第91話 真・調和の螺旋
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**【フェリシア視点】**
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フェリシアは、光の爆発に吹き飛ばされた。「きゃあ!」
壁に叩きつけられる。痛みが走る。
「お姉さま!」ヴァルブルガの声がする。彼女も吹き飛ばされていた。
光が収まる。玉座の間の中央に、何かが立っていた。
(あれは...)フェリシアは目を疑った。
光の巨人。高さ10メートルはある。人型だが、全身が光で構成されている。
「不完全な者たちよ」声が響いた。マリーネの声と、もう一つの声が混じっている。「神の裁きを受けよ」
光の巨人が、腕を振るった。風圧だけで、石柱が砕ける。
「逃げるわよ!」フェリシアが叫んだ。
全員が玉座の間から飛び出す。
城の外に出ると、光の巨人が城壁を破壊しながら追ってくる。
連合軍が、一斉に武器を構えた。「敵だ!」「攻撃!」
矢と魔法が、光の巨人に向かって放たれる。だが、全て光に飲み込まれた。効いていない。
光の巨人が腕を振るう。光の波動が、連合軍を襲う。兵士たちが吹き飛ばされる。
「くそ!」グルカが斧を構える。「通常攻撃が効かない!」
千景が妖術を放つ。赤い炎が、光の巨人を包む。だが、炎は光に相殺された。
「神の力とは相性が悪いのじゃ!」千景が舌打ちする。
ドラーゲンも影の槍を投げる。だが、光に消される。「まずいな...」ドラーゲンが呟いた。
タラッサ軍の魔導師が水の槍を放つ。「海神よ、力を!」だが、水も光に蒸発させられる。「駄目だ...」
バリンが叫ぶ。「ドワーフ軍、隊列を組め!」「盾の壁だ!」
ドワーフたちが、盾を並べて防御壁を作る。だが、光の巨人の一撃で、その壁は崩れた。
「ぐわっ!」ドワーフたちが吹き飛ばされる。
妖怪軍団も攻撃を仕掛ける。妖術の嵐。だが、全て光に消された。
「神の力は、別格か...」千景が苦い顔をする。
グルカが斧を構える。「このままでは...全滅だ!」
フェリシアは歯を食いしばった。(どうすれば...)
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**【アウローラ視点】**
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アウローラは、光の巨人を見ていた。あれが、マリーネ。自分を操っていた人。そして、自分を作り出した人。
(私は...何のために...)
光の巨人が、連合軍を薙ぎ払う。兵士たちが次々と倒れていく。
「止めて...」アウローラが呟いた。「もう...誰も傷つけないで...」
だが、光の巨人は止まらない。マリーネの声が響く。「無駄よ」「神の力に、人は及ばない」
アウローラは膝をついた。涙が溢れる。(私に...何ができる...)
その時、手が肩に置かれた。振り返ると、フェリシアだった。
「大丈夫」フェリシアが微笑む。「まだ、諦めないわ」
ヴァルブルガも隣に立つ。「わらわたちには、まだ方法がある」
二人は手を繋いだ。「《調和の螺旋》じゃ」
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**【フェリシア視点】**
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フェリシアは、ヴァルブルガと手を繋いだ。光の巨人を見据える。
「私たちの力を、一つに」
「うむ」ヴァルブルガが頷いた。
二人の魔力が混ざり合う。金色の光と、銀色の光。それが螺旋を描いて、空に昇る。美しい光の柱。
連合軍の兵士たちが、それを見た。「あれは...」「調和の螺旋...」
光の螺旋が、光の巨人に向かって飛ぶ。直撃した。だが、光の巨人はびくともしなかった。
「無駄だと言ったでしょう」マリーネの声。「神の力に、人の力は及ばない」
フェリシアは歯を食いしばった。(まだ...)(まだ諦めない)
その時、グルカが叫んだ。「全軍!」「力を合わせろ!」
兵士たちが、一斉に祈り始めた。グルカ軍の兵士たちは、グルカの神に。タラッサ軍の兵士たちは、海の神に。ドワーフ軍の兵士たちは、鍛冶の神に。妖怪軍団は、東方の神々に。それぞれの国の、それぞれの神に。
だが、願いは一つ。「平和を」「戦争を終わらせて」「大切な人を守って」
2万5千の願いが、それぞれの神に届く。そして、世界が震えた。空が光る。無数の光が、降り注いできた。
「これは...」ドラーゲンが驚く。「各国の神々が、応えている...!」
千景も目を見開く。「東方の神々も、力を貸してくれているのじゃ!」
バリンが震える声で言う。「鍛冶神の加護を感じる...」「これほど強く...」
タラッサ軍の兵士たちが涙を流す。「海神が...応えてくださった...」
グルカも感じる。「グルカの守護神も...」「みな、力を合わせている...!」
無数の神々の力が、一つに集まる。それが、フェリシアとヴァルブルガの螺旋に合流した。
金と銀の螺旋が、七色に輝く。いや、それ以上。虹色を超えた、無数の色。
「これが...」フェリシアが驚く。「真・調和の螺旋...!」
ヴァルブルガも震える声で言う。「神々の協力を得た、真の調和...」
巨大な光の柱が、天を貫く。それが、光の巨人を包み込んだ。
「な、何!?」マリーネの声が動揺する。「これは...神々の協力だと!?」「私の神だけが、正しいはずなのに!」
光の巨人に、無数の亀裂が走る。
千景が見逃さなかった。「今じゃ!」
妖怪軍団が、一斉に妖術を放つ。ドラーゲンも、影の槍を投げる。グルカが戦斧を振り下ろす。バリンがルーンハンマーを叩きつける。タラッサ軍が水の大波を起こす。
全ての攻撃が、光の巨人に集中した。
そして、フェリシアとヴァルブルガが叫ぶ。「人は不完全でも!」「共に歩める!」「それが、私たちの答え!」
無数の色を持つ光が、さらに強まった。
光の巨人が、悲鳴を上げる。「ああああああ!」「神よ...力が...」「離れていく...」
光の巨人が、爆発した。
光が消える。フェリシアは、地面を見た。一人の女性が倒れている。マリーネだった。法衣はボロボロ。体中に傷がある。
フェリシアは近づいた。ヴァルブルガも一緒に。連合軍の皆も、集まってくる。グルカ、千景、ドラーゲン、バリン、アストリッド、エルドリック、グウィン、ヴァレリウス。連邦のすべての国の代表が、倒れたマリーネを見下ろす。
マリーネは、虚ろな目でこちらを見た。「光が...」呟く。「消えていく...」「神が...去っていく...」
フェリシアは膝をついた。「マリーネ...」
だが、マリーネは何も聞こえていないようだった。「光...もう一度...」「神よ...もう一度...」同じ言葉を繰り返すだけ。
ドラーゲンが近づいてくる。「精神が崩壊している」「神を無理やり降ろした代償だ」
フェリシアは、マリーネを見た。哀れだった。狂信に囚われ、全てを失った女性。
「誰か、医療班を」フェリシアが命じる。「この人を、手当てして」
兵士たちが駆け寄る。マリーネを担架に乗せる。マリーネは、ずっと呟いている。「光...光...」
担架が運ばれていく。
フェリシアは立ち上がった。王城を見る。戦いは終わった。だが、これからが本番だ。セレスティナを、どうするか。それを決めなければならない。
ヴァルブルガが手を握った。「お姉さま」「一緒じゃ」
フェリシアは頷いた。「ええ」「一緒に、決めましょう」
二人は、王城へと戻った。玉座の間には、気絶した国王がいる。宰相が、国王を介抱していた。
「陛下...」宰相がフェリシアたちを見る。「どうか...陛下をお助けください」
フェリシアは頷いた。「治療します」
ヴァルブルガも治療魔法を使う。
国王が目を覚ました。「ここは...」
「大丈夫です」フェリシアが言う。「戦いは終わりました」
国王は涙を流した。「終わった...のか...」「ようやく...」
フェリシアは国王に手を差し伸べた。「これから、一緒に未来を作りましょう」
国王は、その手を握った。
戦いは終わった。だが、本当の戦いは、これからだ。平和を築く戦い。それが、始まる。




