3章
1回目の暗殺から1週間が経ったそんなある日のこと。
ヴァルトフェルドが、こないだの大きな会議室に呼び出してきた。
「失礼します」
コーヒーは好きか。とヴァルトフェルドが、カップを持って聞いてきた。
「はい、好きです」
ヴァルトフェルドはニコニコして、コーヒーを注いでテーブルの上に置きその横に、さらにクッキーも一緒に置いた。
「砂糖いるか?」
「はい」
砂糖壺がテーブルの上に置かれ、その中からスプーン2杯砂糖を入れる。
これを書いてみないか。と革張りの本みたいなのを、近くに置いてあった鞄から出してきた。
「手記を書くんですか?」
ああ。とヴァルトフェルドは頷いた。
「わかりました」
コーヒーと一緒に出された、クッキーを食べると甘かった。
少しの間、コーヒーを飲みながらヴァルトフェルドと話し、自分の部屋に戻り机の前に座る。
そして、渡された手記帳の第1ページ目に自分の過去を、書くことにした。
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私の両親は実際にいない。
実際の父は、私が生まれる前に戦地で死んでいて、母は私が生まれたと同時に病気で死んだ。
だから、実際の両親と呼べるものいない。養子縁組に出され、それを引き取ったのが母の姉だった。
母の姉は日本に住んでいて、日本に戸籍をすぐに移した。
その生活は、耐え難いものだった。
毎日出る食事は、犬の餌のようだった。
3日間インスタント食品なんて普通だった。
1回だけ手料理が出たことがあるが、それはとてもひどかった。「パスタ」と言っていたが、味はなくパスタの原型さえとどめていなかった。
養父は荒瀬組によって蒸発し、その借金が半分の日本円で約600万が私が保証人になっている。
養母は私に多額の保険金をかけて、マフィアにその1/3を渡すという名目で契約したらいい。
そして、私は高校入学時に再びフランスに戻ることにした。二人には内緒で。
フランスに行くと、すぐに友達ができた。
友達の家は、フランス料理のシェフをやっている父と喫茶店をやっている母がいる暖かな家庭だった。
1年すごし、高校2年になったとき。ソレが起きた。
母が雇ったマフィアにより私は、危うく命を落とすところだった。
そのせいで骨肉腫が発見されるも、治療費が出せずに自ら死を望んだ。
そして現在になる。
1週間の間にいろんなことを見聞きしたが、これが実際だと思うと怖い。
今私がしていることは、いけないことというよりは、社会のために役立っているという自信がないけどなんか不思議な気分だった。
だって私は一回死んでも、こうして新しい命を得て生活してることが、とても不思議だった。
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“フィーネ”と書いて筆を止めたがかっこをつけて、あの場所で言われた「義体001」と書き足した。
窓を開けると、涼しい風が部屋に入り込む。
もうすぐ冬か。と呟く。
夕焼けがまぶしい。
そう見てると、マリアがご飯だよと、読んできた。
はい。と言って、ご飯を食べに行く。
ご飯を食べて新たな手記を書いて、窓を閉めてベッドに入る。
朝起きる椅子に座りボーっとしていると、ドアがノックされ「はい」と応えると、一人の少女が入ってくる。
「どうも、義体002のキリヤです」
「どうも、私はフィーネ」
よろしく。と手を差し出すと、キリヤは首を傾けた。
よろしく。とキリヤが抱き着いてきた。
この時、初めて文化の差を感じた。そして、これが〝ハグ〟というものだと、初めて知った。
お二人さん、食事だよ。と遠くでマリアの声がした。
「食事いこうか」
キリヤは頷いたので、手を握り一緒に歩き出した。
「マリア、お待たせしました」
「さっそくな良くなったんだね」
「キリヤ、フィーネ。今日の朝ごはんは、サンドウィッチよ」
「マリア、包んでもらえますか?」
いいわよ。とマリアはにこにこしてサンドウィッチを包み始めた。
「外に行きましょ」
施設内の生活してる寮から、少し離れた場所に小さな公園みたいな場所がある、そこで朝食を食べる事にした。