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零 深淵

それはある寒く、月の美しい夜のことであった。


鬱蒼とした黒い森の中を、三匹の茶毛の馬が駆けていく。乗り手はいずれも女性で、目も冴えるような美しい着物を纏っている。左側を走る女性は、黒くきりっとした双眸を後ろへ向けると、軽く舌打ちをした。


「しつこく追ってくるな……」

「しょうがないよ、しぶといのだけが取り柄なんだからさ」


右側を走る女性が、苦笑しながら言う。

朱色の留め具でまとまった長い髪が靡き、彼女のすぐ後を追う。


「そうだったな。にしても、何処まで追うつもりだ? このままじゃ馬が保たない」

「分かりませんわ。私達が『例のもの』を差し出すまでは暫く追ってくるでしょうね」


透き通るような美しい声で、真ん中を走る女性が冷静に告げた。両側の二人とは違い、髪を結い上げ髪飾りでしっかりと留めている。


「よっぽど朱雀が欲しくてたまんないんだね。あーあ、それなら私達が持っとくなんて言わなきゃよかった」

「何を仰っているのです、雨刃様。私達が持たなければすぐに奪われていましたよ」

「そりゃそうだけど、厄介事嫌いなんだよね」


雨刃と呼ばれた右側の女性は、言葉とは真逆に腰に刺さった刀をすっと抜いた。月光に照らされ、鉄色の刃が一瞬白に輝く。


「氷清、月光。此処は私に任せて。追われてるだけじゃきりがないわ」

「だが、雨刃……」

「何を渋ってるのよ! あんな奴に私が潰されると思う? それよりも朱雀を守る方が大事よ」


雨刃は言い、月光が脇に抱えている朱色の重箱に目をやった。金箔で美しく彩られたその中に朱雀がいる、と確かに聞いたのだ。雨刃のことが不安でたまらないのか、月光は眉尻を下げた。


「雨刃様、私は貴方が死んでしまったらどうすれば良いのか……」

「月光まで私を信じてくれないの? 安心して、危険を感じたら逃げるわ。さあ、早く!」


雨刃の力強い声に安心したのか、氷清と月光は頷くと馬の速さを上げていった。一人、刀を握った雨刃は手綱を引き馬を止める。

後ろから追ってくるのは血も涙も、心さえ失った人間の抜け殻だ。話が全く通じない上にとんでもない攻撃をしてくるのだという。雨刃は次第に高まってくる胸を抑えながら、暗鬱な森の先に目をやった。

氷清達にはああ言ったものの、確実に生きて帰られる保証などない。命綱などないのだ。だが、命に代えても朱雀だけは守らなくてはならない。

血と泥でまみれた世界に光を齎すと言われる存在――朱雀。

もし本当ならば、是非ともこの世界を綺麗にしてもらわねば。


「ちゃんとうまくやってよ、二人とも」


雨刃は子供のように歯を見せて笑うと、今来た方を逆に駆け始めた。

感じる、奴はまだ朱雀を追っている。次第にこちらにやってくる。木と木を飛び越え、毬のように跳んでくる。

知らぬうちに雨刃の喉が鳴った。刀を握る手にも無駄な力が籠もる。大丈夫。落ち着けば、後は馬さえ扱えれば――。


と。




「朱雀ヲ…渡セ…」

「!」




雨刃が振り返ったときには既に遅し。

黒い、影を立体化させたような物体が雨刃の背後に立ち、そして――。

初の小説です。これは中二で思いついた話なのですが……うまく書けるかどうか不安です^^;良ければおつきあい下さい。

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