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第八話 揺れる決意

海上戦場から戻った控え区画は、ひどく静かだった。


勝ち残った者だけが立つ場所。

それぞれが、次の戦いに備えて息を整えている。


ユウは、欄干にもたれ、遠くの空を見ていた。


(……勝った)


だが、胸の奥は軽くない。


「考えすぎだ」


隣に立つマコトが、軽く肘で突く。


「勝ちは勝ちだろ?」


「……ああ」


それでも、視線は曇る。


「俺さ」


マコトが、ふいに真面目な声になる。


「もし負けたら……どうする?」


ユウは答えられなかった。


負けることを、考えていなかったわけではない。

だが、言葉にするほど整理できていない。


その時。


「……迷ってるんだ」


静かな声が、背後から聞こえた。


振り向くと、リオが立っていた。


白い道着。

銀髪が、風に揺れる。


「勝っているのに」


冷たい瞳が、ユウを捉える。


「それが、弱さだ」


マコトが眉をひそめる。


「言い方ってもんが――」


「違う」


リオは遮る。


「事実だ」


ユウは、視線を逸らさない。


「……それでも」


言葉を探す。


「守るために、戦ってる」


リオは、一瞬だけ目を細めた。


「守るものがある拳は、揺れる」


「だが」


一歩、近づく。


「揺れを受け入れられるなら、話は別だ」


それだけ言い残し、去っていく。


残された二人は、しばらく黙っていた。


「厳しいな」


マコトが息を吐く。


「でも……間違ってない気もする」


ユウは、拳を握る。


揺れ。

迷い。


(……それでも、捨てない)


別の区画。


影の中で、シズクが一人、座っていた。


拳を見つめ、ゆっくりと息を吐く。


(……過去は、まだ縛る)


だが、戦うことでしか、進めない。


レオは、端末を操作しながら、データを整理している。


(次の環境……火山地帯か)


視線を上げる。


「厄介だな」


そして。


高い場所。


カイゼルは、次の舞台を見据えていた。


赤く染まり始める空。


溶岩の気配。


「感情が、力を増幅する」


低く呟く。


「ならば、壊れるのも早い」


蒼空の拳舞は、

次なる局面へと進む。


揺れる決意を抱えたまま、

拳は、さらに熱を帯びていく。

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