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第七話 観る者

廃墟都市の外れ、高く崩れた塔の上。


そこに立つ影は、一つだけだった。


カイゼル。


黒衣を風に揺らし、両腕を組んだまま、眼下の戦場を見下ろしている。

戦いの音も、叫びも、ここまでは届かない。


だが、全てが見えていた。


拳の軌道。

呼吸の乱れ。

迷いの兆し。


「……未完成だ」


低く、独りごちる。


視線が、動く。


風を纏う少女。

笑顔の青年。

影を操る女。

計算で動く男。

感情を捨てた青年。


そして――


「守る拳か」


ユウを捉えた瞬間、わずかに目を細める。


「最も弱く、最も強い」


カイゼルは、かつての自分を思い出していた。


守るものを持ち、

それを失い、

力だけを残した男。


「……まだ、早い」


そう呟き、視線を外す。


その頃。


ユウは、次の転送を待っていた。


一回戦は終盤。

勝ち残った者たちの数は、すでに絞られている。


足元の円が、再び光る。


(……場所が変わる)


視界が歪む。


次に現れたのは――


海。


どこまでも続く水面。

足元は、巨大な浮遊リング。


海上戦場。


波が揺れ、足場が不安定だ。


「やりづらいな」


マコトが、肩を回す。


「でも、派手だ」


水飛沫が上がり、視界が遮られる。


向かいに現れたのは、短く切った髪の男。

動きは慎重で、無駄がない。


「水の上か……」


男は、低く構える。


「面白い」


開始。


波が揺れる。


足元が、不安定。


ユウは、重心を落とす。


(……焦るな)


男が踏み込む。


水飛沫。


視界が一瞬、白くなる。


その中で、気配を読む。


拳が来る。


ユウは、わずかに身体を傾ける。


心象拳。


直接打たず、流す。


相手の動きが、遅れる。


波に足を取られた一瞬。


ユウは跳ぶ。


――飛燕蹴。


水面を切り裂く一撃。


衝撃と同時に、水柱が上がる。


男はバランスを崩し、リングの端へ転がった。


勝敗は、明らかだった。


光の円が消える。


「……勝者、ユウ」


ユウは、荒い息を整える。


足元の水が、静かに揺れる。


(……環境も、拳の一部だ)


その理解が、胸に残る。


遠くで、雷鳴。


別のリングでは、リオが拳を振るっていた。


――蒼閃裂破。


蒼い閃光が、水面を裂く。


勝敗は、一瞬。


アイリも、風を操り、

舞風脚で相手を翻弄している。


一回戦が、終わろうとしていた。


勝ち残った者たちが、

次の舞台へと進む。


そして、そのすべてを、

ただ一人、観る者がいる。


カイゼルは、ゆっくりと目を閉じた。


「……次だ」


蒼空の拳舞は、

確実に、深みへと踏み込んでいた。

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