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第十三話「魔剣と迷宮 -後編-」


「あ~、ビックリしたぁ。カッコつけてライトニングで殲滅したら白いモヤの嵐だもんな。あのお姉さん…俺のこと化け物とでも思っちゃったのかな?すごい顔してたもんぁ…」


 少し遠い目をしながら明るい迷宮の洞窟を走る。


『恐らく、あのモヤは魂の捕食者のスキル所持者のお主にしか見えぬから平気だろう。魔眼持ちなら見れるかもしれぬが』


「あ、そうなの?」


 よかったよかった……それにしても綺麗なお姉さんだったなぁ…。俺はさっきすれ違ったお姉さんの姿を思い出していた。


 綺麗だけどちょっときつめのお姉さんって感じだったなぁ…。腰までの燃えるような赤い髪、赤い瞳、少し焼けた肌、全身を手から足まで覆うちょっとピッタリめだが、格好良い金属製の真紅の鎧。しかし太ももの絶対領域だけは機動性を確保するためか隠れてない!だが、しかし!それがいい!!


 そして何より…鎧の上からでもわかる…あのおっぱい!…お話しないですれ違ったのは失敗だったかな…?


 そんなことを考えていると赤いクマの魔物が3匹こちらに気付き走ってきた。先ほどの反省を活かし、俺は大行列を作る前に魔物を処理することに決めた。


「アレでも試すか」


 俺はクマ3匹に右手を突き出し空間魔法で奴らを隔離、四角い結界に閉じ込める。動けない奴らにそのまま元素魔法を使い、その空間の中で水蒸気爆発を引き起こさせる。秘儀!セーフエクスプロージョン!!


 ドゴオオオオン!!すごい音が聞こえるがこちらに爆発の余波はない。空間魔法は斬り裂くだけではないのだ!


 ふふふ、説明しよう!水蒸気爆発って何かすごい強力そうだよね?と平原で練習して試してみたら、その爆発たるや恐ろしい威力だったのだ。


 地面はえぐれ、木々は吹き飛び。俺も吹き飛び…アウルなど大暴れである。俺の頭のアンテナが今までにないほど引っ張られた…アレは痛かった。


 その反省を活かし!作られたのがこのセーフエクスプロージョン!空間で囲いを作りその中で爆発を起こすのだ。そうすることで自然にも優しく。俺のアンテナにも優しい。素晴らしいのだ。


 さらには!この様な洞窟では火気厳禁!と言われるがこのセーフエクスプロージョン!なら洞窟でも安全安心!


 強いて言えば…魔石すら残さない威力ということだろうか?あの俺が作った雷の元素魔法、ライトニングも威力が高すぎて魔石はおろか塵も残らないんだよなぁ。


 どっちも規模は調節出来るけど、その範囲ごとの威力は変わらないから手加減という言葉とは無縁だからなぁ。


「さて、さっさと攻略して帰りますか」







 あれから1日ほどだろうか…俺は迷宮の洞窟を彷徨っている…。迷宮は道がいくつにも分岐していていくら進んでも似たような洞窟でココはどこだ!?という状態なのである。


 この1日、何百という魔物を元素魔法で葬ってきたが、魔物も徐々に大きく、見た目も恐ろしくなっていた。角が生えて爪が巨大で長く鋭利になった赤いクマ。全身に目玉を備え尻尾だけ鉄のように硬く黒くなった白い狼。攻撃するたびに手足が伸びてくるコアラ……。


 今もそんな化け物にライトニングをお見舞いして塵にして白いモヤを受けている最中である。


「奥には…進めてるよな?」


 心配になり声に出していると少し先に見慣れる地形が見えてきた。俺は期待してスピードを上げてそこに走り出す。


 洞窟の通路が切れた先は大きなドーム状の広間になっていた。直径は300mほどあるだろうか。高さも100mほどある。しかし、ドームには何も無く、その先に1つの通路が見えるだけだった。


「こんな大きなドームなのに、何も居ないのか」


 俺は少しガッカリしながらもドームに足を踏み入れる。すると、何も無かったドームの中央付近に魔力が溜まり固まっていくのがわかる。それは渦巻き、徐々に姿が構成されていく。


「何じゃこりゃ……」


『これは…魔物の発生現象だな。動物が魔力を多く取り込み魔物化する場合とこの様に魔力で1から作られる魔物がいるのだ。もしかしたら広間に入った瞬間に魔物を作り出し襲わせるトラップかもしれぬ』


 こうやって魔物は生まれるのか……。興味深く見ているとソイツは形成された。ソイツは体はまるで銀色の金属に見え、目には生気を感じないドラゴンであった。大きさは巨大で20mほどある。


『あれは、ゴーレムか?龍型とは珍しいな』


「ギャオオオオオオオオンッ!!」


「あれがゴーレム…?って何かあいつの叫び声ピリピリするな。とりあえず叫んでる間に先制攻撃するか」


 未だこちらを睨み雄叫びを上げているゴーレムに、俺はライトニングをお見舞いする。あの大きさだから気合を入れてゴーレムの姿が完全に隠れるほどの雷だ。轟音と共に雷はゴーレムを包み込みさらに後ろの壁までライトニングの雷がその空間を支配する。


 バリバリ…パリパリ……雷が止み、俺の右手からは雷の残滓が出ている頃。終わったか。と歩き出そうとした時だ。


「ギャオオオオオオオオンッ!!」


 ゴーレムは、形成された位置で無傷で吼えていた。


「いいぃ!?無傷ってマジカッ!?」


 今まで一撃の下で魔物を塵にしてきたライトニングだ。それを受け無傷のゴーレム…さすがの俺も驚いた。


「空間指定!セーフエクスプロージョン!!」


 すぐさま四角い空間でゴーレムを包み込み、中に特大の爆発を起こした。


 ドゴオオオオオンッ!!


「ど、どうですかね?」


 四角い空間を解除し煙が出る中…ゴーレムはズシン!と一歩前に出て無傷なその姿を披露していた。


「どうなってるのー!?何だよあの化け物!こ、凍らせれば!アブソリュートゼロ!全ては凍りつけ!」


 俺の周り以外のドーム全てを絶対零度で凍りつかせた……地面も壁も凍り、ドーム状は少し白い霧のようなものが出て白んでいた。しかし…ゴーレムだけは凍らずドーム中央に平然と存在していた。


「うっそーん……」


 ゴーレムは咆哮を上げつつ、首をうねらせドラゴンの顔をこちらに向けたかと思うとその瞬間、俺の視界を炎で埋まった。


「うおおっ!?」


 咄嗟に自分自身を空間魔法で四角く包み込んだ。ゴウゴウ……炎が一面に包まれている…。炎が止むとドームのこちら側半分の氷は溶けていた。


「広間の半分を焼くブレスってことか…?出鱈目だな!」


『広間全てを凍らせたお主が言うことか…?』


「う、うるさい!あいつは凍らなかっただろ!それにしても何だよこの化け物!正体見てやる!」


 あまりのゴーレムの化け物っぷりに奴を魔眼で見極めることにした。



名前:メタルゴーレム

種族:ゴーレム(龍)

性別:無

Lv:120

魔法適正:火、風、龍

スキル:物理半減☆、魔法無効☆、頑丈Lv8、硬質化Lv7、威圧Lv5、自己再生Lv5



「うげー…めんどくさそうなスキル持ってるよ。ん?待てよ。魔法無効見たし俺もあのブレス効かないのかな!」


『いや、☆付きは特殊スキルだ。特殊スキルは強欲の魔眼を持ってしても無理だ。あれは見て習得出来るものではない』


「ぐぬぬ…とりあえず殴ってみるか。アウル、接近戦するから離れてなさい」


「ホーホーホーホー」


 アウルは俺のフードから飛び立ち、地面に降り立つと毛繕いを始めた。そこに俺は空間魔法で四角いバリアを張る。


「じゃあ、行きますか!」


 俺は全開でメタルゴーレムに疾走する。俺はメタルゴーレムの右側後方に回りこみ、右後ろ足を殴りつける。


 ドガン!ビキビキ…。


 全力で無かったとはいえ正面が少し崩れ、周りに少しひび割れだけとは想定外だった。これじゃあ全力でも完全に砕けないんじゃないか?ええい、もう1発!


 そう思って振りかぶっていると尻尾の薙ぎ払いが俺を襲う。咄嗟にジャンプし避けるがメタルゴーレムは器用に一回転して、そのまま空中に居る俺を再度尻尾で薙ぎ払おうとする。


 尻尾ごと消滅させてやる!と思い俺は前方に空間魔法で黒いモヤを作り出すがメタルゴーレムの尻尾はそのモヤをすり抜けてきた。


 あ、そっか。魔法無効か!と気付いた時には腹に尻尾の薙ぎ払いをくらい、俺は後方100m以上後ろにあったはずの壁まで吹き飛ばされていた。


「くっそ…魔法はダメ、打撃も効きにくい…ってあー!殴ったとこがもう治ってるし!武器で斬り刻むか…でかいのがいいな」


 空間収納からバルムンクを取り出す。それは黒い両刃の両手剣、所々に赤い宝石が取り付けられており、大きさは2mほどあるアーティファクトの武器だ。


「使ったことないけど魔法が効かないんじゃ素手よりマシだろ」


 俺はバルムンクを右手で持ち身を低くし疾走した。一瞬で奴の頭の下に移動する。


 メタルゴーレムは今度は反応し、右前足で俺を叩き潰そうとしてくる。しかし、それをバルムンクを両手持ちし、叩き斬る。


「ギャオオオオ!!」


「さすがアーティファクトだな!斬れ味抜群だ」


 右前足は空中を飛び、次に俺は振り下ろしたバルムンクをそのまま利用し、そのまま振り上げメタルゴーレムの胴体を斬り裂き距離をとった。


 メタルゴーレムはグルウ!と吼えているが傷はシューシュー言いながら回復しようとしている。


「うーん、頭の中の魔石を狙うしかないかな?とりあえず首を斬り落とすか」


 そう思い走り出そうとした瞬間、メタルゴーレムは巨体を飛び上がらせた。そしてこちらに迫り尻尾でムーンサルト攻撃をしてくる。


「んにゃろー!」


 俺は迫る尻尾を横なぎで斬り裂いた。…それにしても剣がうまく振るえる気がする…剣をまともに使ったことがない俺がこんな綺麗に迎撃出来るものなのか?


『恐らくあの女を見たからだな。なかなかの剣技であったからな』


 あ!あの赤いお姉さんの戦いを見たからか!次あったらお礼言うべきかな。


 尻尾が地面に落ちた時、俺は飛翔の指輪で飛び、さらに飛ぶ方向に引力、足元に斥力を発生させ高速飛翔で空を飛んだ。そしてメタルゴーレムの後ろに回りこみ翼に2撃。翼は根元から斬り離され、メタルゴーレムは悲鳴を上げながら地面に落下する。


 そのまま落ちるメタルゴーレムに高速飛翔で近づきその首を切断した。


 ズズーーーン!


 落ちた巨体と頭、首の傷がシューシュー言っている。


「な!そこからも回復するつもりか!」


 驚きながらも急いで近づきメタルゴーレムの頭を縦に真っ二つにする。すると魔石も壊せたようで首の音も消えた。白いモヤが俺に飛んでくるから倒せたようだ。


「ふー、めんどうな魔物がいるもんだなー」


 バルムンクを空間収納にしまい、アウルを頭に回収して俺は通路から広間を後にした。





 メタルゴーレムを倒してさらに2日後…俺はまた大きなドーム状の広間に来ていた。


「……何か見たことある広間ですね。気のせいですかね…」


 メタルゴーレムの死体こそ無いが、俺が尻尾に吹き飛ばされ崩れた壁…によく似た壁がある…いや、すごく似ている。


『これは…もしやお主…出口を間違って入りぐ』


「やめて!言わないで!!」


「ホーホーホーホー」


『「ご主人、方向音痴」と…』


「きーこーえーなーいー」


 俺は耳を塞ぎこいつらの言葉から逃げる。


「もしかしたらだ…もしかしたらここは…俺が戦った場所なのかも知れない…でもしかし!もしそうならここにあのメタルゴーレムの死体があるはずだ!無いだろ!無いからここは違う場所に違いない!」


『……迷宮では死体は一定時間で魔力に変換されるのだ。そしてそれがまた魔物となる』


 俺は無言で目を瞑り広間の真ん中でたたずむ……そして!


「よっし!今メタルゴーレムも倒したしあの通路から先に進もうか!」


 良い笑顔でこの2日間違って戻って彷徨ったことを無かったことにした。




 ドーム状の広間から新しい通路に向かうとそこは階段になっていた。階段を下りていくと大きな空間があった。そこは先ほどのドーム状の整えられた広間と違い、ただの洞窟が広がっただけの空間という所だった。

 そこの中心には石造りの神殿のようなものがあり、さらにはそこには大勢の人だかりがあった。


「人型の魔物…じゃないよな。明らかに冒険者っぽい姿してるし。あ~あ、先越されちゃったかぁ」


 俺は少しガッカリしながらも人だかりに近づいていった。


「む?こんな所に子供?」


「ナンダァ?新種の魔物か?」


 2人の冒険者がこちらに気付いたと思ったら、金髪のヤンキー兄ちゃんが俺に向けて剣を抜いた。


「違います!冒険者です!」


「はぁ?そんなガキの冒険者が居るわけねぇだろ!見ろよ!あのフクロウはファントムアウルだぜ!魔物と一緒なんだ。このガキも魔物だろ!」


 ヤンキー兄ちゃんは俺の容姿とアウルを見て警戒してるようだった。周囲もざわざわしてるし、どうしよう!


「待て、ベルアード。皆も落ち着け。お嬢さん、冒険者ならカードを持ってるよね?こんな迷宮の奥地だ。一応確認も必要なのさ。ほら、僕はカイルと言う」


 銀のフルプレートの鎧に剣を腰に差し、大きめの金属製の盾を持った青い髪で青い瞳の爽やかそうなイケメンが少し離れた所から自分のカードを見せてきた。


 カイル・ダグラス、Sランク冒険者、レベル89…。俺は確認しつつカードを取り出しカイルに見せた。


「レーテちゃんね。へぇ、レベル31のCランク冒険者ね…。よくここまで来れたね?魔物は相当強かったはずなんだけどな…そのファントムアウルの幻影魔法か何かを使ったのかい?」


「えっと…企業秘密…です」


「ふ…秘密か。そうだね。女の子には秘密の1つや2つはあるもんだしね。それを無理矢理聞くのはダメだね」


「おい!カイル!ここまで来るガキなんて怪しいだろ!それにガキがレベル31ってありえねえぞ!」


 ベルアードと呼ばれてたヤンキー兄ちゃんは剣を振り、今にもこちらに飛び掛りそうだ。


「ベルアード、彼女はカードも見せた。子供だから怪しいってだけで襲うのはダメだ。それにもし僕らが襲われたらその時は倒せばいいだろう?それとも僕らのクランが負けるというのか?」


「……ちっ…わかったよ。でもガキ!変なことしたら叩っ斬るからな!」


 ベルアードは剣を鞘に収めて小石を蹴りながら後ろに下がっていった。


 クランね…たしかパーティが大きくしたような集まりだったかな。


「すまないね。そして残念だけど、少し僕達の方が早かったね。昨日ここまで辿り着いて、もう探索を終えて帰るところなんだ。レーテちゃんはどうする?一応あの神殿を探索して行くかい?神殿にあった物は僕達が回収しちゃったけど…それか一緒に戻るかい?」


 昨日か…出口さえ間違ってなければ俺のが早く辿りつけていたのか…。お宝が無いなら探索はいいかな。もう迷うのやだし…。


「あ、じゃあ、一緒に帰らせてもらっていいですか?」


「うん、いいよ。それじゃあ、皆に紹介しよう」





 地上に向かいながら話しを聞いたが、カイルさんのクランはカイルさんがリーダーで迷宮を専門にしたクランらしい。名前を迷宮騎士団。今回の攻略にはS~Bランクの21人で来たらしいから相当強く、大型のクランのようだ。


 この迷宮は思ったより魔物が強かったらしいが迷宮の守り手、ボスのようなものが居なかったらしい。きっとその分魔物が強かったのだろうと言っていたが…メタルゴーレムがボスだったんじゃね!?と密かに思っていた…超めんどくさかったもん!


 神殿にあったお宝を見せてもらったが、大きめの魔石が数10個、アーティファクトが2つ、ミスリルの塊などだった。


 見付けた2つのアーティファクトを魔眼で見たが、剣術Lv+2の剣と腐食無効☆、盾術Lv+2、頑丈Lv+5の盾だった。出口を間違わなければ…と思っていたが俺には興味が無い物だったのでよかった。


 迷宮の帰りはスムーズに進んだ。先行部隊が10人ほど先に進み魔物を蹴散らしているらしい。マッピングもしているらしく、そのおかげでこちらは迷うこともなく、さらには戦闘も無いというVIP待遇で地上に戻れた。


 地上にはカイルさんのクランの馬車が5台と馬車番まで居て、町まで馬車にも乗せてもらえるという、これまた至れり尽くせりの接待状態が続いた。


 町に戻るとカイルさんは冒険者ギルドに報告に行くと言うのでお礼を言い別れたが、何やら衛兵さんが1人慌てて走って行った。どうしたのかな?


 さて、とりあえずまずはご飯だ。今日のテジンの宿屋のご飯は何かな~♪


 そんなことを考えながら俺はご機嫌でテジンの宿屋に向かうのだった……これから起こる悲劇など知らず…。




窒素爆発……アレ?水蒸気爆発じゃね?ってことで直しました。

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