第90話 玉座の間の対峙
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**【フェリシア視点】**
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セレスティナ王国首都。フェリシアは、城門の前に立っていた。連合軍が、首都を完全に包囲している。だが、戦いの音はない。静かだった。
「使者が来ます」グルカが言った。
城門が開く。白旗を掲げた使者が、馬で近づいてくる。老いた男だった。
使者は馬から降りて、深く頭を下げた。「国王陛下は、降伏を申し出ておられます」
フェリシアは驚いた。「降伏...?」
「はい」使者が震える声で言う。「もう...戦う力はございません」「どうか、市民の命だけは...」
ヴァルブルガが前に出た。「わらわたちは、市民を傷つけるつもりはない」「安心するのじゃ」
使者は涙を流した。「ありがとうございます...」
グルカが命じる。「フェリシア殿、ヴァルブルガ殿、私が同行します」「ドラーゲン殿も」
ドラーゲンが影から現れた。「ああ」
千景も九尾を揺らす。「わらわも行くのじゃ」
アウローラも前に出る。「私も...」
フェリシアは頷いた。「では、王城へ」
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**【フェリシア視点】**
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フェリシアは、玉座の間に入った。ヴァルブルガ、グルカ、ドラーゲン、千景、アウローラが後ろに続く。
「失礼します」フェリシアが言った。
玉座に座る老王を見る。60代の疲れ果てた顔。目には光がなく、まるで全てを諦めたような表情だ。護衛の騎士たちも疲弊しきっている。
だが、その隣に立つ女性。豪奢な法衣を纏った、美しい女性。しかし、その目には狂気が宿っている。
フェリシアは、玉座の間の空気が異様に張り詰めているのを感じた。まるで、つい先ほどまで何かが起きていたような——
その女性が、優雅に微笑んだ。
「あなたは...」フェリシアが尋ねる。
「ようこそ、勇者フェリシア」女性が言う。「そして、魔王ヴァルブルガ」「不完全な統合の象徴たちよ」
ヴァルブルガが怒る。「お主が...全ての元凶か」
マリーネは笑った。「元凶?」「失礼な」「私は、救世主よ」
フェリシアは剣に手をかけた。「あなたが、量産勇者を作ったのですね」
「そうよ」マリーネが誇らしげに言う。「10年かけて完成させた」「神の加護を人工的に注入する技術」「芸術品だと思わない?」
アウローラが震えた。「私も...実験体だったのですか...」
マリーネはアウローラを見た。「ああ、アウローラ」「最高傑作だったわ」「完璧な操り人形」「素晴らしい成果だった」
アウローラが膝をつく。涙が溢れる。「そんな...」
グルカが前に出た。「なぜ、こんなことを」
マリーネの表情が歪んだ。「秩序よ!」叫ぶ。「完璧な秩序が必要なの!」「人間は愚か」「だから、導かねばならない」
マリーネが両手を広げる。「私の創った聖女と勇者による完璧な統治」「セレスティナ大聖界の建国」「全大陸を、私の理想の秩序で統一する」
ドラーゲンが呟いた。「狂信者か」
マリーネが激昂する。「狂信?」「これは真理よ!」「神の意志を実現する!」「不完全な人間どもを、完璧な秩序の下に導く!」
その時、国王が立ち上がった。震える声で叫ぶ。「もう...止めろ!」「国民が苦しんでいる!」「これ以上...」
マリーネが国王を一瞥する。「用済みよ、あなたは」
手をかざす。光が国王を包んだ。「があっ...」
国王の体が、糸の切れた人形のように崩れて地面に倒れた。
「陛下!」宰相が駆け寄る。
フェリシアは息を呑んだ。国王は息をしている。気絶しているだけだ。だが、マリーネの冷酷さと力を目の当たりにして、怒りが込み上げてきた。
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**【フェリシア視点】**
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フェリシアは剣を抜いた。「許さない」低い声。「人を道具にして」「人の命を弄んで」「それが、あなたの秩序ですか!」
マリーネは不敵に笑う。「綺麗事を」「勇者のくせに、魔王と手を組んで」「それこそ、不完全ではなくて?」
ヴァルブルガが前に出た。「わらわたちは、不完全じゃ」「でも、それでいい」「完璧な秩序など、わらわは望まん」
フェリシアも頷く。「人は、不完全だから支え合う」「助け合う」「それが、本当の強さです」
マリーネは鼻で笑った。「幼稚ね」
そして、両手を天に掲げる。「さあ、最後の切り札を見せましょう」
禁断の詠唱を始める。「セレスティナの神よ」
玉座の間全体が、震え始めた。光が溢れる。
「我が身に降臨せよ!」
マリーネの体が、光に包まれていく。
ドラーゲンが叫んだ。「まずい!神憑依だ!」「下がれ!」
だが、遅かった。マリーネの体から、膨大な光が爆発した。
フェリシアたちが吹き飛ばされる。「きゃあ!」
玉座の間全体が、光に包まれた。そして、何かが現れる。巨大な影。光の中に浮かぶ、人ならざるもの。
「これが...神の力...」フェリシアが呟いた。
光が一層強まり、全てを飲み込んだ。




