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第十八話 交差する鼓動

廃墟都市からの転送が終わると、空気は一変した。


月光。


柔らかく、しかし逃げ場のない光が、宙に浮かぶ庭園を照らしている。


空中庭園。


浮遊する石畳、静かに揺れる草花。

美しさと孤高が、同時に存在する場所。


準決勝の舞台だった。


ユウは、月明かりの下で深く息を吸う。


(……ここまで来た)


拳に、痛みは残っている。

だが、それ以上に――


(……迷いは、少ない)


少し離れた場所で、アイリが立っていた。


長い髪が、月光を受けて揺れる。

軽装の身体に、風がまとわりつく。


舞風脚を主とする格闘家。

風と共に戦う少女。


「……来たね」


アイリが、微笑む。


ユウは、言葉を失った。


(……まさか)


準決勝。


避けられなかった組み合わせ。


「無理しないで、って言ったのに」


冗談めかした声。

だが、瞳は真剣だ。


「……お前こそ」


それだけで、通じる。


少し離れた場所。


マコトが、拳を握りしめていた。


「……来ちまったか」


「必然だ」


隣のレオが、静かに言う。


「ここは、拳だけで決まる」


反対側の庭園。


白い道着が、月光に浮かぶ。


リオ。


蒼い気配を纏い、静かに立っている。


準決勝、もう一つの戦い。


彼女の視線は、ユウとアイリには向いていない。


ただ、前だけを見ている。


高く、さらに高く。


月を背に、カイゼルが佇んでいた。


「……友情」


「……恋」


低く、呟く。


「最も、拳を鈍らせ」


わずかに、口角が動く。


「最も、強くする」


庭園に、光の円が浮かび上がる。


ユウとアイリが、向かい合う。


風が、静かに吹いた。


月光が、舞風脚を祝福する。


環境が、彼女に味方する。


「……全力で来る」


アイリが言う。


「遠慮しない」


ユウは、拳を構える。


「……ああ」


「俺もだ」


二人の間に、迷いはない。


守りたい想いも、

伝えきれない感情も、

すべて、拳に込める。


準決勝が、始まる。


蒼空の拳舞は、

ついに――

心と心が、真正面からぶつかる領域へ踏み込んだ。

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