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第一話「魔剣の目覚め」

初めましてこんにちは。

9/15 少し読みやすく直しました。内容は変わってません。


 そろそろ起きないと……仕事が……でも目が開けられない……あぁ、眠い。ん……何か気持ちいい……体がぽかぽかする。


「もう少しだ!もう少しで完成する……フフフ。我の魔力を吸って強くなれ」


 そうそう、もう少し……もう少し惰眠をむさぼる時間を……。


 夢を見た……荒野のような場所、そこに金髪で赤い瞳、肌は少し焼けて、そして外国人のような顔の整った爽やかそうな好青年が立っている。


 黒い金属製の鎧を着ているが、彼には少々ごついデザインじゃないだろうか?肩にはトゲのような突起が出ているし、全体的に禍々しいだろう。もっと綺麗な、例えば銀色のフルプレートが彼には似合うと思う。


 適当に見た感想を考えていると、彼は腰の剣を鞘から抜いた。その剣は黒く、見た目は両刃で格好良い西洋の剣のようだ。片手剣のロングソードといえばこんな感じなのだろうか?


 しかし、おかしな点もある。剣身にはまるで血管がはりめぐらされているかのように赤い模様が浮き出ている。それに何といっても剣身の下、柄の鍔というところだろうか?その中心に赤い宝石のような目玉が付いている。


 黒い剣は抜いた青年はゆっくりと歩き出した。その先に目をやるとまるで今から戦争でもするような中世の軍隊が一面に存在していた。


 彼らはみな鉄の鎧のようなものを着ており、先頭の方には弓を持った兵や盾と槍、剣などを持った歩兵だろうか。奥には騎馬部隊のようなものや、ローブを着て杖を持った者までいる。その数は千なんてものじゃない数万単位で配置されているのではないだろうか。


 弓が無数に飛んでいる。炎の玉も無数に飛んでいる。何か竜巻のような風まで青年に向かっている。まるでゲームでよく見る魔法だ。


 こんな青年1人に軍隊で戦争みたいなことするなんて尋常じゃないな。頭がおかしいんじゃないか……そう思っていると、青年は剣を持っていない左手を掲げると、左手は光出し弓や魔法に向かって振り払うとその全てが吹き飛んだ。


 青年は笑っている。まるで小さな子供がおもちゃを見つけて遊んでいるようだ。彼が剣を1振りすると兵士が吹き飛んでいく。それも斬り刻まれてだ。


 まるでゲームでよくある無双ゲームのよう……いや、もっと酷い。1振りするだけで兵士が数百人は飛んでいる。


 斬り刻まれ吹き飛んだ兵士は体から何か白いモヤのような物を出している。それがあの黒い禍々しい剣に吸い込まれていく……。


 あぁ、また兵が吹き飛んでいる。最初は1人対数万なんて何の冗談かと思ったけど、予想とはまったく逆の蹂躙だ。


 あぁ……また眠くなってきた。夢の中なのにおかしいな……。視界がプツッと暗転した。







 夢を見た……頭が動物のようで巨体に鎧を着て武器を持った軍隊がいる。ゲームでいうオークとかミノタウロスとかいうんだろうか?また青年が黒い剣を振るっている……。

 

 夢を見た……炎を吹く赤いドラゴンを青年が斬っている……。

 

 夢を見た……今度は複数のドラゴンだ。青年は苦戦することなく斬り裂いていく……。

 

 夢を見た……黒く禍々しく大きなドラゴン……青年が何か言っている。


「邪龍よ。お前も我が剣の糧となれ!」


 そう言うと黒く禍々しく大きなドラゴンも斬り裂かれた。今度もまた白いモヤが黒い剣に吸い込まれていく・・・。


 夢を見た……どこかのお城だ。青年が地下に続く階段を下りていく。黒い、真っ黒な池の中心の丘。


 青年はそこに黒い剣を突き立て去っていく……。


「フフフ、存分に負の魔力を吸うがいい」


 青年の不気味な笑い声とコツコツという足音だけが暗い真っ黒の池に響いていく……。







 どれくらい寝ただろう。目を開けずに思案する。


 こんなに寝たのは大学に通っていた時以来だろうか。適当に勤められればどこでもいいと思って入った会社だけどブラックだよなぁ。今日の休みだって1月ぶりだもん。


 28才おめでとう俺……誕生日が休みなだけマシだと思うべきか。


 1人暮らしだから家族にも祝ってもらえないしな。


 それにしても28才か。昔はこのくらいには結婚して子供もいて幸せに暮らしているんだろうなとか思ってたんだが、現状ブラック企業で社畜で安アパートで1人暮らし。


 訪ねて来るのも1回り年の離れた従妹の綾乃くらい……あいつももう高1だし、いつまでもお兄ちゃんお兄ちゃん言ってる場合じゃないのになぁ。

 

 というか……もうおじさん秒読み待ったなしだろうに……いや、やっぱりまだお兄ちゃんでいいわ。


 はぁ、小さい頃はよかったなぁ。みんなの中心には俺が居た。俺が言うとみんなが着いて来た。自分は何でも出来ると思っていた。


 中学3年の時からか……ちょっとサッカーがうまくて顔も母似でよかったのでモテた。


 部活の大会でも3年目にしてやっと全国までいけた。自分は特別なんだと思った。


 全国大会1回戦、相手は初出場だったがぼろ負けした。0対5……俺はみんなからパスをもらって攻めたが何度もあっさりとボールを奪われた。


 もう……最後の方は俺にパスをしないでくれ……とも思ったほどだ。

 

 あれから俺は自分が特別なんかじゃない。平凡だ。平凡はそれなりに普通に生きればいいと思った。


 適当で良いじゃないか、それなりに楽しめばいい。無理をすることはない。人生楽しまないだけ損っていうからな。

 

 サッカー推薦を断り、適当に入れる高校に入った。彼女も出来たが長続きはしない。


 大学も2流のぎりぎり入れる公立のとこに入った。入った理由もまだ働きたくないからという残念な理由だが、フットサルのサークルにも入った。全力で遊んだ。遊ぶことにした。


 でも俺が満たされることはなかったなぁ。いつも俺はやり直したい。違う俺になりたいと思ってた。


 アニメやマンガ、ラノベはいい。やり直したいと思う俺を少しだけ満たしてくれた。


 やり直せるなら次はまったく違う世界がいいな。異世界ファンタジーとか。そして全力で遊び、楽しみたい。


 さてと、そろそろちゃんと起きるか。


 綾乃がしつこく休みはいつだと聞くから教えてしまったが……きっと今日も突撃してくるだろう。


 こんなおじさ……お兄ちゃんなど卒業して同年代の彼氏でも作ればいいのに。まあ綾乃と居るときはまだ楽しいんだけどな。


 そう思い、あの少々同年代より小さい綾乃が来ることを少し期待しつつ、目を開けようとした……。


 あれ?目が開かないんだけど?目の開け方ってどうやんだっけ……って俺は何を言ってるんだ!?

 

 俺はパニックだ。目を開けようとしたら目の開け方がわからない。何を言ってるか俺にもわからないが……って何だこのよく見るようなコピペもどきは!


 そんなふざけた自問自答をしてると何かが聞こえてきた。


『見るのではない。感じるのだ』


 何か渋い声で聞いたことがあるような、ふざけたフレーズが頭に響く。


『ふざけてなどおらんぞ』


 あれ、俺の考えたことばれてるんだけど。


『わしはお主の一部だからな。当然だ』


 俺の一部……?あんた誰だ?俺は多重人格じゃなかったはずだが……。


『ふむ、理解した。多重人格とは自分の中に複数の人格を作り出す行為か。わしは違うぞ?お主を作るために魂と力を吸収された邪龍と呼ばれた者。名をギルフィゴールという』


 …………は?作る?邪龍?何言ってんだこのおっさん……あ!まだ夢かこれ。目も開かないしな!


『作られ生まれたばかりで混乱しとるのか?それにしては饒舌か……。少しお主の中を見させてもらうぞ』


 何を言ってるんだ?作られ生まれたばかり?


『なるほどな。珍しい運命の持ち主じゃなぁ。上村剣弥よ』


 お前、俺を知ってるのか!?


『お主の中を少し見たからな。別世界で生き、そして死んだ魂がそのまま記憶を持ち剣に宿るなど……聞いたことが無かったので驚いたぞ。いやはや、生き物であっても聞いたことが無いのに物に宿るとはな』


 別世界?死んだ?剣?どういうことだ?


『落ち着け、この世界はお主の生きた地球ではない。この世界はエルグレッド。さまざまな人種、魔物が住み、魔法という概念が存在する世界。お主は27年活動し28年目の前日に過労で死んでおる。この世界では剣だな。強く自分の存在を確認してみることだ』


 過労……別世界……ちょっと待てよ……。


『ほれ、自分の存在を認識してみろ。お主なら出来る』


 何だよ、夢じゃ……ないのか?


 そう思ったら頭に情報が流れてくることがわかった。理解が出来る。自分は剣だ……それも相当強い力を持っている。


 …………理解した。ちょっと信じられないが俺は剣みたいだな。


 やり直したいと思ってたからかなぁ……過労死については知らんが寝てるときに死んだのか?情けないなぁ。


 綾乃が第一発見者になりそうなのが悪いけど……まぁいいか。


 そんな楽しい人生じゃなかったしやり直しでいいわ!俺ってあれかな?噂のインテリジェンスソードかな!しゃべれるのかな!


『ぬぅ、お主、理解したら軽いな。まさにインテリジェンスソードだな。しゃべり方も理解できるはずだが今はオススメはせん』


 何でだよ、面白そうじゃないか?


『この城には奴がおるからな。おっと噂をすればだな。わしは少し深く眠り存在の隠蔽をする。わしの存在の力はお主と違い少々ばれやすいのでな……』


 あ、おい!待てよ!


 今まで頭の隅にあった存在がひどく小さくなっていくのが感じる。


 渋い声のおっさんが寝ちゃったようだ。仕方がないので自分のことを考える。


 日本人からインテリジェンスソードかぁ。しゃべることは……うん、無理。しゃべるのは念話ってことか。


 移動は……空間魔法の座標固定と座標移動とか出来そうだな。というか魔法って……でも考えたら理解できちゃうんだよな。何でわかるんだ?


 ん、魔眼……それが俺自体を把握するのか。魔眼?目はどこだ!そうだ!そこだった!目よぉ~開け~~~!と唸っていると!


 …………開かないな!でも理解は出来た。どうやら俺は周りに魔力なるものをだだ漏れさせてるようだ。


 無駄!と思いきやそれを波で理解して地形や物などを視覚みたいに理解出来るみたいだ。


 理解すれば早いな。ほら!音も波で理解してこの通り!


 そう考えたら瞬時に情報が頭に流れてくる。剣だから頭なんてないんじゃね?とかそんなのは小さい問題だ!そう気にするな!


 うお!?目の前に何かおるぞ!……あれ?これ夢に出てきたイケメンの青年じゃね?金髪で赤目の……あのごつい鎧は着てないな……。


 それにしても質の良さそうな服着てるなぁ。中世の貴族様?みたいだ。


 じゃあ、あれは夢じゃなくて……この好青年が俺ことインテリジェンスソード……いや!聖剣の持ち主か!


 聖剣かぁ、格好良いな!夢じゃちょっと彼怖かったけど魔物かな?いっぱい倒してたし勇者様かもな!


 軍隊も反乱軍とかかなー。厳ついおっさんいっぱい居たし。


 そんなことを考えていると青年がニタァと笑い出した次の瞬間……。


「フハハハハ、完成だ!この魔力!素晴らしい!この魔剣ならば人間共、そして勇者を滅ぼせるぞ!」


 え……?魔剣の方っすか……?というか人類と勇者滅ぼすとか!怖いんですど!


 あ、イケメンさんって、もしかして魔王様の方ですかね?あぁ!よく見たら頭に2本角が生えとるでこの人!


 魔王様は俺を丘から引き抜き橋を渡り、黒い池から移動する。長い石作りの螺旋階段をゆっくりと上り城へと向かって歩いていく……。



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