砂地獄
単語→公衆電話、迷子札、砂時計
ジャンル→不思議系ホラー
「ばっちゃんがいなくなっただあ?」
「そうなんよ、これで今週3度目になるかねえ」
そんなにいなくなってんだったら、今更大騒ぎしなくてもいいじゃねえか。そう言うと、「こんなに長い時間いないのははじめてなんよ」と眉を下げて母ちゃんが言ってきた。
隣の浅山さん家の父ちゃんも、そのまた隣の畑の森川さん家の婿入り息子さんも、うちのばっちゃん探しを手伝ってくれているらしい。
「そんならうちが探さねえわけにはいかねえじゃねえの」
「すまんねえ、いつもなら公衆電話のところにいるんだけどねえ」
この田舎にある公衆電話といえば、うちから15分ほど歩いたところにあるアレか。もうすでに探したんじゃけどねえ、と手を頬に当てて困り果てた母ちゃんを横目に上着を羽織る。季節は10月。この時間に半袖で動き回るには少し肌寒い。
「んじゃ、ちょっくら言ってくるけえ。ばっちゃんの迷子札でも作っててくれ」
「はいはい、お願いしますよ」
上着のポケットに手を突っ込み、とりあえず公衆電話を目指して歩き始める。そこら辺の畑に倒れてんじゃねえのか、という疑いも捨てれないため、ズボンから携帯している懐中電灯を取り出し、電気をつけて照らした。
「おおい、ばっちゃん。いねぇのか」
畑からはうんともすんとも音は返ってこない。ここら辺は冬は何も育てていねえからなあ、人が倒れてりゃ影で分かるはずだ。足早に畑を過ぎていく。
「ばっちゃん、いたら声出せー」
ばっちゃんが行きそうなところと言えば、隣の家の浅山さん家かうちの畑ぐらいなもんだが、なんでまたこんな離れた公衆電話まで来るんだか。さっぱり見当がつかない。
懐中電灯をちらつかせながら男の早足で10分、公衆電話のボックスに辿り着いた。
ばっちゃんはいないが、別の人影があった。
黒い襟足の長いマントを着て、頭にも真っ黒なシルクハットを被っている。そんで背丈が妙に高い。
こんな田舎に、こーんなトンチキな格好したやつはいねえ。
何か知ってるかも知れねえと、ボックスのドアをガンガンと叩く。
「オイあんた、誰だか知らねえがうちのばっちゃんを知らねえか」
電話ボックスの扉がギィと開かれ、顔を覗き込むと「うおっ」と思わず声が漏れて後ずさる。
へのへのもへじだ。
よく見ると腕も足もカカシになってらあ。なんだぁこいつは。
訝しげに見ていると、後ろからドンと背中を押され電話ボックスに押し込められた。
「あ?」
誰だと振り返っても何も見えない、いや、違う。
砂が
さっきまでは確実になかった砂が電話ボックスのガラスを覆い、上からパリパリと落ちてきている。
まるで砂時計みてえな……。
んなこと言ってる場合か!
電話ボックスの扉をガンガンと殴るがびくともしねえ。
クソッなんだこれは!
「よ〜うこそおいでくださいました!」
この場にいるのは俺と、
「あなたも巻き戻しご希望者でございましょうか?」
奇妙な、カカシ。
なんだ、これは……?




