第二十六話 蒼空の終章
天空リングの空気が、緊張で張り詰めていた。
カイゼルの黒衣が、雷と風を背に揺れる。
ユウの拳は、まだ震えているが、迷いはない。
「……全てを背負うのか」
カイゼルが、低く言う。
「お前は、守る拳と孤高を、同時に使う」
ユウは、拳を握り直す。
「……それでも、進む」
風が、唸る。
雷が、遠くで落ちる。
空気が、光と音で切り裂かれる。
カイゼルが、踏み込む。
――孤閃裂破。
絶対の力が、空間を裂いた。
ユウは、踏みとどまる。
――心象拳。
拳に、友情、恋、守りたい想い――
すべてを込める。
衝撃が、互いの拳を震わせる。
空間が、揺れる。
一瞬、時間が止まったように感じられた。
カイゼルの瞳が、微かに揺れる。
「……なるほど」
声に、わずかな感嘆。
「お前の拳は……俺の孤高に触れるかもしれない」
ユウは、一歩、踏み込む。
――飛燕蹴。
空を蹴るような蹴りが、カイゼルの防御を削る。
「……くっ!」
カイゼルの拳が、迎撃する。
雷鳴破。
雷と拳が、交差する。
衝撃が、リング全体を震わせる。
その瞬間、月光が差し込み、風がさらに強まった。
ユウの拳が、光と風の中で輝く。
――心象拳、飛燕蹴の連携。
感情と技が、完全に融合した瞬間。
カイゼルが、踏みとどまれず、リングに膝をついた。
静寂。
そして――
光の円が、消える。
「……勝者、ユウ」
宣告が、天空に響く。
ユウは、膝をつき、全身の力を抜く。
リングの中心で、深く息を吐く。
遠くで、仲間たちの声が、聞こえる。
マコト、アイリ、リオ、シズク、レオ――
それぞれの応援と、想いが、胸に届く。
カイゼルは、膝をついたままユウを見つめる。
「……やはり、お前は違った」
低く、尊敬を含んだ声。
「孤高と守る力を、同時に使う拳――
それが、最強なのかもしれないな」
ユウは、ゆっくりと立ち上がる。
拳を開く。
痛みも、疲労も、すべてを感じながら。
「……終わったんだな」
月光が、天空リングを包む。
静かな空気の中、風が優しく吹く。
蒼空の拳舞――
すべての戦いが、ここに幕を下ろした。
拳は、涙と笑顔、友情と恋、孤高の心と共に、
勝利と成長の証として、空に刻まれた。
――終章。




