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第十四話 静かな背中

天空リングから戻る転送光が、ゆっくりと消えた。


控え区画に、ざわめきはない。

勝ち残った者たちは、言葉少なに、それぞれの時間を過ごしている。


ユウは、ベンチに腰を下ろし、深く息を吐いた。


拳が、まだ震えている。


(……掴んだのは、迷いか)


自分でも、理由ははっきりしなかった。


ただ、落とせなかった。


「……やっぱりな」


静かな声がした。


顔を上げると、リオが立っていた。


銀髪が、淡く光る。


「お前は、そういう拳だ」


責めるでも、褒めるでもない。


事実を述べる声。


「勝負の途中で、手を伸ばす」


「……否定はしない」


ユウは、正直に答えた。


リオは、少しだけ視線を逸らす。


「甘い」


「だが」


再び、目を合わせる。


「それで勝った」


短い沈黙。


「……面白い」


その言葉に、ユウは小さく息を吐いた。


遠くで、軽い足音。


アイリが、走ってくる。


「ユウ!」


息を切らしながらも、笑顔。


「見てた! すごかった!」


「……危なかった」


「でも、助けたでしょ」


まっすぐな視線。


「それが、ユウだよ」


ユウは、何も言えなくなる。


胸の奥が、温かくなる。


少し離れた場所。


マコトが、ジンの背中を見送っていた。


「……静かだな」


レオが、隣に立つ。


「敗者ほど、多くを持ち帰る」


「深いな」


マコトが、肩をすくめる。


「次、誰が来る?」


レオは、端末を確認する。


「……準々決勝」


その言葉に、空気が変わる。


「組み合わせは――」


言い終わる前に、足音が響く。


影のように、近づく人物。


シズクだった。


黒髪が揺れ、視線は冷たい。


「……次」


短く、告げる。


「私が、行く」


誰に向けた言葉かは、明白だった。


ユウは、立ち上がる。


視線が、交わる。


過去を背負った者と、守る拳。


静かな背中同士が、

次の舞台へと向かおうとしていた。


蒼空の拳舞は、

準々決勝という、核心へ近づいていく。

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