3つめのお話し
3つ目のお話し 《冬が来る前に》
だんだんと、空気が冷たくなってきた。 お父さんと、お母さんは、僕たちが眠っているベッドの木の皮を、もう少し取ってこようかと、朝からソウダンしていたよ。
僕とお兄ちゃんは、毎朝かならず、オニグルミの木の森まで、出かけているんだ。
昨日も、その前も、途中の小川には、赤いモミジの葉っぱや、黄色いイチョウの葉っぱが、いーっぱい!流れてきているんだ。 とっても、キレイだよ。
クルミの実も、食べきれないくらい、取れるようになったんだ。 だから、いつも、お腹いっぱい食べてくるんだよ。 えへへ、とっても、しあわせ。
クルミって、どうして、あんなにおいしんだろう?
今日もお兄ちゃんと、くるみの森まで行ってくるんだ。 いくつくらい、食べられるかな?
小川をとびこえて、クルミの森へ行く途中に、お空の雲が、おおくなってきちゃった。
「あれれ? なんだか、しめった匂いがするね」
僕は、枝から枝へ飛び移るのをやめて、お兄ちゃんに言った。
「雨、ふりそうだ」
お兄ちゃんも止まったけど、すぐにまた、つぎの枝へピョンって飛んだ。
「ねえ、今日は帰ろうよ?!」
大きな声で言ったんだけど、お兄ちゃんは、どんどん先へ行っちゃった。
「へーきだよ! 雨、ふる前に帰ってくれば!」
お母さんに、一人で行っちゃダメだって言われていたから、僕はお兄ちゃんのあとを追いかけたよ。 だけど、ほんとうは、すぐに帰りたかったんだ。
だって、僕はお母さんから、よく、かんがえてって、おねがいされていたから。
クルミの森へつく前に、ぽつん、ぽつん、って、雨がふってきちゃった。
「ねぇ!お兄ちゃん!!」
もう1回、大きな声で、お兄ちゃんをよんだけど、お兄ちゃんは、止まってくれなかった。
「これくらいなら、へーき、へーき!」
そう言って、どんどん、先の枝へ飛び移って行っちゃった。
だんだん、雨がつよくなってきたよ。 ピョンって、つぎの枝に飛び移ったら、足がすべっちゃった……!
「あわわわ!」
雨で枝がツルツルする。僕はどんどん、飛び移るのが遅くなっちゃったんだ。
やっと、お兄ちゃんに追いついて、クルミの森へついたけど、お兄ちゃんが見つからない。 僕はあわてて、茶色くなってきた、葉っぱの向こうがわを、さがしてみたよ。
僕たちの体は、木の皮や、秋の葉っぱと、そっくりな色だったから。お兄ちゃんを、さがすのは、タイヘンだった。
すべらないように、気をつけながら、いくつも枝をけった。
「あと、もう少し……」
お兄ちゃんの声がした。 僕は、声のする方へ、行ってみた。
少し、とおい所にある、オニグルミの実を、お兄ちゃんはイッショウケンメイ、取ろうとしていたんだ。雨で、枝がツルツルだから、ちょっとずつ、ちょっとずつ……。
枝の下にある、大きな川の水が、いつもより、いっぱい流れていた。
「お兄ちゃん、あぶないよ!」
僕は、つい大きな声で、言っちゃった。 そしたら、僕の声におどろいて、お兄ちゃん、足がすべっちゃった!!
「うわ!!」
「お兄ちゃん!!」
僕の目の前で、お兄ちゃんは、枝からすべって、川に落ちちゃった!!
「お兄ちゃん!」
もう1回、大きな声でよんだけど、お兄ちゃんの声、きこえないよぉ!! どうしよう?!
僕は、あわてて、木から地面におりた。 枝から枝へ飛び移ったら、きっとでまた、ツルツルすべって、あぶないと思ったんだ。
川の流れているほうへ、走って行った。 お兄ちゃんが、水の上に、顔を出した!
「…! リン…!」
ぶくぶくって、しながら、お兄ちゃんが僕をよんだ。
「お兄ちゃん!! どうしよう……?!」
お母さんと、お父さんのこと、思い出した。 どうしたらいいの?! お父さん、お母さん!
川に流されて、お兄ちゃんが、どんどん、はなれて行っちゃう!!
「誰かぁ!! タスケテぇ!! お兄ちゃんが、お兄ちゃんが……!」
僕は泣きながら、大きな声で、誰かをよんだ。 お兄ちゃんを追いかけて、イッショウケンメイ走った。
つまずいて、イキオイで、前にコロコロころがっちゃった。イタイよぉ……。
「おーい! どうしたんだ? リスの子供!!」
上のほうから、声がした。 僕はキョロキョロして、頭の上を見た。
今、僕が走ってきたほうから、バサバサって音がして、フクロウのお兄さんが、近くの木の枝にとまった。
「雨の音が気もちよくて、やっと部屋で眠りかけていたのに、お前の声がうるさくて、目が覚めちまったよ」
フクロウのお兄さんは、頭をクルクルと回した。
「あの、僕のお兄ちゃんが……、川に、落ちちゃって……、あの、タスケテください!!」
「なんだって?!」
眠そうだった目をパッチリ開いて、フクロウのお兄さんは、バサバサっと音をさせて、空へ飛んだ。
「まってな!」
そして、川の流れていくほうへ、スゴイ速さで飛んで行った。 僕も、追いかけて、走っていった。
フクロウのお兄さんは、ものスゴク速くて、追いつくことは、出来なかったけど、チョットとおくで、川に向かって、真っ直ぐ下りていくのが見えた。
水しぶきが上がって、バシャッって音がして、また空へ飛び上がっていく。
「あ! お兄ちゃん!!」
フクロウのお兄さんは、お兄ちゃんを、シッカリとつかんでいたんだ!
……スゴイ!!
そのまま、クルリと向きを変えて、僕のほうへ飛んできた。
僕は、思いっきりジャンプした。 ピョン、ピョンって、なんかいも、なんかいも。
フクロウのお兄さんが、お兄ちゃんをつれて来てくれた。 地面にお兄ちゃんをおろして、チョンチョンって、少しだけ、お兄ちゃんのお腹をつついた。 お兄ちゃんは、目を覚ました。
「お兄ちゃん! よかった!!」
お兄ちゃんは、すぐに起き上がって、体をブルブルってして、水を飛ばした。
「どうやら、何ともないみたいだな」
フクロウのお兄さんは、そう言って、僕たちをもう1回、シッカリと見た。
「お前たち、ゲンタさん家の、ハルとリンか?」
「うん、そうだよ。 お兄さん、僕たちのお父さん、しっているの?」
「オレのオヤジさんが、ゲンタさんの友だちなんだ」
お兄さんに言われて、僕はお兄ちゃんと顔を見あわせた。
「どうやら雨も、ひどくなってきそうだ。 家まで、送って行ってやるよ」
そう言って、僕とお兄ちゃんを、背中に乗せてくれた。
「落ちないように、シッカリと、つかまっているんだぞ?」
バサバサって、大きな羽の音をさせて、フクロウのお兄さんは、空へ飛び立った。
「うわぁ…! スゴイ! はやい!!」
雨が体にぶつかってきたけど、そんな事は、あんまり気にならないくらい、スゴク気もちよかったんだ! お兄ちゃんも、スゴイ、スゴイって、なんども大きな声で言っていたよ。
いつもの半分の時間で、お家についちゃった!!
お家のある木の枝に、僕たちをおろしてくれた。
「あの、ありがとうございました」
僕とお兄ちゃんは、やっとフクロウのお兄さんに、お礼を言った。
「ハルはワンパクだって、聞いていたけど、あんまりムチャなこと、するなよ? じゃあな」
お兄さんはそう言って、すぐに飛んで行っちゃった。
「いや、ずいぶんと、ふってきてしまったな」
お父さんの声がして、僕たちは向きをかえた。
「お父さん、今、帰ってきたの?」
「二人とも、ビショビショね。」
お父さんの後から、お母さんも顔を出した。 僕とお兄ちゃんは、お母さんに抱きついた。
「お母さん!」
「コワかったよ!」
さっきまで、フクロウのお兄さんの背中で、とっても気もちがよかったのに、急にお兄ちゃんが川に落ちちゃったこと、思い出しちゃったんだ。
僕とお兄ちゃんは、お母さんに抱きついて、ワンワン泣き出しちゃった。
「あらあら、二人とも、どうしたの?」
取ってきた木の皮を、お父さんに渡して、お母さんは僕たちの頭を、なでてくれた。
お家の中で、今日あったことを、話したら、お父さんにおこられちゃった。
「雨の日は、枝がすべりやすくなっているんだ。ムチャをするんじゃない」
だって。 フクロウのお兄さんにも、同じことを言われたけど。
「とにかく、二人とも無事で、ほんとうによかったわ」
お母さんはそう言って、チョットだけ、泣いちゃった。
お兄ちゃんと僕は、お父さんと、お母さんにあやまって、いっぱい、ハンセイした。
おこられたより、お母さんが泣いちゃったのが、スゴク悲しかったんだ。
今日は、雨がふっていたから、夜もチョットさむかった。 こうやって、だんだんと、さむい冬が近づいて来るんだ。
そろそろ冬のご飯を、地面にうめはじめないとならない見たい。
明日、天気がよかったら、クルミをいっぱい、取っておこうって、思った。
実りの秋の、小さなお話し おわり
よんでくださって、ありがとうございました。
童話は、はじめて書いたので、よんでくださった方たちが、
どんなふうに思ってくれるのか、チョット、シンパイですが・・・。
よかったら、感想を、おしえてくださいね。
追記) 11月7日 少し、読みやすくなるように、改行をちょっとだけいじりました。
内容は、特に変わっておりません。 変更・更新は、これ以降、しないと思います。




