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追放された最強おっさん魔族、女勇者を鍛えていたら国が分裂! 最終課題「魔王にセクハラしてこい」でどうしてこうなった!?  作者: よん


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第87話 集結する力

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**【グルカ視点】**


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アルカ近郊の大平原。


緊急議会から数日後の朝、グルカは集結地点に立っていた。地平線まで続く広大な平原。そこに、次々と各国の軍勢が姿を現す。


「グルカ軍、到着!」副官の声が響く。


グルカ領から1万の兵。実直な歩兵たちが、整然と隊列を組む。


「よし、予定通りだ」グルカは満足げに頷いた。


議会終了後、すぐに領地へ戻って動員をかけた。昼夜を問わず兵を集め、再びアルカへ。通常なら半月はかかるところを、急ピッチで実現した。


「全軍に告げる」グルカが声を張り上げる。


「我々は盾となる。前線は任せろ」


兵士たちが一斉に応えた。


「了解!」


次に到着したのは、タラッサ海軍。タラッサ女提督アストリッドが2千の陸戦隊を率いて現れた。日に焼けた肌と金髪が陽光に輝く。


「グルカ殿、お待たせした」アストリッドが豪快に笑う。


「海路で来て、川を遡上。ここで船から降ろして陸戦隊を編成した」


近くの川には、タラッサの軍船が停泊している。兵士たちは海の民だが、陸戦用の装備を整えている。軽装ながら、機動力に優れた戦士たち。その目には強い意志が宿っていた。


「海の民も、陸で戦える」アストリッドが胸を叩く。「タラッサの誇りにかけて、必ず勝つ」


グルカが頷いた。「側面からの機動戦を頼む」


「任せろ」アストリッドが部下に指示を出す。「全軍、陣形を整えろ!」


タラッサ軍が素早く動き出す。その訓練された動きに、グルカは感心した。さすが海の戦士たちだ。


空間が歪み始めた。「何だ?」兵士たちが驚く。


青白い光の渦が出現し、その中からドワーフ軍が現れた。


「バリン殿!」グルカが驚きの声を上げる。


バリン・アイアンハンドが、1千500の重装兵を率いて転送されてきた。全員が鋼鉄の鎧に身を包んでいる。その後ろには、巨大な石の巨人──バロッサゴーレムが立っていた。


「待たせたな」バリンが金槌を肩に担ぐ。だが、その表情は疲労の色が濃い。


「バロッサゴーレムが使う魔力の流れ、あれを応用した大量転送技術を開発してな」


グルカが感心する。「魔力の流れ?」


バリンが説明を始めた。「1年前、マルテ鉱山でバロッサが爆発した時」「あいつの意識は肉体を失っても、ルミナイト鉱脈を伝って流れた」「その現象を研究してな」「鉱脈のネットワークを利用した転移技術を開発したんじゃ」


グルカが驚く。「鉱脈を伝って転移...そんなことが」


バリンが頷いた。「ああ。だが、ルミナイトを大量に消費する」「今回、ゴルン=アンヴィルからここまで1千500名を転送して」「備蓄のほとんどを使い果たした」「何度も使える技じゃない」


重装兵たちが整列する。その重厚な装備は、まさに動く要塞。


森の方角から、静かに軍勢が近づいてきた。銀色の鎧を纏った300の弓兵。その先頭に立つのは、エルドリック・シルヴァヌス大公だった。


「お待たせした」エルドリックが杖を掲げる。「銀森の弓兵、参戦する」


長老エルフが自ら出陣するのは、異例中の異例だ。グルカが驚く。「エルドリック殿自らが...」


「千年の歴史を持つ我らも、独善には屈せぬ」エルドリックが静かに語る。「森の誇りにかけて、戦おう」


弓兵たちが整然と並ぶ。その静かな佇まいに、歴戦の強さが宿っていた。


地響きが聞こえてきた。獣人部族連合100が駆けてくる。先頭に立つのは、老狼グウィン。銀灰色の毛並みが風になびく。


「グルカ殿!」グウィンが吠えるように叫ぶ。「ファウレンヘイムも到着したぞ!」


狼、熊、虎、様々な獣人たちが集まっている。その野性的な力強さに、兵士たちが圧倒される。


「森の民も、人の自由のために戦う!」グウィンが拳を振り上げる。


獣人たちが一斉に咆哮した。


最後に到着したのは、レオニスの兵100だった。獅子の特徴を持つヴァレリウス老王が、自ら先頭に立っている。


「少数で申し訳ない」ヴァレリウスが頭を下げる。「だが、我が国の全力だ」


千景が尻尾を揺らす。「十分じゃ。気持ちが嬉しい」


ヴァレリウスが千景に深く礼をする。「千景殿の恩を、今こそ返す時」


レオニス兵は少数だが、その目には強い決意が宿っていた。


そして、アルカ方面から銀色の軍旗が見えてきた。整然と行進する大軍勢。ソロン・クラティスが、1万のアルカ共和国軍を率いて到着した。


「アルカ共和国軍、到着」ソロンの静かな声が響く。


中立を旨とするアルカが、これほどの兵力を出すのは前代未聞だ。グルカが驚きの表情を見せる。「ソロン議長自らが...」


「議長として中立であるべきだが」ソロンが剣を掲げる。「これは連邦の存亡がかかった戦いだ。首都として、先頭に立つ」


アルカ兵たちが整列する。訓練された動きと、強い意志。文化都市アルカの誇りが、そこにあった。


グルカは集結した全軍を見渡した。グルカ軍1万、アルカ共和国軍1万、タラッサ軍2千、ドワーフ重装兵1千500、エルフ弓兵300、獣人部族軍100、レオニス兵100。連邦の主要7カ国が結集した、総勢2万5千の大軍勢。


だが、バリンの表情は晴れない。「問題がある」


グルカが眉をひそめた。「何だ?」


アストリッドが地図を見て眉をひそめた。「待て、この地形は...」


グルカも地図を覗き込む。「山岳地帯だ。アルカから魔王城の間には」「ノクテルヴァルト山脈が横たわっている」


バリンが頭を抱えた。「直線距離なら近いが、山を迂回すると...」


グルカが計算する。「全軍で移動すれば、一月はかかる」


会議場が静まり返った。「一月...」「それでは、間に合わない」


各国の指揮官たちが絶望的な表情を浮かべる。


バリンが立ち上がった。「待て!転送技術がある!」「もう一度使えば...」


だが、言葉が途切れた。グルカが尋ねる。「バリン殿、まだルミナイトは?」


バリンが首を振った。「いや...備蓄のほとんどを使い果たした」「残りでは、せいぜい100名程度しか転送できん」


絶望が会議場を覆う。2万5千の軍勢が、目の前で役に立たなくなった。


その時、バロッサゴーレムが前に出た。石の巨人が、ゆっくりと語り始める。


「バロッサ...助ける」


バリンが驚く。「バロッサ?」


「バロッサ...ルミナイトで、できてる」バロッサゴーレムが自らの胸を指す。「バロッサの体...砕けば、みんな運べる」


バリンが顔色を変えた。「馬鹿な!お前を失うわけには!」


グルカが質問する。「運ぶ?どこへ?」


バロッサゴーレムが説明し始めた。言葉は単純だが、真剣さが伝わってくる。


「バロッサ、昔...爆発した」「マルテ鉱山で...体、なくなった」「でも、意識...鉱脈を流れた」「マルテ鉱山から...ゴルン=アンヴィルへ」「ゴルン=アンヴィルから...ここ、アルカへ」「その道...逆に戻れば...みんな運べる」


グルカが理解した。「つまり、鉱脈のルートを使えば」「山岳を迂回せず、一気にマルテ鉱山の外へ」「そこから地下道で魔王城へ...」


タラッサ海王が驚く。「それなら、今日中に到達できる!」


バリンが叫んだ。「だが、お前を犠牲にすることはできん!」


バロッサゴーレムが、ゆっくりと首を振った。


「バロッサ...昔、悪いことした」「ルミナイト...欲しくて、欲しくて」「人、殺した...たくさん」「でも、今...仲間、できた」


巨大な石の手が、ドワーフ兵たちを指す。


「みんな、一緒に働いた」「楽しかった...嬉しかった」「バロッサ、初めて...幸せだった」


バリンの目に涙が浮かぶ。


バロッサゴーレムが続ける。「だから、バロッサ...みんな助けたい」「昔の悪いこと...許してもらえないけど」「せめて、最後...いいこと、したい」


ゴーレムが微笑むような気配を見せた。「バロッサ、これで...幸せ」


グルカが前に出る。「バロッサゴーレム」「あなたの献身、連邦全体が忘れない」


タラッサ海王も頭を下げた。「石の巨人よ、永遠に語り継ごう」


他の指揮官たちも次々と敬礼する。「ありがとう」「あなたの犠牲は無駄にしない」


バロッサゴーレムが全軍を見渡した。『では、行こう』


ゴーレムの体が青白く輝き始める。全身のルミナイトが、魔力の流れに変換されていく。


バリンが叫んだ。「全軍、ゴーレムに感謝を!」


2万5千の兵士たちが一斉に敬礼した。「ありがとう、バロッサゴーレム!」


ゴーレムの体が光の粒子となって拡散する。その光が、平原全体を包み込んだ。グルカ軍、タラッサ軍、エルフ、獣人、騎士団...全ての軍勢が、青白い光に包まれる。


「バロッサの道...逆に戻る」「アルカから...ゴルン=アンヴィルへ」「そして...マルテ鉱山の...外へ」


バロッサゴーレムの声が、次第に遠くなる。「さようなら...みんな」「バロッサ...幸せだった」


最後の言葉と共に、ゴーレムは完全に消滅した。


空間が激しく歪む。地面の下、ルミナイト鉱脈が青白く発光した。


バリンが涙を流しながら叫ぶ。「バロッサ...お前は本当に...」「本当に、立派なゴーレムだった!」


光が収束し、2万5千の軍勢が消えた。平原には、誰もいなくなった。ただ、消えたゴーレムが立っていた場所に。小さなルミナイトの欠片だけが、輝いていた。


マルテ鉱山の外。空間の歪みが収束し、2万5千の軍勢が出現した。


「ここは...」兵士たちが周囲を見回す。荒涼とした岩山の斜面。眼下には、かつてのマルテ鉱山の入口が見える。


グルカが全軍に命じる。「全軍、陣形を整えろ!」


兵士たちが次々と配置につく。


バリンが前に出た。「ここがマルテ鉱山の外だ」「バロッサは...鉱山の中ではなく、外まで運んでくれた」


グルカが驚く。「なぜ外に?」


バリンが呟いた。「恐らく...最後の優しさだ」「鉱山の中は狭い。2万5千は入れん」「だから、外まで運んでくれたんじゃ」


タラッサ海王が頷く。「最後の最後まで...」


バリンが遠くを指す。「魔王城は、あの方角だ」「ここからなら、急げば間に合う」


グルカが頷いた。「バロッサゴーレムのおかげで、一月かかる道を大幅に短縮できた」


バリンが涙を拭った。「あいつが、命を賭けて我々を運んでくれた」


全軍が黙祷を捧げる。数秒の沈黙。


そして、グルカが声を上げた。「バロッサゴーレムの犠牲を無駄にするな!」「全軍、魔王城へ!ノヴァ・ステラを救うぞ!」


2万5千の雄叫びが、岩山に響いた。「おおおおお!」


連合軍が行軍を開始した。グルカ軍が先頭、タラッサ軍が側面、ドワーフ軍が後衛。完璧な陣形を保ちながら、魔王城へ向かう。


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**【視点切り替え:グルカ → 千景】**


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同じ頃、港町ジェノチア。千景とドラーゲンが、港の倉庫前に影から出現した。


「妖怪たちはまだここにいるかのう?」千景が尻尾を揺らしながら呟く。


ドラーゲンが頷く。「ラゴマジョレを訪れた後、ここから東方へ帰る手はずだったはずだ」「もしまだ船が出ていなければ...」


倉庫の扉が開き、天狗が顔を出した。「おや、誰かと思えば...千景様!」


次々と妖怪たちが現れる。天狗、鬼、河童、猫又...東方からの妖怪軍団。皆、千景を見て驚いた表情を見せる。


「千景様、どうされたのですか?」天狗が尋ねる。


鬼が苦笑した。「わしらはまだここで船待ちじゃ」「風向きが悪くて、東方への船がまだ来ておらん」


猫又が退屈そうに伸びをする。「暇で死にそうだったにゃ」


千景が真剣な表情になった。「実は...頼みがあるのじゃ」「ノヴァ・ステラが危機に陥っておる」


ドラーゲンが続ける。「セレスティナの軍勢が、魔王城を包囲している」「力を貸してもらえないか」


妖怪たちが顔を見合わせた。そして、天狗が拳を上げた。「千景様の頼みとあらば!」


鬼が金棒を担ぐ。「船を待つより、戦の方が面白い!」


猫又も立ち上がる。「退屈してたところだにゃ。渡りに船だにゃ」


河童も頷く。「千景様には世話になった。恩返しの時だ」


千景の目に涙が浮かぶ。「ありがとうなのじゃ...皆」


ドラーゲンが前に出た。「では、すぐに出発する」「魔王城へ向かうぞ」


ドラーゲンが影術を発動する。「俺の影術と、千景の妖術を組み合わせる」「そうすれば、全員を一度に転送できる」


千景が九尾を全開にした。「では、行くぞ!」


赤い光と黒い影が混ざり合う。妖怪軍団と、千景、ドラーゲンが光に包まれた。次の瞬間、全員の姿が消えた。


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**【視点切り替え:千景 → グルカ】**


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グルカは行軍の先頭にいた。その時、後方から声が上がる。「総司令官!赤い光が!」


振り返ると、千景とドラーゲンが妖怪部隊を率いて追いついてきた。


「グルカ殿!」千景が叫ぶ。


グルカが行軍を止めた。「千景殿、ドラーゲン殿!」


千景が息を切らしながら言う。「妖怪たちを連れてきたのじゃ」


ドラーゲンが報告する。「魔王城の様子を偵察してきた」「限界に近い。防衛術式も薄くなっている」


グルカが真剣な表情になる。「どれくらい持つ?」


「もうわずかだ。急がねば間に合わない」ドラーゲンが答える。


グルカが頷いた。「分かった。強行軍で向かう」


千景と妖怪たちが隊列に加わる。天狗、鬼、河童、猫又...東方の妖怪たちが、連合軍と並んで進む。


「東方の誇りをかけて戦うぞ!」千景が叫ぶ。


妖怪たちが雄叫びを上げた。「おおおおお!」


グルカが全軍に命じる。「全軍、速度を上げろ!」「魔王城へ、全速力で向かうぞ!」


連合軍と妖怪軍団、合わせた大軍勢が、魔王城へ向けて突き進む。バロッサゴーレムの犠牲を無駄にしないために。ノヴァ・ステラを救うために。


史上最大の救援作戦が、今始まる。


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