最後には本が残る
平凡だけど非凡。
「コーヨーって、何ですか?」
「紅葉のことかな」
突然言われたから、ちょっと固まったけど、すぐに頭の中で変換する。
「何ですか、それ」
首を傾げる少女。
銀髪で、顔つきもこの世界の人じゃないみたいな。可愛い、すごく可愛いけど、どこの国の人に見えるかと聞かれたら、悩んでしまう。
そんな、美少女の、同級生。
だから、まあ、知らなくても仕方ないかと思ってしまう。
「今週の土曜日か日曜日、空いてる?」
聞いてみる。
なんかデー卜みたいだ。
てか、デー卜だ。
「はい、楽しみです。ドヨウビに行きましょう」
笑顔で返してくれる。
「じゃあ、見に行こうよ」
と、僕は言う。
紅葉、正直、見飽きた。何がいいのかもわからないし。
けど、この子となら。そんな平凡も。
平凡も非凡になる、そう期待してしまう。
そして、
「見て下さい! マッカですよ!」
「そうだね、本当に赤い」
笑顔ではしゃぐ少女。
僕はうなずいて返す。
よかった、喜んでくれて。
幕末の偉人が小さい頃遊んだと言われる、名所。限定のうどんや、限定の餅もあったりする。
そして、紅葉が綺麗な所でも有名。
「ドラゴンの炎よりもマッカ!」
「そうなんだろうねえ」
分からないけど。ドラゴンなんて、いる訳ないし。見たことあるのかな? 面白い比喩。
「シャシン、シャシン撮りましょうよ! パパとママにも見せます。カメラありますよっ」
「今時カメラって」
スマホでいいのに。
写真を撮りあったり、知らない人に2人並んでいるのを撮ってもらったり。
限定のうどんを食べたり、限定の餅を買ったり。
やっぱり、この子といると、平凡も非凡だ。
「ウドン、初めて食べました!」
「そっか」
「熱かったけど美味しかったです」
「なら、よかった」
「これもワタシの本に残しますねっ」
「う、うん」
また、その言葉。
今年の春、高校に入学して、出会った。
「ドソクって何ですか?」
たまたま、そう声を掛けられ、知り合った。
そのときも、
「ワタシの本に残しますねっ」
て言われたけど。
どういうことなんだ? て、思ってしまう。
もうすぐ死ぬ、には見えないし。
国に帰るのだろうか。けど、土足の意味まで書くか? 今回の紅葉は、わかるけど。
「帰りましょう!」
「そうだね」
いつか、告白したい。
それも、書かれるのかな。
勇気が出たら告白したいんだけどな。
「コーヨーは、アカい。
そして、コーヨーを見れる所では、美味しいウドンやオモチがある」
家で、ワタシは書く。
「できたっ」
他の世界を知るために、ワタシはこの世界に来ました。
勉強です、勉強。
ワタシがこの世界からいなくなったら、そこにあるのは本だけ。ワタシの書いた、本。
それには、ワタシの世界の話も。
フツウの生活と、この世界にとってはフツウの物語。
イセカイケイ、というものがあるので、フツウの物語と思われるでしょう。
あの人にとっては、どちらも、よくある話。
でも、ワタシにとっては、珍しい話と、大切な話なのです。
ヘイボンだけどヒボンなのです!




