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最後には本が残る

作者: 薫納豆
掲載日:2025/11/20

平凡だけど非凡。

「コーヨーって、何ですか?」


「紅葉のことかな」

突然言われたから、ちょっと固まったけど、すぐに頭の中で変換する。

「何ですか、それ」

首を傾げる少女。

銀髪で、顔つきもこの世界の人じゃないみたいな。可愛い、すごく可愛いけど、どこの国の人に見えるかと聞かれたら、悩んでしまう。

そんな、美少女の、同級生。


だから、まあ、知らなくても仕方ないかと思ってしまう。


「今週の土曜日か日曜日、空いてる?」

聞いてみる。

なんかデー卜みたいだ。

てか、デー卜だ。

「はい、楽しみです。ドヨウビに行きましょう」

笑顔で返してくれる。


「じゃあ、見に行こうよ」

と、僕は言う。

紅葉、正直、見飽きた。何がいいのかもわからないし。

けど、この子となら。そんな平凡も。


平凡も非凡になる、そう期待してしまう。




そして、


「見て下さい! マッカですよ!」

「そうだね、本当に赤い」

笑顔ではしゃぐ少女。

僕はうなずいて返す。


よかった、喜んでくれて。


幕末の偉人が小さい頃遊んだと言われる、名所。限定のうどんや、限定の餅もあったりする。

そして、紅葉が綺麗な所でも有名。


「ドラゴンの炎よりもマッカ!」

「そうなんだろうねえ」

分からないけど。ドラゴンなんて、いる訳ないし。見たことあるのかな? 面白い比喩。

「シャシン、シャシン撮りましょうよ! パパとママにも見せます。カメラありますよっ」

「今時カメラって」

スマホでいいのに。


写真を撮りあったり、知らない人に2人並んでいるのを撮ってもらったり。

限定のうどんを食べたり、限定の餅を買ったり。


やっぱり、この子といると、平凡も非凡だ。




「ウドン、初めて食べました!」

「そっか」

「熱かったけど美味しかったです」

「なら、よかった」


「これもワタシの本に残しますねっ」


「う、うん」

また、その言葉。

今年の春、高校に入学して、出会った。


「ドソクって何ですか?」

たまたま、そう声を掛けられ、知り合った。

そのときも、

「ワタシの本に残しますねっ」

て言われたけど。


どういうことなんだ? て、思ってしまう。

もうすぐ死ぬ、には見えないし。

国に帰るのだろうか。けど、土足の意味まで書くか? 今回の紅葉は、わかるけど。


「帰りましょう!」

「そうだね」


いつか、告白したい。

それも、書かれるのかな。

勇気が出たら告白したいんだけどな。




「コーヨーは、アカい。

そして、コーヨーを見れる所では、美味しいウドンやオモチがある」

家で、ワタシは書く。

「できたっ」


他の世界を知るために、ワタシはこの世界に来ました。

勉強です、勉強。


ワタシがこの世界からいなくなったら、そこにあるのは本だけ。ワタシの書いた、本。


それには、ワタシの世界の話も。


フツウの生活と、この世界にとってはフツウの物語。

イセカイケイ、というものがあるので、フツウの物語と思われるでしょう。


あの人にとっては、どちらも、よくある話。

でも、ワタシにとっては、珍しい話と、大切な話なのです。


ヘイボンだけどヒボンなのです!



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