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第六話 静かな雷

廃墟都市の一角、崩れた高架の下。


マコトは、肩を回しながら前に出た。

茶髪の奥で、瞳が静かに研ぎ澄まされている。


「さて……」


向かいに立つのは、痩身の男。

動きは軽いが、目つきは鋭い。


「楽しそうだな」


男が皮肉交じりに言う。


「戦いが、そんなに好きか?」


マコトは笑う。


「嫌いじゃない」


光の円が、足元に浮かぶ。


開始。


男が先に動く。

鋭い連打。


マコトは、真正面から受け止めた。


「っ……!」


衝撃が走るが、退かない。


(……まだだ)


一歩、踏み込む。


拳に力を込める。


――笑撃拳。


衝撃と同時に、マコト自身の笑い声が響く。


「ははっ!」


拳を受けた男の動きが、わずかに乱れる。


「なに……!?」


その隙を逃さない。


回転。


――旋風脚。


風が巻き起こり、男の足が浮く。


叩きつけられる音。


勝負は決した。


光の円が消える。


「……勝者、マコト」


マコトは、深く息を吐き、拳を下ろした。


笑みは、すぐに消える。


(……危なかった)


胸の奥が、ひりついていた。


「ナイスファイト」


ユウが声をかける。


「ありがとよ」


軽く返すが、視線は地面に落ちる。


「……強いな、みんな」


ぽつりと、漏れた。


ユウは、それを聞き逃さなかった。


「怖いのか?」


一瞬、間があった。


マコトは、肩をすくめる。


「そりゃな。

 負けたら、全部終わる」


だが、顔を上げる。


「それでも、やめられねぇ」


拳を握る。


「ユウの背中、見てきたからな」


その言葉に、ユウは何も返せなかった。


遠くで、別の戦いが終わる気配。


空気が、冷える。


「……来た」


レオが、視線を向ける。


通りの向こう。


長い黒髪を揺らし、ひとりの男が歩いてくる。


ジン――二十歳。

孤高を貫く格闘家。

雷を思わせる技を操り、感情を切り捨てた拳を持つ。


向かいに立つのは、屈強な体格の男。


開始の合図は、不要だった。


ジンが、消える。


次の瞬間、背後。


拳が、静かに突き出される。


――絶影拳。


衝撃は遅れてやってくる。


男は、理解する前に崩れ落ちた。


光の円が消える。


「……勝者、ジン」


ジンは、息一つ乱さず、歩き去る。


その背中を、ユウは見つめていた。


(笑って戦う拳。

 感情を捨てる拳)


(……俺は、どこに立つ)


廃墟都市の空に、再び風が流れる。


笑顔の裏に隠された覚悟が、

次の戦いへと、静かに引き継がれていった。

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