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第二十五話 孤高の王

天空リングが、静まり返っていた。


決勝の余韻は、すでに消えつつある。

勝者も、敗者も、言葉を失ったまま空を見上げていた。


その中心へ――

重い足音が、響く。


カイゼル。


黒衣を纏い、長髪を風に揺らしながら、リングへと歩み出る。

威圧感が、空気そのものを押し潰す。


「……待っていた」


低い声が、空を裂く。


ユウは、まだ膝をついたままだった。

立ち上がろうとするが、身体が言うことをきかない。


(……動け)


だが、拳は、開かない。


「無理をするな」


マコトの声が、遠くで響く。

アイリが、唇を噛みしめて見つめている。


カイゼルは、そんな視線すら意に介さない。


「決勝は、見事だった」


リオへ、視線を向ける。


「孤高を捨てた拳は、強い」


次に、ユウを見る。


「だが」


一歩、踏み出す。


「それでも、届かない」


ユウは、ゆっくりと立ち上がった。


「……まだ、終わってない」


カイゼルは、わずかに目を細める。


「その通りだ」


足元の円が、異質な光を放つ。


決勝とは、違う。


重く、深い光。


「これは、トーナメントではない」


カイゼルが、拳を構える。


「裁定も、制限もない」


「――力の、証明だ」


空が、歪む。


周囲の環境が、同時に反応する。


風が唸り、

雷雲が渦を巻き、

遠くで、溶岩の赤が揺らぐ。


すべての環境が、重なり合う。


「……環境連動、全解放か」


レオが、息を呑む。


カイゼルは、淡々と言う。


「孤高とは、すべてを背負うことだ」


次の瞬間。


――絶対破。


拳が、空間ごと砕く。


衝撃が、天空リングを沈ませる。


ユウは、弾き飛ばされ、地面を転がった。


(……桁が、違う)


呼吸が、乱れる。


「……これが」


カイゼルが、歩み寄る。


「お前たちの、未来の姿だ」


拳を、振り下ろす。


――孤閃裂破。


蒼と闇が交差する、絶対の一撃。


ユウは、反射的に構える。


――心象拳。


だが、完全には止められない。


衝撃が、全身を貫く。


膝が、再び沈む。


視界が、揺れる。


(……それでも)


耳に、声が届く。


「立て、ユウ!」


マコト。


「……まだ、終わらせない!」


アイリ。


「行け」


リオの、短い声。


その瞬間。


胸の奥が、強く鳴った。


(……一人じゃない)


拳が、熱を帯びる。


風、雷、熱、月光。


すべてが、ユウの周囲に集まる。


――心象拳。


今までとは、違う。


守るだけではない。

受け止め、繋ぎ、返す拳。


カイゼルの動きが、わずかに止まる。


「……ほう」


初めて、興味を示す声。


「それが、お前の答えか」


天空リングの上で、

孤高の王と、繋がる拳が向かい合う。


蒼空の拳舞は、

最後の一歩へと踏み込んだ。

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