表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/27

第十六話 影の記憶

廃墟都市に、風が吹き抜けた。


崩れた建物の隙間を通り、瓦礫の影が、ゆっくりと形を変える。

光と闇の境目が、曖昧になる。


シズクは、静かに距離を取っていた。


「……無理をする」


冷えた声。


「影に縛られた状態で、技を撃つなんて」


ユウは、肩で息をしながら立ち上がる。


「止まったら……終わりだと思った」


「……そう」


シズクの瞳が、わずかに揺れる。


「私も、同じだった」


次の瞬間。


影が、地面を這う。


――影縫。


今度は、複数。


足、腕、影が絡み合い、動きを奪う。


ユウの身体が、完全に止まる。


「……これで終わり」


シズクが、拳を構える。


――暗影刃。


影を刃に変えた、一撃必殺。


瓦礫の影が、収束する。


だが。


(……終わらせない)


ユウの胸に、静かな熱が灯る。


怒りではない。

焦りでもない。


(……守る)


影に縛られたまま、深く息を吸う。


――心象拳。


身体は動かない。

だが、拳は――心は、動く。


空気が、歪む。


衝撃が、影を震わせる。


「……なに?」


シズクの影が、わずかに乱れる。


その隙。


影縫が、緩む。


ユウは、踏み出した。


――飛燕蹴。


瓦礫を蹴り、影を越える。


一瞬の交錯。


シズクは、後方へ跳ぶ。


着地。


距離が、開く。


二人は、静かに向かい合う。


「……影は」


シズクが、低く言う。


「過去だ」


瓦礫の影が、揺れる。


「私は、その中で生きてきた」


ユウは、黙って聞く。


「逃げ場は、なかった」


拳を握る。


「だから、縛る」


「……でも」


ユウは、一歩、前に出る。


「影は……動く」


風が、瓦礫を転がす。


「変わる」


その言葉に、シズクの瞳が揺れた。


「……綺麗事だ」


だが、否定しきれない。


次の瞬間。


影と拳が、同時に動いた。


廃墟都市の中央で、

過去と現在が、真正面からぶつかる。


蒼空の拳舞は、

心の奥に踏み込みながら、

準々決勝の核心へと迫っていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ