺等はくたくただから早く宿でゆっくりしたいんだよ」


 スキンヘッドの男が文句を言っていると、後ろから青いローブを着たいかにも魔法使いという若い女が男の横に出てきて男の頭を殴った。


「いてぇな!おい!」


「うるさいね!優しく教えてあげたらいいじゃないか!」


 男は後頭部を抑えながらも「けっ」と言いながら女の後ろに下がっていった。


「ごめんなさいね?こいつ悪い奴じゃないんだけど短気なのよ。ほら、前の人達が終わったら貴方達の番よ」


「いや、俺達が騒いで気付かなかったせいだ。ありがとう」


「小娘のくせに男みたなしゃべり方しやがって……いてぇ!」


 門の前に進むと丁度前の商人の馬車が街の中に入る所だった。


「よし、次はお前達だな。カードを……ん?フクロウと狐?テイマーか?」


 衛兵のおっちゃんは俺とマーレさんのカードを受け取りながら、アウルとリンを見て難しい顔をしていた。


 テイマー、魔物使いとかそういうのがいるのか。エスタールの街じゃ別に何も言われなかったけど、王都なんだしそのへんきびしいのかな?


「そうです。ペットみたいなものですけど」


 俺は軽くそうですよー。と自然体で対応した。


「そうだな。こんな小動物みたいな魔物で何か出来るわけでもないか。でも騒ぎは起こさないように躾けとけよ」


「ふぐ!」


 変な篭った声が聞こえて横を見るとマーレさんが笑ってリンの口をわしづかみにしていた。


 衛兵のおっちゃんの言葉にリンが文句でも言おうとしたんだろうな……。ナイスマーレさん。


「AランクとCランク冒険者!?荷物も……特に無さそうだな。ほら、カードは返すぞ。通っていいぞ」


 衛兵のおっちゃんが俺達のランクに驚いたようだったが、特に何を言うでも無く門を通してくれた。







「さすが王都、お店が多いなぁ。はふはふ」


「そうね、エスタールもなかなかだったけど、やっぱり王都には勝てないわね~。はふはふ」


 少し暗くなって来た頃、俺達は屋台で魚の串焼きを買って頬張っていた。白身の魚に塩をかけただけというシンプルな物だが、海が近くて新鮮なためか十分美味しかった。


「お肉……はふ、あつ!」


 魚に1匹ご不満な奴も居るみたいだが、じゃあ、食べないというのは違うらしく右手に自分の、左手にリンの魚を持ち頭に掲げ、リンは俺の頭の上で魚を食べていた。


 ちなみにアウルは夜行性のはずがフードに入って寝てる……。何でこいつら揃って高い所が好きかな……歩くたびに魚の身が落ちてくるし……。


「ここよここ!そんなに高くないけど、しっかりした宿なのよ」


 マーレさんが王都へは来たことがあるということで、宿をマーレさんに丸投げした俺の前方には、屋根から大きな木が2本飛び出した3階建ての綺麗な宿があった。


 カランカラン!


「緑の寛ぎ亭よ!ほら、中にもいっぱい植物が置いてあるのよ~」


 マーレさんの言うとおり、宿の中には沢山の植物で溢れていた。というか壁にもツルが張り付いてるんですけど?受付横の木とかコレ屋根から出てた1本だよね?自然重視しすぎじゃないか?


 壁のツルや花、受付横の大きな木などを見ていたら受付の人が声を掛けてきた。


「いらっしゃい!ってマーレじゃん。久しぶりね、あら、そっちの子は?可愛い……人形みたいね。まさかマーレの子……?」


 受付はマーレさんと同じくらいのまだ若い茶髪のポニーテイルのお姉さんだった。


「レーテちゃんならそれでもいいけど……残念ながら違うのよ」


 え?怒る所じゃないの?


「レーテちゃんね。私はサラ、よろしくね。で、泊まりよね?1泊、朝夕2食付きで2部屋なら12,000ギール、2人部屋なら10,000ギールよ」


「あ、じゃあ、別々の2部屋で...」


「2人部屋よ!」


 俺の言葉を遮りながら2人部屋を声を大にしているマーレさん……。いや、いいけどね?


「はいはい、2人部屋ね。1泊で10,000ギール」


「うーん、じゃあ、とりあえず3泊で!」


 そう言いながらお金を30,000ギール、銀貨6枚取り出して受付に置くと……。


「レーテちゃん!私が出すわよ?」


 マーレさんが、急いで銀貨を6枚出していた。


「そりゃ大人が子供に奢ってもらっちゃダメね!」


 うんうん、とサラさんもマーレさんの銀貨を受け取ろうとしている。


「いや、せめて自分の分は出させて!俺も冒険者何だから!」


 俺が銀貨3枚を押し付けると渋々という感じでマーレさんも受け取ってくれた。


 よかった、女性に奢ってもらっては俺は男じゃ無くなってしまう!細マッチョを目指す俺は女性の奢りなど許されない……いや、お金を出させるだけでもダメじゃないのか?細マッチョを目指す者としてどうなんだ……。


「はい、コレ鍵ね。部屋は2階の角部屋の205よ。で、そのペット達はご飯いる?」


 俺が思考に耽っている間にマーレさんが鍵を受け取っていた。


「あ、こいつらのご飯はこっちで...」


「ウチもご飯いるわよ!」


 たしたし!と前足で俺のでこを叩くリン。いい加減頭から下りないですかね……。


「この子狐の分だけお願い」


「その狐ちゃん……しゃ、しゃべるのね。フクロウも?」


「ホーホーホーホー?」


 何となくわかるぞ。アウルだからな……「しゃべれないよ?」とかだな!


『「あの枝止まっていい?」だな……』


 ……………………。


「そうよね、そんなにしゃべる魔物が居るわけ無いわよね、3人分ね。まあ、そんな食べないだろうし子狐の分はサービスしといてあげる。もうご飯食べる?」


「……うん、お願い。アウルは好きな枝に止まってろ!」


 そう言うとアウルはフードから飛び立ち、受付横の大きな木の枝に止まり毛繕いを始めた。


 食堂のテーブルに座り鍵をおばちゃんに見せると少ししてご飯が来た。


 パンと色はクリームシチューのようだけどトロトロでは無くサラサラのスープ、そして……コレは伊勢海老とちゃいますのん!?それかロブスター!?半身のエビが!


 ふむむ!塩焼きだけど、この味は正に……アレ?伊勢海老って1回しか食べたことないからよくわかんないな……。


 でも、美味い、美味いな!甘くてプリプリした身!うん!最高のエビだ!うおおおお!!


「お肉……」


 儚い声が聞こえ、テーブルの横を見てみると半身のエビとスープの前で、リンが悲しそうに耳と尻尾をだらんと垂れ下げ料理を見つめていた。


 ……え?エビだぞ?でっかいエビだぞ!?何でそんな悲しそうな顔してるんだよ。俺はフォークを咥えながらリンの姿に驚愕していた。


「エビスか~、美味しいんだけどこのフォルムがちょっと苦手なのよね~」


 マーレさんまで何てことを!ってエビス!?恵比寿さん……。うん、コレはどうでもいいな。


 俺は空間収納から特大肉団子を皿に乗せてリンに出してやった。


「お肉っ!」


 ぱあ!と口角が上がり「いいの?食べていいの?」と耳も元気になり、尻尾をぶんぶん回転させてこちらを見てくるリン。


「ああ、お食べ。今の俺は非常に機嫌がいいからな。はっはっは」


「わーい!じゃあ、この気持ち悪いのあげる!」


 リンは鼻でエビことエビスの皿をこちらへ押し、「お肉ー!」と言いながら特大肉団子をガツガツと食べ始めた。


「何ですとっ!?」


「痛い!」


 あまりのことに、ばっ!と勢いよく顔だけ横に向けると、俺の長い髪が黒い塊となり横に座っていたマーレさんの後頭部に直撃していた。


「あ、マーレさんごめん。お、おい、リン!いいのか?エビスだぞ?本当にいいのか?食べちゃうぞ!?」


「うん、そんなのいらないー。はぐはぐ!」


「そんなのっ!?」


 バカな……エビだぞ?いや、まあいいか、リンは肉、俺はさらにエビスが食べれてWin-Winではないか!


 別にエビスが嫌いな人が居てもいいじゃないか、と納得して俺はエビスの皿を回収してテーブルの上に置いた。


「さあ!エビス頂こうじゃないか!」


 俺達の幸せなご飯タイムは始まったばかりだ!


 俺とリンは笑顔でガツガツとエビスとお肉を食べ、マーレさんはエビスをフォークに刺して眺めながら気合を入れて食べていたのだった。





作者の私自体通貨の価値を忘れていたので、後書きに書いておきます。

鉄貨10ギール、銅貨100ギール、銀貨5,000ギール、金貨100,000ギール、白金貨1,000,000ギール


ぎーるぎーる

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