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05.エリシア、王宮侍女に困惑する



「・・・―――――で、やってしまった訳ですね?」

「・・・・・・はい、やってしまいました・・・」


 予定よりも早く、しかも顔色を変えて部屋に帰ってきたエリシアから訳を聞いていたマリーネは一通り話し終わった合間を見計らってそう言った。そのマリーネの冷めた第一声にエリシアも覇気のない声で答える。

 突っ込みはごもっともだ。当のエリシアだって自分が居ない間に勝手にそんな騒動起こされたら頭が痛くなっただろう。


「・・・まあ、やってしまった事はしょうがないですけど・・・―――これからどうします? 私が王子だったとしたら食事中にトイレに立つような女性、絶対忘れませんよ?」

「ですよねー」


 そんな女いたら僕だって忘れない。あの場にいた人物には多分エリシアという名前を覚えられてしまったと考えた方がいい。


「でも見捨てて置けなかったんだよ」

「それはまぁ、良い事したとは思いますけど」


 泣いてる子供は捨て置けない。エルトが暮らしていた村では年長者が年少者の面倒をみるのが当たり前だったから思わず体が動いてしまった。

 あの子供、トイレの前で世話を姉に押し付けて帰ってきてしまったけどちゃんと間に合ったのだろうか。


「ところで、王子はきちんと見合いをする、と言ったのですね?」

「え? あ、うん」

「じゃあ当初の計画のようにのらりくらりではぐらかそう、という訳にはいかなくなりそうですね・・・」


 エリシアの話の中で気になった部分を確認するとマリーネは右の人差し指を唇に押し当てるように俯いて小さく唸った。着替えないままソファに座り、マリーネにいれて貰った紅茶を飲んでいたエリシアもその台詞には嫌な予感を感じていたのだ。


「一応、ちゃんとダンスなどは出来ますよね?」

「ああ、うん、一応ね。記憶力は良い方だから」


 それがそもそもの要因だったのだし。

 幼い頃から大抵のことは一度見たら覚えられた自分の記憶力をあんなに恨めしいと思ったのはあれが初めてだった。一発で女性のダンスステップを覚えられなかったらきっとこんな話にはなってなかっただろうに。過去に戻ってカーティス家のくそ爺様の前で本気を出した僕の馬鹿っ!!とエルト自身をぶん殴りたい。


「ダンスするほど間近で顔を見られても大丈夫だと思う?」

「・・・・・・ま、まあ大丈夫なんじゃないですか?」


 一瞬の間の後、視線を逸らしながら呟くマリーネ。何その態度すっごく気になるんですけど!?


「やっぱり駄目って事!?」

「い、いえ。大丈夫ですよ? 貴方が思ってるほど男っぽくはないですからっ」

「言っとくけどこれバレたら連帯責任で君の首も飛ぶんだからね!?」

「大丈夫ですってっ 多少アレだなぁ~って思われるかもしれないですけど、仕草など見てたらちゃんと女性、ちゃんと女性ですからっ! お母様似で良かったですよね!?」


 煽り立てられた不安のままエリシアが突っ込んでみたらマリーネは力説するように無理やり納得させようとしてきた。

 実の子が言うのもなんだがあの美人の母親に? 君は本当に僕の母親を知っているのかい? カーティス家の屋敷にいる間、一度も顔を見たことないんだけど。

 エリシアの脳裏に疑問がちらほらと浮かんできたが結局深く突っ込まずに曖昧に頷くに留める。ココでの味方は彼女だけなのだからマリーネを信じる以外の選択肢はないだろう。


コンコンコン


 まるで会話の合間を見計らったように部屋の扉をノックする音が聞こえた。すぐに「はい」と返事をしながら扉へと向かったマリーネの横顔が助かったと言っていたような気がするのはきっと気のせいだろう。


「どなたでしょうか?」

「失礼致します」


 もう日も落ちて大分たち、流石に見ず知らずの女性の部屋を訪れるには不相応な時間になっている。不思議そうな顔で扉を開けたマリーネの脇をいきなり言葉と共に白い布がかけられたワゴンがぬっと出てきた。からりからりと小さな車輪の音を立てながらワゴンを押していた少女が部屋に足を踏み入れる。


「ちょ・・・っ なんですかいきなり」

「申し訳ございません。お言い付け通りお持ちいたしました」


 不意をつかれて進入を許してしまったマリーネの声に険が混じっていたが相手はちっとも悪びれた様子もなく平坦な口調で言葉を紡ぎながら部屋の中央に置かれていた大きなテーブルの前で止まった。黒にも見える濃い緑色の髪を後頭部で丸くまとめ、まだ草臥れていない茶色のお仕着せを着たまだ若い少女だった。

 突然のことにソファに座ったまま硬直していたエリシアもすぐにお茶も残りわずかなティーカップをサイドテーブルに置き、自分の格好と部屋の内部を確認しがてら立ち上がる。さりげなく横目で隣の部屋への出入り口にきっちりカーテンがかかっているのを視認してザッとチェックが終わり、目立たないように安堵の息を吐く。よし、何もマズイ物は表に出してない。


「なんの御用でしょうか?」


 優雅に見えるように、と指先まで意識しながらいきなり入ってきた王宮侍女の方を向くと彼女は藍色の瞳をワゴンの上に向け、そこに乗っていた大きな銀色のクローシュを持ち上げる。途端にふわっとおいしそうな香りが部屋中に広がった。銀盆の上に陳列されたものには見覚えがある。今日の夕食だ。


「ああ、それは・・・――――ごめんなさい、仕事を増やしてしまったでしょう?」

「別に構いません」


 途端に少女がやってきた理由を悟り、余計な手間をかけさせてしまった事に軽く謝罪するが少女の返答はやはり感情がこもってないような平坦な言葉だった。15,6歳くらいだろうか、まだ幼さが残る顔立ちはパーツ一つ一つが女性らしく柔らかく、笑えば可愛いだろうに妙に落ち着き払っているというか、反応が薄いというか。

 確認も何もなしにいきなり入ってきた少女の無礼にマリーネが不快そうな顔をしかめながら扉を閉めようとしたとき、閉まる寸前のその扉を忙しなく叩かれた。咄嗟に扉を外へと開け放つと何かがその板面にぶつかり鈍い音をたてる。


「あうっっ!!!」


 短い悲鳴を上げた後、手探りで扉を開けつつヨロヨロと姿を現したは先ほど入ってきた娘と同じお仕着せを着た少女だった。気まずげに取っ手から手を放したマリーネとエリシアの方に額を押さえたまま何度かペコペコと頭を下げ、先ほど入ってきた少女の方を向く。


「い、行くのが早いですよぉシオナさんっ お料理は私がお運びすると言ったじゃないですか」

「料理長には言いました」

「その前に私、ちゃんと言ってたじゃないですかぁ。ひどい、知ってた癖に」

「そんなに料理を運びたければニッチェル家ご姉妹の方を運べばいいじゃありませんか」

「うぅ~~~っ そんな問題じゃありませんっ」


 後から現れた少女はシオナと呼ばれた少女より2つ3つは年上に見えたが、子供が拗ねる様に唇を尖らせ、ふわふわと肩口にかかる軽そうな黒髪を振った。シオナと同じくらい新しいお仕着せをぎゅっと掴み、恨めしそうにシオナを見つめるエメラルドの瞳がパッチリと大きく瞬く。

 少女はそ知らぬ顔で持ってきた料理をワゴンの上からテーブルへと移していくシオナに部屋の前で数度足を踏み鳴らした。


「無視しないで下さいっ 私が、私がお世話をしたいんですっ! シオナさんこそニッチェル家の方々でいいじゃないですかぁ!」

「私もこちらがいいんです」


 え、何?このモテ?状態?

 いきなり眼前で始まった言い争いにエリシアの目が点になる。そんなエリシアと王宮侍女の二人を扉の傍で見ていたマリーネは疲れたように軽くこめかみを押さえ、少女に対して扉を押して心もち大きく広げながら視線を奥に流す。


「とりあえず入ったらどうですか」

「あ、はいっ 失礼しますっ!」


 マリーネの促しに少女は扉から手を放して室内に足を踏み入れた。

 ああ、なるほど。許可されてなかったからいつまでたっても部屋に足を踏み入れなかったんだな。と、エリシアが少女が廊下に立っていた理由を悟ったときにはもう少女はシオナの隣に立っていた。二人がかりだとすぐにテーブルの上に料理が並べ終えられ、シオナの視線がエリシアの方に向く。


「では、確かに料理をお持ちいたしましたので――」

「え、ええ。ありがとう」

「―――つきましては私をこの部屋付きにしてください」

「はい?」

「え?」

「えぇっ?」


 一言では終わらなかったシオナにその場の全員が呆けたようにその顔を見返した。扉を閉めた後、きびすを返してエリシアの隣に立っていたマリーネが何言ってんだこいつというような顔で視線を強くする。

 その中でもっとも動揺したのは遅れてやってきた王宮侍女の少女だった。銀盆の上に戻そうとしていたクローシュをわたわたと振りながら焦ったようにシオナの方を見る。


「ななな、何言ってるんですかぁっ そんなの勝手に決めちゃ駄目ですよぉ! こちらの方々はお部屋付きの侍女を必要としていないって女官長が言ってたじゃないですかっ!」

「連れがいるから、でしょう。でも一人くらい増えても構わないじゃないですか」


 ねえ、とシオナに真っ直ぐ視線を向けられ、それまで呆けて見ていたエリシアも即座に仮面をかぶり直した。勿論かまわないはずがない。そんな大きな親切はお断りだ。


「女官長にもお話したけれど、私にはもうマリーネがいるから必要ないわ」


 だから帰れ、と言外にこめてきっぱりと言い切るとマリーネと少女の空気が緩む。だがシオナの方は藍色の瞳でエリシアを探るように見つめながら自分の胸に手を当てた。


「私は候補者様達のお世話するためにこの王宮に集められた増員です。一応王宮内での必要な事は頭に入っていますのでお役に立てると思います」

「そ、それなら私でもいいじゃないですかっ シオナさんじゃなくてもいいじゃないですか!」


 断られても諦めるつもりがないらしい態度に、今度はシオナの隣にいた少女がエリシアの方を振り返った。両手を胸元で握り締めて、お願い、と言わんばかりだ。

 えぇ~なにコレ面倒くさい・・・・・・・・じゃなくて―――


「・・・え・・・えっと・・・何? なにかそういう、部屋付きにならなきゃいけいない、権力争い?、みたいな事が起こってるの?」


 何故か妙に必死な少女達に首を傾げるとエリシアの視線を受けたエメラルドの瞳の少女はびくりと体を震わせる。その隣でシオナが考えるように視線を左右に流した後、大きくひとつ首肯した。


「はぁ、えーーと・・・まあ、はいそれでいいです」


 いやいやいや、ちょっと待て。その返答はおかしいだろ!?

 やる気のなさそうなシオナの声にエリシアは胃だけでなく頭も痛くなってきた。近くで黙って聞いているマリーネの空気がだんだん威圧的になってきたのも気になる。


「―――いい加減になさい。これ以上の無礼は許しませんよ」


 怖いほど静かに放たれたマリーネの声に部屋に沈黙が落ちた。

 一番過敏に反応したのは黒髪の少女で、叱責された瞬間、ビクリと大きく体を震わせてマリーネの視線から逃れるようにシオナの背中に隠れる。シオナの方も少女にしがみつかれながら威圧感たっぷりのマリーネから視線を逸らして姿勢を正した。

 丁度マリーネはエリシアの斜め前に立っているからよくわからないけれど・・・どんな顔をしているんだろ、二人とも怯えてるんだけど・・・


「そのまま二人とも出て行きなさい。お皿は私が片付けます」


 言いながらマリーネが一歩足を踏み出すと、反射のように二人は一歩下がった。そのままカツカツとマリーネが近づくとその分だけ二人が下がる。

 とうとう廊下まで押し出された二人に扉に手をかけたマリーネが優雅に軽い一礼をしてみせた。


「必要ないものは必要ありません」


 そう言って扉を閉めたマリーネの顔がようやく見える。笑顔だった。怖かった。


「では夕食の続きをどうぞ。万一誰か来たら事ですからその後に着替えましょう」


 マリーネがエリシアの方を振り返ったときにはもう普通の雰囲気だったが、とても反論できる空気ではない。応接テーブルに備え付けられている椅子を引きながら、せめてもの抵抗としてギシギシと体を締め付けるコルセットを服の上から押さえて視線で訴える。


「せめてコルセットだけでも緩めたいんですけど・・・」

「・・・しょうがないですね。服のウエスト周りを破らないように気をつけて下さいね」


 弱弱しく訴えると苦笑するように形の良い眉を下げたマリーネは背中で止めていたエリシアのドレスの紐を解き、コルセットを緩めてくれた。途端にドレスの脇の部分がミシリと嫌な音を立てて突っ張る。

 どれだけコルセットで詰めてるんだよ、勘弁してよ・・・。

 思った以上に無体な事をされているようだ。考えたくはないけれどあのちょこちょこ起こる吐き気は結構重大な体の悲鳴なのかもしれない。

 まあ、だとしても結局この茶番が終わるまではどうしようもないのだけれど。


「マリーネは食事は?」

「ああ、私はもう食堂で食べましたのでどうぞお気になさらずに。色々お話も聞いてきましたよ」


 邪魔なレースの手袋を外しながら椅子に座って、そこでようやく気づいて尋ねると、マリーネは一緒に運ばれてきた水差しから水をグラスに注ぎながらエリシアを安心させるようにふんわりと微笑んだ。その後すぐに思い出し笑いするようにフフフッと小さく噴出す。


「あの王宮料理長さん、面白かったですね。挙動不審でチラチラと料理を食べてる人を眺めては周りのコックさんに怒られてましたよ。なんでも人の口に合うものが作れているかどうか不安なんですって」

「あ~・・・ほんとにあれが通常運行なのか・・・。腕は確かなのにトコトン自信がないんだなぁ」

「あの人、市井から王子の大抜擢でいきなり料理長になったらしくて、本当に自分がこんな所に居ていいのかって不安なんだそうです。周りの人に言わせれば、どんな料理法も瞬時に呑み込むし、どんな食材でも一発でおいしく調理するほどの腕前を持つ天才だから、未だにあそこまで腰が低いのはどうかと思う、って」


 ゆっくりと味をかみ締めるように燻製肉を咀嚼するエリシアの方を見ながら注ぎ終わった水差しをテーブルに戻してクスクスと笑うマリーネに、ふとした疑問が生まれた。

 母親から聞いた話では、確か―――


「確か王家の料理長は代々料理人の名門ナーヴス家からの排出じゃなかったっけ? 才能あるものが居なかったらわざわざ才ある者を養子にしてまで面子を保っていたんだよね? いきなり王子の抜擢でその伝統に横槍入れられたら激怒しない?」

「・・・・・・・・・それが――・・・」


 不思議そうに首を傾げたエリシアに不意に言葉を詰まらせたマリーネはもともと二人しか居ない室内で、それでも誰か居ないか警戒するように左右を見回し、上体を屈めるように水の入ったグラスをエリシアの手元に置きがてらその耳元にそっと唇を寄せる。


「実は・・・あくまで噂なんですが、・・・・・・――――先代の料理長が、王を毒殺しようとしたとか・・・・・・・」


 囁くにしてもあまりにも小さなその声は禍々しさを伴ってエリシアの耳に忍び込んできた。マリーネはすぐに体勢を元に戻して素知らぬ顔でにっこりと笑う。


「まあ、あくまで噂なんですけどね。面白半分にそういう不謹慎な噂が出回ったりしたそうです」


 一瞬で冷え込んだ空気を払拭するようにわざとらしく明るく言い放つとテーブルの上で食べ終えたお皿を回収し始めた。


「その先代の料理長は職を辞めさせられてから自殺してしまったらしくって、やっぱり問題にはなってるみたいですよ。面子というか、伝統がありますし。

 あの料理長の異常なまでの腰が低さも、もしかしたらそういう罪悪感、みたいなものなのかもしれませんね」


 言葉を紡ぎながら皿をきちんと重ね、ワゴンに積み込んでいたマリーネの表情が曇る。

 スープ最後の一掬いを口に運んだエリシアはワゴンを見つめたまま動作を止めたマリーネを不審に思いながら飲み干したスープの皿を持って立ち上がった。その音でハッと顔をあげたマリーネに不要だと手を振りながら自分で最後の皿を置く。


「どうかしたの?」

「いえ・・・・・・自分の所為で誰かが自殺してしまったりしたら、どういう気持ちになるのかと」

「さあねぇ。誰かに死なれたらそれだけで辛いんじゃない? やっぱり」

「そう、きっと辛いですよね」


 エリシアの言葉に小さく呟いたマリーネは小さく息を吐く事で気持ちを切り替え、脇においてあったクローシュを持ち上げてワゴンの上に蓋をした。黒い取っ手を両手で持ち、にこりと振り返る。


「では、私はコレを運んでいきますので。帰ってきてからドレスを着替えましょう」

「え・・・? あ、はい。なるべく早くお願いします・・・」


 動くたびにきしきしと破れそうな音を立てるドレスを押さえつつエリシアはワゴンを転がすマリーネを戸口まで見送った。




******




トントントン


 朝も早くからまた地獄のコルセット締めがおこなわれ、息も絶え絶えに椅子にしがみついていたエリシアの耳にノックの音が聞こえた。まだ夜が明けて一時間と経っていない。女性の部屋を訪れるには少々不自然な時間だ。

 なんだか軽いデジャヴを感じエリシアとマリーネは顔を見合わせた。嫌な予感しかしない。


「―――どなたですか?」


 昨夜と同じく扉を開けに行ったマリーネが薄く開いた扉を即座に閉めなおした。エリシアはその動作で嫌な予感が当たったことを確信する。


トントントン


「開けてください」


 再びのノックの音と共に扉の向こうから聞こえた声は昨晩聞いた声とそっくりだった。

 え? 何しに来たの? この娘。

 びっくりして扉を見つめるエリシアの耳に今度はまた別の声が聞こえてきた。


「やっぱり駄目ですよぅシオナさんっ」

「ルチル、貴方は部屋付きになりたくないの? 私はなりたい」

「・・・・・・え? あ、はい。そ、それはなりたいですけど、ですけどぉっ こんな事したって逆効果じゃぁ」

「こういうのは努力と忍耐とずうずうしさが必要」

「えぇ? そ、そうなんですかねぇ・・?」


 ぼそぼそと聞こえてくる内緒話に扉の取っ手を握るマリーネの手がふるふると震える。

 あ、ヤバイ。

 思うと同時にマリーネが思いっきり扉を開いた。ガンゴンッ!!と威勢よく何かにぶつかる音が二重奏で奏でられ、呻き声が追従する。



「必要ないと言ってるでしょう! 他所へ行きなさい、他所へ!!」



 まるでペットを躾けるかのようなマリーネの声が朝も早いうちからお城の中に響き渡った。


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